080 ギルドのクエスト受付嬢はお気に入りのあの子にクエストを成功してほしくて…
「…あ、お帰りなさい。
ドラゴン討伐クエストの首尾はいかがでしたか?
………そうですか。無事に討伐完了して、嬉しい限りです。
…それにしても、よく頑張りましたね。
君のレベルではかなり困難な相手でしたが、倒してしまうなんて…
………いえ、私も君ならできると信じていたからこそ、このクエストを発注したわけですが、嬉しいことには変わりありません。
…はい、こちらが今回のクエストの報酬です。
龍のウロコ。
これがあれば、より強い剣を合成することができます。
…よかったですね。
これがあれば、君の力をよりパワーアップできるはずです。
より力が強くなれば、もっと難しいクエストにも挑戦可能になると思いますよ。
…ええ、ではまた。
クエスト依頼はいつでもここで受け付けていますので。
………
………ふふっ。無事にあのクエストも攻略、っと。
あのクリアして達成感溢れるあの子の顔…
本当、たまらない………
………
………はい、こちらに何か御用ですか?
…ああ、クエストの失敗ですか。
それは残念でしたね。
………ああ、そうでしたね。
さっきの人と同じ、ドラゴンの討伐クエストを依頼していた………
…はあ。あのドラゴンをあと一歩のところまでまで弱らせた、と………
いえいえ、あくまでクエストはドラゴンの討伐ですので、討伐していない以上、クエストの報酬は………
さっきの奴は漁夫の利?
それは、たまたまでしょう。
同じクエストを複数の方に依頼することはよくあることなので。
とにかく、あなた方はドラゴンを倒していないので、クエスト失敗になります。
どうか、お引取りを」
「…お帰りなさい。
クエストお疲れ様でした。
今回は、ダンジョンにもぐっての財宝発掘のクエストでしたが、対象となるお宝は………
…はい、それです。
無事に手に入れることができたようですね。
おめでとうございます。クエスト達成です。
手強いモンスターも数多く生息するダンジョンでしたが、よくそれらを突破してよく手に入れることができましたね。
そういえば、お連れの方が一緒ではありませんでしたか?
彼女達は………
…モンスターにやれてしまったんですか。
それは、残念ですね。
しかし、あなただけでも無事に戻ってこられてよかったじゃありませんか。
あのダンジョンには、毒や石化の呪い、麻痺など、厄介な魔法をかけてくるモンスターが大勢いたことでしょうに………
………え、ああ、私のお守りが………
へぇ…あのお守りにそんな効果が………
いえいえ、私は知りませんでした。
たまたま手に入れたお守りでして、どんな効果があるかまでは………
でも、それがあったことで君が戻ってこられたのなら、お渡しした冥利に尽きます。
………クエスト報酬は、お金とダンジョンで手に入れたお宝全てになります。
お金の方は、あちらのカウンターにいる人からもらってください。
…ええ、それでは。
またクエストの受付をお待ちしています。
………
………うーん。嬉しさと悲しさの両方入り混じった顔。
やっぱり、パーティーメンバーのこと、気にしてるみたい………
でも、これで…
………
………はい、こちらクエストの受付…
…あなたですか。情報屋さん。
それで、彼の他のパーティーメンバーは…
………そう。
確かに麻痺や毒でやられてしまっては、しばらく戦線に行くのは無理よね。
………はい。じゃあ今回の報酬。
…ん?ああ、金額はそれで合っていますよ。
提示された料金よりも多く出しています。
まあ、こちらの気持ちを込めて、ですね。
あのクエストのダンジョンの情報も間違っていませんでしたし、お守りの方も無事に効いたようなので、その感謝の意を込めてです。
………ええ、またお願いしたいことができたら、頼みますね。
では、また。情報屋さん」
「…お帰りなさい。
………あの、大丈夫でしたか?
今回はあの、魔王の手下である四天王と対峙するクエストでしたけど………
そうですか。無事に達成できたんですね。おめでとうございます!
………あらいけない。急に大きな声出してすみません。
…しかし、大声も上げたくなるというものです。
だって、あのもっとも凶悪とされる四天王と対峙して、無事に生還するなんて、クエスト依頼した身でありながら、私としては心配で心配で………
しかしそれでもやっぱりクエストを達成してしまうなんて、君はすごいです。
…ふふっ。
もう勇者か英雄と呼ばれる日も近いと思いますよ。
だって、これまで数多くのクエストをこなしてきたんですから。
君のすごさは、私が何よりも理解しています。
これからも応援していますよ。
………あれ?その腰あたり、赤くなってませんか?
…はい、そこですそこです。
………うわ、大きな傷が、大変!
早く治癒者のところへ。
…いけません。何かあってからでは遅いんですよ。
例え勇者や英雄であっても、怪我を治すのも仕事の一つです。
きちんと治してくださいね。
クエストの報酬は、後で届けますので。
ほらほら、早く治癒者の元に………
………
………
………
………あ、すいません。ちょっと受付離れますね。
すぐに戻ってきますので。
………転移魔法、発動。
………
………
………
………こんばんは、四天王さん。
…いえいえ、そんなかしこまらないでください。
私なんて、ただの受付嬢なんですから。
それより、今回は私の言ったとおりにしていただいて、本当にありがとうございます。
あの子と戦ったふりをして、頃合いを見計らって魔王の情報を吐く。
あの子、まったくあなたがお芝居をしている事に気づいていませんでしたよ。
でも本当にいいんですかね?
四天王のあなたが、確たる魔王を裏切るマネなんかをして…
まあ、そうしろと言ったのは私なんですけど。
…私が言うなって話ですよね、すみません。
………それより、あれはどういうことですか?
…あれですよ。あれ。
あの子の腰の怪我。
このクエストの途中でできた傷ですよね?
そんなの、私は頼んでいないはずなんですが………
………部下が?勝手に?
ふふっ。ふふふっ。
―――部下のミスはあなたのミスでしょう?
言い逃れはやめてください。
また、この前みたいに痛い目に遭いたいんですか?
…土下座したところであの子の傷は治らないんですよ。
だから、これは罰です。
(ヒュンッ)
その切れた腕に誓って、次からこんな失敗をしないよう、十分注意してくださいね。
では、私はそろそろ、受付に戻りますので」
「…はい、こちらクエストの受付です。
………そうですか。いよいよ、魔王討伐のクエストに挑むんですね。
頑張ってください。
君がクエスト達成できるように、心から、応援しています」




