お姫様は元冒険者
冒険者だった私は、ある神殿を訪れた時、不思議な光る玉を見つけてそれに触れた途端、意識を失った。
気がつくと、そこは真っ白な空間で私は魂だけの存在になっていた。私の目の前には自らを女神と称する人がおり、その人は私に言った。
「私は女神アウロラ。まず貴女に謝らなければいけませんね…。私の不注意でした…あの玉は本来あの場所には存在し得ないもの…。あの玉は天界の調和を保つ大変重要なもの。人が触れれば触れたものの魂を吸い取ってしまう恐れがあるので、本来は人の手の届かないところに封印されていたのですが…うっかりしていました…。」
どうやら私は死んでしまったようだ。原因はやはりあの光る玉に触れたのが原因みたいだ。
私は酷く落ち込んだ。まだまだやりたいことがあったのに、志半ばであんなあっさり…。
しかし、女神様は私の気持ちを察してくれた。
「心配しないでください。元はと言えば私の責任です。貴女をすぐに甦らせてあげましょう。ですが元の肉体に…というわけにはまいりません。玉に触れた時、貴女の肉体は消滅してしまい、返そうにも返せないのです。そこで貴女を新たな生命として転生させたいと思います。」
新たな生命…?それってつまり?
話を聞こうとしたがそれも叶わず、その瞬間には私の魂は女神の元を離れていった。
気がつくと、私はベッドの上に寝かされていた。ここは何処なのかと部屋の様子を伺う。部屋の中は豪華な作りで、壁には絵画や、棚の上には高そうな美術品の壺が飾られていて、どうやら私は裕福な貴族の家庭に生まれたようだ。
前世の頃の私は貧しい農村の家の出だったので、これは女神が気を遣ってくれたのだろう。
でも不思議だった。生まれ変わった私には前の私の記憶がはっきりと残っていた。
それにしても、ここは誰の家なんだ?私の親はどんな人たちなのだろうか?
「おぉ我が娘よ、起きたかぁ!王妃よ!」
「陛下、そんな大声を出したらユリアがビックリするじゃないですか。」
そこに現れたのはまるで王族のような装束に身を包んだ二人の男女。どうやらこの人たちが私の両親のようだ。
ん?王妃…陛下って…?まさか…
私は一瞬、耳を疑う。
女神の粋な計らいか、私は王族の姫に転生を果たしていたようだった。