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076 留守番電話に残された彼女のメッセージ。彼は一向に電話に出てくれなくて…

『(ピー)

…おーい、電話出ろよ、こんにゃろ―。

いつもいつも君さ、電話出てくれないよね。

もしかして浮気してんじゃないのー?

………ま、そんなことはさておき。

今日私ね。教育実習で私達が通ってた高校行ってきたんだ。

見た目はそんなに変わってないけど、久々に行くと色々変わっててさー。

…いっつも怒鳴り散らしてた現国の先生とか、顔は優しいけどむっつりスケベの科学の先生とか、みんな他の学校に転勤してた。

…ああ、そうそう。嫌味ばかり言う数学の先生はまだいたよ。

しかも私、その先生に付かなくちゃいけなくて、今日もちょっとミスしたら当時と変わらず散々嫌味言われちゃった。

今年で50過ぎてるっていうのに、全然性格丸くなってなくてさ。まいっちゃうよ、本当。

………放課後ね、ちょっと時間あったから校内色々回ってみた。

校舎とかは全然変わってなかったよ。

教室の柱の傷とか、体育館のカーテンが壊れてたりとか、プールにハトの巣があったりとか、そういうのは全然変わってなかった。

………文化祭とか超楽しかったよねー。

3年の時クレープの屋台やったけどさ、君は全然うまく焼けてなかったよね。

途中から焼くのが全部私の担当になって、本当に大変だったなー、あの時は。

…休憩時間はさ、二人で手つないで色々お店まわったよね。

わたあめ食べたり、たこ焼き食べたり、焼きそば食べたり。

…そうそう、射的にも行ってさ、君が的に当てて3等当てた時は、すごいなって思ったよ私。

あの時君が当てたおもちゃのアクセサリー、あれ今でも大切に保管してるよ。

………文化祭が終わった後、二人で屋上に行って、校庭のキャンプファイヤー眺めたよね。

それで、その時、君が告白してくれた。

その時は、ほんっと、嬉しかったー。

…いやさ、君が知ってるかどうかはわかんないけど、君って結構モテてたから、告白されたのびっくりしちゃった。

今はもう時効だから言うけど、当時私、君に他の女の子近づけないように、いろいろやってたんだよね。

ライトなやつとか、結構ディープなやつとか、ギリギリアウトのこととか、色々とね。

いやー、あの頃の若気の至りってやつでここはどうかどうか。

……ほんと、懐かしい思い出だよ。

…あ、やば。明日の予習やっとかなきゃならないんだった。

じゃ、まったねー。

また電話するからねー。

(ツー、ツー)』




『(ピー)

もしもーし、メッセージ残すよー。

…こっち最近マジ寒くてさー。コート着ててもマジ凍りそうって感じ。

仕事の帰り道とか、バスとか電車乗ってる時はいいんだけど、徒歩の時とか超辛い。

…今日はさ。久しぶりに街中歩いてたんだ。

君と付き合ってからは、よく街中歩いてたよね。

お金のない学生だからほとんどウィンドウショッピングだけど、私はそれでも結構楽しかった。

…そうそう、クリスマスのデートの時、ちょっとだけ遠出して繁華街のイルミネーション見に行ったじゃん。

あの時は超まいったよね。

途中から雨降りだしてさ、傘かぶってても結構濡れちゃって。

…そうだ。あの時君、私のことちょっとエロい目で見てたでしょ。

君はバレないようにそっぽ向いてたけど、全然バレバレばだかんねー、あんなの。

………でも、しばらくして雨もやんで、ビルとかタワーのイルミネーションもすっごくきれいで…

それで、君がプロポーズしてくれた。

…まあ、正直そんな雰囲気なのは薄々気づいてましたけど。

っていうか君、ソワソワしすぎだったから。

逆にあれでそういうのがなかったら肩透かしだったよ。

…私も、君のことは大大大好きだったから、OKして………で、すぐに二人で暮らし始めた。

…うー、でも、今でもわかんないことがあるんだけど。

同棲しての初日。

私、メイド服着て猫耳付けて、リード付きの首輪もつけて、「今日から君のために何でもします」って言ったのに、君ドン引きだったよね。

別に嘘でも何でもなくて、君のためなら本当に何でもしたかったのに、「すぐにやめて」とか、全然意味わかんなかった。

男子って、ああいうの憧れてるんじゃないの?

大好きな人のためなら、何でもできるのに。

………あ、そろそろ充電切れそうだ。

そろそろ切るねー。

(ツー、ツー)』




『(ピー)

…もしもし。

ごめんね。電話、久しぶりになっちゃった。

…今さ、私達二人で住んでた家にいるんだ。

別のところに引っ越してからは全然来てなかったんだけど、久々に来てみたくなっちゃって。

君と結婚して、この家に住みだしてからは、幸せな時間だった。

朝起きて、ご飯食べて、仕事行って、帰ってきて、テレビ見て、イチャイチャして、お風呂入って、寝る。

ごくごく当たり前の日常だったけど、それが本当に、幸せで…

いつか子供を、なんて話もしてたよね。

子供と一緒にキャッチボールするんだって、君は言ってた。

女の子が生まれたとしても、そう言ってたのかな?

女の子なら、おままごとか一緒にやってたんじゃないかな?

優しい君のことだから。

………君のいないこの家は、空っぽだよ。

家具とか服とかはそのままなのに、全然別世界みたいに、空っぽ。

なんていうか…温もりがない、みたいな?

どう言っていいかわからないよ。

…この家に来て私。いろいろやってたんだ。

君とご飯を食べたテーブルで、ご飯を食べたり。

君と一緒に座ってテレビを見たソファーで、テレビを見たり。

君と二人で入ったお風呂の湯船で、お湯につかったり。

君と寝ていたベッドで、寝てみたり。

君の着ていた服を、着てみたり。

君の使っていたタオルを、触ってみたり。

君の歯ブラシで、歯を磨いてみたり。

君の髪の毛を、集めてみたり。

君を感じたくて、色々やってみた………

でも、でもね…

何をやっても、全然君を感じないんだ。

君がいないテーブルやソファーは、一人だと寂しくて。

君のいないお風呂やベッドは、全然冷たくて。

君の服を着てもタオルを使っても、何も感じなくて。

君の歯ブラシは髪の毛を見ても、ゴミにしか思えなくて。

本当、辛い…辛いよ。

ねえ…ねえ………帰ってきて。

何でもするから、私の元に帰ってきてよ。

ぐすっ。ぐすっ………

………

………

………

答えては、くれないか………

そうだよね。

だってこれは、ただの留守番電話で。

だって君は、もうこの世にはいないんだから。

何回電話しても、絶対に君はつながらない…

………もう、君はこっちにはいないんだよね…

なら、私がそっちに行けばいいのかな。

君に会うためには、それしかないのかな…

………うん。じゃあ今からそっちに行くから。

ちゃんとそこで、待ってるんだよ。

君は放って置いたら、すぐどっか行っちゃんだから。

だから、私が迎えに行ってあげないと。

待っててね。

また、一緒になろうね。

愛してる。

(ツー、ツー)』

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