表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/268

051 いつも家にやってくる宅配員に宅配テロされた

「(ピンポーン)

(ガチャッ)

…こんにちは。お届け物です。

こちらにサインかハンコお願いします。

…はい、確かに。

じゃあお荷物中に入れちゃいますね。

………この荷物ですか?

えーっと、最新型のパソコンとテレビ、それとスピーカーですね。

大きい荷物なので、ここまで持ってくるの大変でしたよ。

…え。頼んだ覚えがない?

そんなことはないはずなんですが…

確かに、ここに届けるはずの荷物ですけど。

………お金ですか?

いえ、代金はいただきませんよ。

家電の料金も、発送料金も支払う必要はないです。

私はここに荷物を届けに来ただけ、なので。

………はい。わかりました。

じゃあ、荷物運び込みますね。

…よい、しょっと。

………こっちのリビングでいいですか?

…じゃあ、この部屋の隅に。

………ふう。

…いえいえ。これが私の役目ですから。

それでは、失礼します。

(ガチャン)

………

…喜んでくれるはず、ですよね」




「(ピンポーン)

(ガチャッ)

…こんばんは。お届け物です。

ここにサインかハンコいただけますか?

…はい。ありがとうございます。

ではこれ、今日のお届け物です。

………ええ、有名店のパスタと、おにぎりと、ステーキですね。

これ全部、召し上がられるなんてすごいですね。

………はい?注文してない?

いえ、そんなことはないはずなんですけど………

…ええ、代金はいただきませんよ?

これを届けに来ただけで、あなたからお金はいただきません。

………へえ、ちょうどテレビでやってるのを見てて、食べたかったところなんですか。

食べたいものなら食べてもいいのでは?

人間、美味しいものを食べることが幸せなんですから。

あなたに食べてもらえれば、私もこうして、届けに来た甲斐があるというものです。

………はい。じゃあどうぞ。

ゆっくりお召し上がりくださいね。

では、私はこれで。

(ガチャン)

………

…本当は、手作りを持っていきたかったんだけど…」




「(ピンポーン)

(ガチャッ)

…こんにちは。お届け物です。

サインかハンコ、お願いできますか?

…ありがとうございます。

それでは今日の荷物になります。

………これですか?

アクセサリーと、メッセージカードですね。丁寧な包装で包まれています。

…え?『どうして中身がわかるのか?』ですか?

いえいえ、私はこうして荷物を届けに来たんですから、届ける荷物の中身くらい、把握してて当然じゃないですか。

変なこと言わないでくださいよ。

………へぇ、身に覚えがない、ですか。

えっと、でも、確かにあなたに届ける荷物なんですが………

………はい。お金はいりませんよ?

あなたが受け取ってくれれば、それで大丈夫です。

返す必要なんてありません。

あなたへのプレゼントなんですから、黙って受け取ってくれればいいと思いますよ?

心から気持ち、なんですから。

受け取らない方が損です。

………では、どうぞ。

きちんと大切にしてくださいね。

では、私はそろそろ…

(ガチャン)

………

…ふふっ。ついに渡しちゃった。

大事な大事な結婚指輪と、告白の手紙」




「(ピンポーン)

(ガチャッ)

…こんにちは。お届け物です。

ここにサインとハンコをしてもらえますか?

…はい。大丈夫です。

それじゃあ、家の中、失礼しますね。

………え?はい?手には何も持ってませんよ?

手ぶらなのは見ればわかると思いますけど…

…ああ。今日の荷物ですか。

今日の荷物は…


この私です。


私を届けにまいりました。

だって、ご注文なさいましたよね?

『幸せな家族が欲しい』って。

…いえいえ。確かにあなたは言ったじゃないですか。

今朝のテレビで芸能人の結婚のニュースを見て、そうつぶやいたはずです。

………それはもちろん知ってますよ。

あのテレビと、スピーカーと、ソファーと、パソコンと、スマホと、テーブルと、カーテンと、置物と、コップと、カーペットと………………に、マイクやカメラが入っているので、あなたの注文は決して聞き逃しません。

………ええ、そうですよ。

だって、それら家電や家具はすべて私がここに届けたものなのは、受け取ったあなた自身知っているはずじゃないですか?

私の確かな想いの数々、受け取ってくださってありがとうございます。

…ああでも、指輪の方はまだ指にしてなさらないんですね。

もう、照れなくてもいいのに。

あ、それとも結婚式みたいに、二人一緒に付けたいということですか?

なんだ、そういうことなら早く言ってくださればいいのに。

………え、出て行って欲しい?

いえいえ、私はもう出ていきませんよ?

だってほら、これ。婚姻届け。

先ほどあなた、これにサインとハンコしてくれましたよね?

よく見てください。ちゃんとあなたのサインもハンコもしてあります。

相手の欄には、もちろん私の名前と印鑑が押してあります。

…嬉しいです。

今までは私の愛をあなたに届けるだけでしたが、これからは、あなたの愛を私も受け取ることができるんですから。

………最初は、ちょっと怖かったんですよ。

私の秘かに秘めた思い、もとい荷物を受け取ってくれないんじゃないかって。

見ず知らずの人のお届け物なんて、受け取ってくれないんじゃないかって。

でもあなたは、私の荷物を受け取ってくれた。

家電も家具も、食事も指輪も、何もかもすべて受け取ってくれた。

これはもう、私の愛が届いたということで、それは飛び上がるくらい嬉しかったです。

そしてこうやって婚姻届けにもサインとハンコをしてもらいましたし、名実ともに、あなたと生涯を共にできるというわけです。

これから毎日、楽しく過ごしましょうね、あなた。

私の愛は、クーリングオフ禁止ですからね。

ふふっ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ