001
(EUNOMIA’S EYES)
――2023年12月24日――
この年の夜は、とても寒かった。
夜、クリスマスイブで賑わう町並み。
表通りはイルミネーションで、飾り付けられていた。
綺麗な光の中で、私がいたのは一本裏に入った路地の中。
都会のビルの路地、私は一人の人物と出会っていた。
カーキ色のセーラー服姿で、薄紫のスカート。
長い髪は、毛先がボリュームある藍色のロングカール。
目の色は、赤と青のオッドアイ。
見た目は中学生の格好で、家出少女に見えなくも無い。
私は、棒付きキャンディーを口に入れていた。
それと、宝石が埋め込まれた冠をつけていた。
この時代に合わせた格好で、私は一人の男性と合っていた。
ゴミが置かれた路地の、段ボールの上に座る私。
目の前には、一人の男が立っていた。
「調査報告なのだが、これは本当か?」
私の目の前にいたのは、黒いスーツの男性。
肩幅が広く、背も高い。
大きな体で、黒いサングラスをかけていた。
「はっ、現状としては彼らのサンプルの経過は……」
「ふーん、成長は無し……と」
キャンディーをかみ砕いた私は、段ボールの上に飛び乗った。持っていた棒を投げ捨てた。
そのままスマホを片手に、私は路地の段ボールに座って話を聞いていた。
私と話をするのは、真っ黒なスーツにサングラスの男性。
金色の短髪姿で、背も高く肩幅も広い。
彼の格好も、この時代に合わせていた。
「他のサンプルはどうだ?」
「『最高の人材』に適しては、今のところ無いでしょうな。
定義的に見ても、彼らの調査に進呈は無い。
今からでも他の人間に、調査対象を変更するか?」
「そうだな、これはとても大事な選定だ」
スマホを見ながら、私は黒スーツ男の報告を聞いていた。
「一つ聞こう」
「はい、どうしました?」
「お前は、『最高の人材』をどう思う?」
「人類の希望で、最後の望み。
この『最高の人材』を探すために、ここまで来たのですから」
「見つかると思うか?」
「見つけるしかない、違いますか?」
「違わない」
私は段ボールから、飛び降りた。
スマホを片手に、棒付きキャンディーを取り出した。
「エウノミア様」
「何?メタトロン」
「さらなるサンプルを集めるのですか?」
「そうね、私の端末も使って集めるわよ。
もっと人間の深層心理を深掘りして……実体験を詰ませる。
人間の表面部分だけでは、無い。もっと、深く深く人間を観察する必要がある」
「そこに『最高の人材』のヒントが?」
「あるかもしれないし、ないかもしれない。
だけど、まだ手がかりは明らかに少ない。
とにかく、情報を集めて……然るべき選択をしないといけない」
「了解」
「それと、『最高の人材』以外にも探さないといけない。他にもいるだろう」
「失踪した所長ですか?」
「そうだな」メタトロンの言葉に、私は難しい顔を見せていた。
いなくなった所長は、私『エウノミア』の憧れの人だ。
行方不明の先輩と、『最高の人材』。
私は二つの人間を、同時進行で探すことになっていた。
「早速だけど次の準備は、出来ているか?」
「はい、一人の人間の準備は出来ております」
黒スーツ男……メタトロンはスマホをスーツの内ポケットから取り出した。
そのまま、スマホを操作し……私のスマホ画面にメールが届く。
メールを私が眺めて、静かに頷いた。
「こちらの人物が今度のサンプルか、『土室 樹』?」
「はい、彼です」
「分かった。私も、直接サンプルに接触しよう」
「よろしいのですか?エウノミア様?」
「ああ。そろそろこの端末の力も使って、見定めないといけない。
人間は、表だけが全てだけでは無い」
「了解しました」メタトロンは、畏まっていた。
そのまま、メタトロンは前を歩いていた。
私は同時にスマホ……によく似た専用の端末を操作した。
操作すると、ある空間に亀裂のような切れ目が見えた。
「では私は少し先に行って、準備をする。
お前は引き続き、この時代で監査をしていてくれ」
「はっ」私は自分が作った空間の切れ目に、入っていった。
その切れ目は、私が入っていった瞬間に切れ目が閉まって見えなくなった。