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072 街を治める絶対女領主の夫になる命令に背いたら…

「お主は我の夫になるが良い。

………聞こえなかったか?

お主が、この城の領主である我の夫になると良いと言ったのだ。

我の夫になるというのは、大変名誉なことである。

本来なら、お主のような下級市民を夫に取るなどあり得んことだが、これは例外中の例外。

ここの主である我が言えば、それはすべて正しいこと。

…なに、我の夫になると言っても、領地を治めるための業をする必要などない。

お主は我の隣にいて、我に存分の愛を注いでくれれば、それ以上のことは求めん。

我の夫でいる限り、贅沢な暮らしを許そう。

毎日毎日豪勢な食事に舌鼓を打つが良い。

毎晩芸子を呼んで見世物を楽しむのもよい。

この城の中で、お主の思うような生活を送ればよい。

…それで、お主は我の夫になってくれるか?

………

ふうん。断るとな。

どうして断る?

今言ったように、今のお主では考えられん生活を送れるというのに。

………

ふうん。今の生活が幸せとな。

そうかそうか。

お主がそういうのならば、致し方ない。

下がってよいぞ」




「…よし、入れ。

………おお、お主か。

わざわざお主の方から会いに来てくれるなど、何とも嬉しい限りよのう。

ようやくお主も、我の寵愛を受ける気に………

…なんだ、違うのか。

それで、何用か?

………

…ん?一体何の話をしておる?

お主の友人が、北の国に奉公へと行った。

それが一体どうかしたというのじゃ?

まあ北の国へとなると、かなり長い奉公になりそうかの。

久しく友と会えんことを嘆きに来たのか。

………なぜ我が、お主の友人のことを知っておると思う?

奉公へと行かせたのは我ではない。

そんなの、我の業ではないからの。

見当違いも甚だしいぞ。

…ああ、我は知らない。

我のあずかり知らぬところさ。

………それだけか?

では、下がれ」




「………

………ん、またお主か。

何度も我を訪れてくれるなど、逢瀬を重ねる結人同士に見えるな。

貴様の愛を受ける準備ならとっくのとうに………

…ふん。また話があるとな?

今日はどんな話かの?

愉快な話であるといいのじゃがな。

………

…ほうほう。お主の両親の家業が破綻したとな。

それはそれは、大変なことじゃの。

………もちろん。領主としては領民の生活を気にかけるのも当然のことじゃて。

だがまあ、破綻を何とかしたいと言ってものう。

領主の立場故、ただの一領民に対して依怙贔屓をしてしまうのも…

………そういう話ではない、とな?

では、何の話をしたいというのじゃ。

………知らん。我は知らんぞ。

両親とやらの家業が破綻したのは、両親とやらの力不足だろう?

………

…ふうん。

仮に我がお主の言うように、城へ納める装飾品を別の家のものに変えたとして、我に何の得がある?

何の得もないことなど、我はしない。

わかったか?

わかったのなら、さっさと下がるがよい」




「(バタバタバタバタ)

………何やら騒がしいの?

一体何が………

………おお、お主。

どうしたのかの?そんなに血相を変えて?

………よいよい、周囲の兵達は下がってよいぞ。

故奴と我を二人きりに。

…聞こえなかったのか?

お前達は下がれ、と。

………

ふん。まったく、聞き分けののない奴らよのう。

お主もそう思わんか?

…無駄話などしたくという顔よの。

まあよい。

それで?そのような真剣な面持ちで我に何用か?

…お主の恋人のこととな?

一体、何の話かの?

………ああ、確かに、そのような者がこの城の牢に投獄されたらしいの。

…冤罪?

何を言っているかわからん。

お主の恋人とやらは、罪を犯したから投獄されたに決まっておろう。

………何の罪か、か。

それはもちろん、盗人の罪じゃ。

…いいや、恋人とやらは確かに盗人じゃ。

何せ、我の大切なものを盗んだんじゃから。

重大も重大。

すぐにでも死刑にしたい所存よ。

………わからんのか?

お主じゃよ、お主。

お主の心を盗んだ罪は、大量殺戮よりも罪は重い。

刑の執行は、それはもう大々的に行うのもいいかもしれんの。

街の中心で、領民に見られながら、処罰を下す。

はっはっは!

はっはっはっはっはっはっは!

………んん?

何が言いたいことがあるのかの?

言いたいことがあるのなら、我はきちんと聞き入れてやるぞ?

………ほう、刑の執行をやめて欲しいとな。

いやいや、確かに恋人とやらは罪を犯した。

その罪は処罰されるべきだろうに。

………本当に執行を止めたいのなら、お主の言うことはまた別のことじゃないのかの?

吾奴の罪は、お主の心を盗んだこと。

仮にその盗んだ事実がなくなったとしたら、罪がなくなるかもしれんかのう。

………

…ん、聞こえん聞こえん。

もっと大きな声で申せ。

………そうかそうか。我の寵愛を受けるとな。

わかったわかった。

確かに、それなら罪は罪ではなくなる。

お主の心は、確かに我のものになったのだから。

………だが、無残放免というのはまだ早い。

それはそうじゃろう?

今お主がそう言っているのは、恋人の執行を止めたいがためかもしれんからの。

…本当に吾奴を自由にさせたいなら、存分に我に尽くすとよい。

お主の愛が本物だと感じられたなら、我は喜んで恋人とやらを牢から出してやろう。

これぞぞまさしく相思相愛。

この先は二人共ども、幸福の道を歩もうぞ。

愛しの旦那様」

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