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009 あらゆるものを所持している高圧お嬢様は、君だけが手に入らないとわかると……

「(タッタッタッタ)

(タッタッタッタ)

(タッタッタッタ)

………遅い。何分の遅刻だと思ってますの?

2分50秒の遅刻ですわ。2分50秒の。

私の大切な時間をそれだけ無駄にするなんて、どういう神経していらっしゃるのかしら?

………うるさいですわ。言い訳なんて聞いていません。

では、さっさと行きますわよ。

…どこへ行くのかって?

わざわざあなたに説明する義務なんてありませんわ。

あなたは三歩後ろから、黙って私についてくればいいんですのよ。

………本当に庶民は面倒くさいですわね。

名高い財閥の娘で、上流階級である私と、日々小銭しか稼ぐことしかできない家系の生まれでしかない下級庶民のあなた。

立場というものをもっとわきまえなさいな。

私がたった一言口添えするだけで、あなたを退学させることはおろか、あなたの両親を路頭にさまよわせることだって簡単なんですから。

………私もまだ子供ですって?

あなたなんかと一緒にしないでくださいまし。

生まれも育ちも何から何まで違うあなたとは、天と地ほどの差がありますのよ。

身の程というものを考えてから発言しなさいな。

ああ、その程度の知能もない庶民でしたわね。

無理難題なこと言って失礼しましたわ。

………

いちいちうるさいですわね。

今日は町中の監査ですわ。

庶民が食べているものや、近辺の物価レベルの視察です。

精々荷物持ちや食事中の話し相手くらいしか役に立たない庶民なんですから、さっさと付いてきなさい」




「………ったく、なんなんですの。屋上前の踊り場なんて、誰も人が来ないようなところに突然呼び出して。

用事があるなら早くしてくださいな。

私も忙しいんですから、できる限り手短に………

………はい?今、何とおっしゃったんですの?

………

はぁ?私にはもう付き合いきれないって、どういう意味で………

………

私ともう関わりたくないって………

…やれやれ、何を勘違いしているのかしら、この庶民は。

あなたに選択権なんて、はなからあると思ってますの?

名家のお嬢様にして、学園でも一番である私の命令に、庶民のあなたに拒否権なんてあるわけないですわ。

この学園において、私の影響力が届かないところなんてどこにもないんですのよ。

私に目をつけられた他の生徒が、どんな末路をたどったのか、あなただって知らないわけじゃ……

………

もうどうでもいいって……え? え?

ちょ、ちょっとお待ちなさい!まだ話は…

ね、ねえ。ちょ、ちょっと!

………

………

………

………行かないでよ」




「………

あ、あなた。

この間の件だけど、今頭を下げて謝るなら、寛大なる私が許してあげなくも……

………

ね、ねえ、無視していかないでよ、ねえ!

………

………

………

………どうして」



「………

止まりなさい。

………えっと、その、あの…

その…私の方がちょっと、ほんのちょと、悪くなくもない感じだったかもしれないから、この私が、謝ってあげなくもないというか…

………

ちょ、ちょっと、私の話を………

………

………

………

………どうしたらいいの」



「あ、おはようございます。

登校お疲れ様です。お荷物、教室まで運ばせていただきますね。

ん?どうかされました?キョトンとした顔をなさって?

………はい、私は私ですよ。

ああ、もしかして私の顔を忘れてしまったとか?

いえいえ、全然。お気になさらず。

私のような従僕の顔なんて、あなた様の記憶の片隅に、ほんの少し、あるだけでも身に余る光栄ですから。

………

え、私の態度が、ですか………

私、気が付いたんです。

これまで私は、何もかも、ありとあらゆるものを持っているような気持ちでいました。

財閥の娘として生まれた私は、これまで何一つ不自由なく、望むがままに欲しいものを与えられて育ってきました。

富も、名声も、美貌も、他のあらゆるものもすべて、手に入らないものはない、と勘違いしてしまうほどに。

でも、そんなことは全然意味がなかったんです。

それまで欲しいと思っていたものは、心の底から欲しいものではありませんでした。

あってもなくてもかわらない、どうでもいいものばかり。

本当に欲しいものを前にした時、私が持っていたものは、全然何の役にも立たない無価値の代物だったんです。

他に何を持っていたとしても、それだけは、私は手に入れることができなかった………

だから私は、自分自身の存在をもってして、本当に望むものを手に入れることにしたんです。

努力しない人間に結果はついてきません。

労力にかけずに対価を得ることはできません。

欲しいものがあるなら、それに見合った行動をしなければ、決して手に入らない、と。

誠心誠意をもって、奉仕の心で、その方にとって利益のある人間になる。

こちらから与えなけらば、向こうから与えてもらうことなんて、できないんです。

そう、そのために。

本日より、私はあなたの奴隷になります。

私という存在を全て捧げます。

それでもなお、まだまだ足りませんかもしれませんが、今日この時より、遥かなる時間、精いっぱい尽くす所存です。

これからも、この何もかもが至らない私を、どうかよろしくお願いしますね、あなた様」

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