085 いじめっ子ギャルは大好きなあなたに振り向いてもらいたくていつまでもいじめ続ける
「(ポンッ)
(ポンッ)
(ポンッ)
…なーにー?
べつにあたし、けしゴムなんてなげてないよー。
ショーコもないのに人のせいにしないでよね。
(ポンッ)
(ポンッ)
(ポンッ)
…ははっ!おもしろーい!
周りけしカスだらけじゃん。
ちゃんとソージないとダメだよー。
(スタスタスタスタ)
………え、帰るの?
ソージしないなんていーけないんだー。
(ガラッ…ポスン)
あはははっ!
頭真っ白になってるー!
………えー?
別にあたし、そんなところに黒板けしなんてはさんでないもーん。
…ねえねえ、それよりそのまま帰るの?
ねえねえねえねえ。
(スタスタスタスタ)
…もう、ムシしないでよー!
それよりそれより、ホントに帰るの―?
もうちょっとあたしたちとあそぼうよー。
………あれー?
ゲタ箱にクツ入ってないじゃん。
これじゃあ帰れないねー。
………んー?
べつにあたし、かくしてなんかないし。
でもでも。
あたしたちとあそんでいるうちに、もしかしたらひょっこり出てくるかもね。
だから、もうちょっとあたしとあそぼう?」
「………よーっす、一緒に帰ろうー。
…あ、コラ。無視すんなっつーの。
(…ガシッ)
つーかまーえた。
…ったく、こんな美少女に声かけられて、無視するなんてひっどーい。
いいじゃんいいじゃん、ちょっと一緒に帰るくらいさ。
どうせほとんど道変わんないんだし、いいでしょー?
(コクン)
よし、じゃあかえろー。
(スタスタスタスタ)
…つーかさ、あんた、まだ怒ってんの?
そりゃあ、昔あんたをいじめてたのはあたしだけどさ。
もう時効っしょ、時効。
若気の至りってこと許してよー。
好きな子をいじめたくなる感覚ってやつ?
ま、そういうことで一つよろー。
(………)
………無視かい。
本当に根に持つタイプだね。
そんなんじゃモテねーぞー。
…ていうか、そのお詫びに付き合ってやるって言ってんじゃん。
もちろん、付き合うっていうのは買い物とかの付き合うじゃないよ?
彼氏彼女の付き合うって意味だし。
…正直あたし、結構モテるんだよねー。
今の学年になってからでも、1、2、3…
そ、5回は告られたんだから。
………え、断った理由?
そんなの決まってんじゃん。
好きでもない奴と付き合うかっつーの。
何で好きでもない奴と付き合わなきゃなんないのって話。
…その点、あたしはあんたラブだから。超ラブラブだから。
………もし付き合ってくれたら何でもしてあげるよー?
家来いって言われれば速攻行くし。
命令されたことはどんな命令でも聞くし。
あんたが欲しいものは何でも用意してあげるし。
………あ、そうだ。
こないだ新作のゲーム欲しいって、隣の席の奴と喋ってたじゃん。
何なら、今すぐそのゲーム買ってきてもいいし。
ねえねえ。付き合おうよ、付き合おうよー。
(タッタッタッタッタッ…)
………行っちゃった。
ちぇっ…
なんなの、あいつ。
このあたしがこんなに言ってあげてるのに。
そんなに、いじめてたことがトラウマになってんのかなー。
………
…ずっと、このままなのかな」
「(ガタッ)
それでさー、朝全然まつ毛盛れなくてさー。
朝からテンションダダ下がりなんだよねー。
いつもの占いも最下位だったし、超サイアク。
…あ。
次の時間、現国のハゲじゃん。
やっば、課題やってなーい。
誰か写さしてくんない?
(ガタガタガタガタッ)
………んー?どうかしたー?
…トイレ?
ばっかじゃないの。行かせるわけないじゃん。
何のために、目隠してイスに縛り付けてると思ってんの?
自由に動いていいんなら、ヒモでぐるぐるに縛り付ける意味なんてないじゃん。
一応授業に出られるように、教室で座らせて耳もふさいであげてないんだから、その辺感謝しなさいよ。
………ん?
別に、今でもあんたのことは好きだけど?
でもさー、あんた。
このあたしが色々あんたのために尽くしてあげるって言ってたのに、それ全部シカトしたっしょ?
『何でもしてあげる』って口にしてあげたのに。それすら無視してさ。
あん時はあたしもそれが正解って思ってたんだけど。まったくの不正解だったね、あれは。
あんなことをしても、どんなことをいっても、あんたはあたしを見てくれない。
じゃあ、あんたがあたしのことを見てくれるようにするにはどうすればいいのか?
…それは、昔々の思い出にありました。
あんたをいじめている時は、あんたは私のことを見てくれていた。
悲しみでもいい、憎いって気持ちでもいい。
とにかく、あの時のあんたはあたしを見てくれていた。
その目で、まっすぐこっちをね。
だから、今でも同じことすればいいじゃんって思ったわけ。
………よく考えたらさー。
あたしはあんたのことが好きだけど、あんたに好きって思われなくてもよかったんだよね。
あんたがどう思おうと、あたしはあんたが好き。
好きっていう気持ちを、あんたが受け取ってくれればそれでいいの。
無視されたり、スルーされることなく、あたしの気持ちをちゃんと受け取ってくれる。
だから、今あたし、結構幸せなんだよね。
例え今のあんたはあたしを目にとらえてなくても、心の中ではあたしに気持ちが向いている。
あたしだけの、特別な気持ちが生まれている。
たった一つの、あたしへの気持ち。
それ、すっごく嬉しいんだよねー。
キュンキュンしちゃう。
これからもその気持ちをゲットするために、あんたのことをいじめ続けてあげる。
愛する気持ちとして、ね。
逃げようとしたって、どこまでも追いかけるから。
覚悟しといてね。
(キーンコーンカーンコーン)
あ、やば。
ねえねえ、誰か。
早くノート写させて―」
 




