067 異世界転生先で僕を召喚したお姫様に求婚される
「………ようこそおいでくださいました。
導かれしものよ。
私達の世界のようこそ。
ここは、貴方様のいた世界とは異なる異世界です。
そして私が、貴方様をこの世界と誘ったものです。
私がこの世界に貴方様を召喚しました。
私はこの国の姫であり、この城の主です。
…この世界に来たばかりで、少々お疲れでしょう。
貴方様の部屋は用意しておりますので、少々お休みになってはいかがでしょうか?
………はい、ではご案内いたします」
「(コンコン)
………失礼します。今、よろしいでしょうか。
…気分がいかがですか?
もしよろしければ、お食事にと思いまして。
………そうですか。では、私に付いてきてください。
貴方様のために、豪勢な食事を用意しましたので。
………
………
………
…それでは、どうぞ、お召し上がりください。
実は、今日の食事は私もお手伝いいたしましたの。
貴方様のお口に合うとよろしんですが…
そうですか!美味しいですか。それは良かったです!
………
…あの、貴方様。
食事が終わりましたら、この町をご案内させていただきたいのですが、いいでしょうか?
………
………はい?なんでしょうか?
…旅に、ですか?
どちらに行かれるんですか?
………いいえ、私はあなたに旅に出て欲しいとは思っておりませんが…
魔王の存在?
いえ、今のこの世界に魔王などおりません。
戦争?
いえ、この国は他国と友好的に過ごしております。
未開のだんじょん?
だんじょんというのはわかりませんが、調べて欲しいところはありません。
悪役令嬢?
いえいえ、どの国との令嬢とも、仲良くさせていただいております。
げーむの世界?
ああ、確かそれは、貴方様の世界の娯楽の一つ、でしたっけ?
それがどうかなさったんですか?
宇宙人の来訪?
何をおっしゃってるのか、ちょっとよくわかりませんわ。
未来?過去への移動?
異世界の移動は確かにそれに似たものがありますが、しかし、それは私達の世界でもかなっていませんわ。
私の家庭教師?
いえいえ。確かに私はまだまだ未熟者ですが、それを頼みたいとは思っておりません。
………この世界にあなたをお呼びした理由、ですか。
それは…
貴方様を、私の夫とするためです。
…この城にある過去の文献には、かつての召喚者の方の記録がいくつかあります。
魔王を討ちとった勇者様の話や、他国との戦争を終わらせた剣士様の話…
召喚された者達の活躍は、それもう素晴らしい方ばかりです。
私は、そんな方々に恋をしました。
しかし、文献はあくまで昔の話。
私には既に、届かない存在の方たちばかり…
その方達に私の愛は届きません。
では、ならばどうすればいいのか、私は考えました。
そう、新たに召喚者をお呼びして、その方を夫にすればいいのだと思い付いたのです。
私が新しく召喚すれば、その方は私だけの召喚者です。
魔王を倒す冒険に行く必要はありません。
平和を守るために戦う必要はありません。
未開の地に探索へと勤しむ必要はありません。
悪役令嬢と対立する必要はありません。
貴方様はただ、私の夫として、この城で、一生を添い遂げてくれればいいのです。
………帰りたい?
なぜですか?
貴方様は私の夫となる方なのですから、帰る必要なんてありませんわ。
それに第一、異世界からの召喚方法はありますが、こちらの世界から貴方様の世界に戻す方法はありません。
一方通行であり、もう、元の世界に戻ることは不可能です。
なので貴方様は、この世界に暮らしていくことが、宿命として決まっているんです。
…ご安心ください。
私はあなたを愛しています。
出会ったのはついさっきですが、召喚者である貴方様を愛おしく思っております。
なぜなら、あなたは異世界からの来訪者なんですから。
きっとあなたは、魔王を討ち取るだけの実力の持ち主であり、戦争を終わらせられるほどの勇敢な方に決まっております。
そのような魅力あふれる貴方様に、恋をしない理由がどこにあるというのでしょう。
この城にいる限り、生活に不自由はございません。
豪華な食事、豪華なベッド、そして、この私。
これらすべてが、私のものであり、貴方様のものです。
…これから愛おしい一生を、私と共に過ごしてまいりましょう。
この私と生涯をかけて、幸せな毎日を過ごしていきましょう。
異世界転生し召喚されたこの地で、いつまでもいつまでも。
愛していますわ。貴方様」