表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/268

057 何でも願いを叶える悪魔に恋人の命を救ってと願ったら…

「………ふう。

この世も久々だな。

…それで、貴様か?儂を呼び出したのは?

………誰かとは、貴様で呼び出しておきながら、儂を知らぬというのか?

まあよかろう。

儂は、悪魔じゃ。

貴様の願いをかなえるためにはるばるやってきた、正真正銘の悪魔じゃ。

………うん?悪魔らしくない?

ふうん。貴様には儂がそういう風に見えているのか。

…別に、大したことではない。

儂は呼び出し場所によって姿形が変わるというだけじゃ。

貴様が今見ている儂の姿が、この場所にとっての悪魔の想像の産物。

たとえこの世でいう女子(おなご)のような風貌だとして、それは儂の真の姿とは言い難い。

この世にらしからぬ姿形をしたとして、貴様らの理解に及ばなければ、そもそも悪魔として存在できぬからな。

………はっ。わからぬというのなら捨て置け。

とにかく、儂は貴様が呼び出した悪魔の存在だというには違いない。

それで?

貴様は悪魔の儂に何を願う?

………

…ふうん?その女子(おなご)とやらの命を救いたいとな?

………それはそれは可哀そうに。

そのような病に罹っては、もう余命幾ばかの段階だろうな。

貴様は租奴の命を拾って欲しいと?

………ふん、当たり前だ。

悪魔である儂を見縊るではない。

其方等生物のたった一つの命を救うくらい、朝飯前だよ。

…だが、願いを叶えるには代償がいる。

その代償を払う覚悟はあるのか?

………あるとはっきり答えおったな。

では貴様にもう一度問おう。

その代償が自分の命だとしても、貴様は租奴の命を救うというのか?

…即答だな。

では仮に、租奴の命を救い、そして再び貴様が租奴と会ったとして、その時貴様は何をしたい?

命を救ったのは自分だと、それを理由に婚姻を迫るかの?

それとも、その若き体を貪るように食い尽くしたいと思うかの?

あるいは、手足を縛って自分の櫓に放り込んで閉じ込めておきたいかの?

………ふうん?

珍しい回答じゃの。何もしないとは。

貴様は租奴のことが好きではないのか?

想いを寄せる相手なら、それ相応のことをしたいとは思わないのか?

…そうか。生きていればそれでいいと貴様は申すか。

………ふうん。

では、その女子の命を救ってやろう。

貴様の命と引き換えにな。

………

………

………

…うん?もう終わったぞ。

なんだ?仰々しく呪文を唱えたり、地面に魔法陣でも描くのかと思ったのか?

ふん。そんな面倒くさい儀式を行わずとも、願いを叶えることなんて造作もないことじゃ。

確かに、その余命わずかの女子(おなご)の命は拾ってやった。

………悪魔は代償と共に願いを叶える。

代償を得た以上、願いを叶えないという反故にはしない。

…ああ、そのことか。

儂は貴様の命を頂くと言ったんだ。

それは別に、貴様を殺すという意味ではない。

いやなに、もし貴様が、下らない奴で下らない欲望のために下らない願いを叶えるというのなら、貴様の想像通り命を奪っただろう。

だが、貴様はそうではなかった。

遥か彼方、悠久の時を過ごしてきて久々に面白き奴に出会ったからに、その命を奪うのは勿体無いと思ってな。

しかし残念ながら、それは貴様をこのまま帰すという意味ではないぞ?

『貴様の命を貰う』

それはつまり、儂とこれから永遠の時間を過ごすという意味だ。

貴様はこれから不老不死になる。

食べることもなく、眠ることもなく、ただ儂と一緒に時を過ごす。

命を貰うといったんだ、そうやすやすと死なせはせん。

はてはて、儂が飽きるまでは儂と一緒にいてもらうぞ。

それが千年先か、一億年先か、それは儂の気分次第だ。

これから悠久の時を過ごそうぞ。

儂と貴様で、永遠をな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ