082 仕事帰りにかわいい子からの逆ナン。一緒に楽しく飲んでいたらお持ち帰りされる
「………ねえねえ、そこのお兄さん。
…そうそう、そこのあなた。
あのさ、よかったら…今晩一緒飲まない?
………私?
そうねえ………ナンパよナンパ。
お兄さんが私好みだからさ、思わず声かけちゃったってわけ。
お兄さんはもうこの後帰り?
…そ、なら一緒に飲もうよ。
もちろん、誘った私のおごりでいいから。
………ふふっ。よかった。
じゃあそこのお店行こっか、お兄さん」
「それでそれでねぇー。
うちの上司が本当に最悪でー。
自分のミスは人に押し付けるくせに、他人の手柄は一人占めするんだよー。
これって許せなくなーい?
(ゴクゴクゴクゴク)
………飲み過ぎ?
だいじょーぶ、だいじょーぶ。
私結構お酒強いからぁー。
それより、ほれほれ、君も飲んで飲んでー。
私のおごりだからねー!
(ゴクゴクゴクゴク)
…プハァ!この一杯がたまんないわぁー。
………で?で?お兄さんはどうなの?
…なにがって………そうだなー………
恋人とか、今いるの?
…へー、いっがーい。お兄さんすっごいモテそうなのに―。
………モテそうモテそう。
…まあ顔は、そこそこだけど。
でもすっごい優しいじゃーん。
突然飲みに誘ったのこうして付いてきてくれるとか。
…あ、それともあれか。
もしかして、私って結構お兄さんのタイプだったりするのかな―?
………ふーん。そうなんだー。やっぱりねー。
そうなんじゃないかと思ったわぁー。
じゃなきゃ、こうしてホイホイついてくるはずないもんねー。
…はーい、じゃあ次のグラスグラス―。
あ、店員さーん。お代わりお願いしまーす。
………え、これくらい飲めるでしょー。
私が昔上司に受けた洗礼を、お兄さんにもくれてやるー!
………でさでさ、話戻すけど、これまで一度も彼女いたことないの?
………嘘だぁー。
告白の一度や二度はされたことあるんじゃないの―?
…やっぱりあるんじゃん。
それで、告白にOKしたの?
…ふーん、断ったんだー。もったいない―。
………へー、好みじゃなかったんだー。お兄さんは面食いだなー。
…ん?顔じゃないの?
じゃなんで?
………ほうほう、クラスの隅っこにいる女子で、メガネかけてて陰キャだったんだー。
でもでもー、その子も好きだから告白してきたんでしょー?
少しは応えてあげてもよかったんじゃないの―?
…それじゃあ誠実じゃないからって、真面目か!
………でもでも、何回も告白してくれたんだから、一回ぐらいOKしたって、バチ当たらなくなーい?
…え?
言った言った。お兄さんが言ったんじゃん。『何回も告白された』ってさ。
私の耳がちゃーんと聞いてましたよー。
………あっ、お酒来たー。
じゃあ次の一杯飲もっ、お兄さん」
「…んー、もう一杯だー…
私は、まだまだ飲めるぞー………
…あれー?お兄さーん?
おーい、お兄さーん………
………
………
………
―――寝てる、ね。
さすがにお酒飲ませすぎちゃったかな。
お酒飲みすぎると酔いつぶれちゃうって、投稿してあったとおりだね。
………え、ああ。そろそろ閉店ですか。
大丈夫です。
この人はきちんと、私が送り届けるので。
あ、タクシー呼んでもらってもいいですか?
…すぐ来るんですか、ありがとうございます。
では、帰りましょうか。
………
………
………やっぱり、気付かないものなんだね。
まあ、髪を切って、メガネをコンタクトに変えて、性格と口調を変えたんだから、無理もないか。
君は昔のあんな私じゃなくて、今のこういう私が好きなんだよね。
…色々調べた甲斐があったなー。
君のSNSチェックしたり、パソコンにウイルス送ってハックしたり、頑張った頑張った。
これで、君は私のものだね。
やっぱり、告白なんかしてもダメ。
誰かを手に入れるためには、告白なんかじゃ絶対に無理だった。
それが、昔の私にはわかってなかった。
だから、今度こそは必ず成功させるよ。
………気持ちよさそうに寝てるね。
これから、どこに連れていかれるのかも知らずに。
………あ、タクシーさーん。こっちでーす。
はいはい、ありがとうございます。
…じゃ、帰りましょうか。
私達の、愛の巣へ」