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047 兄の前ではツンツンしている妹。しかしその裏では溢れる想いを隠せなくて…

「(ガラッ)

(スタスタスタスタ)

(………コト)

…ねえ、これ。忘れ物。

それじゃ。

………

…はあ?何って…見ればわかるでしょ?

お弁当よお弁当。

今日あんた朝練で、朝早く出て忘れてったでしょ。

だからお母さんに頼まれて、わざわざ私が教室まで持ってきてあげたってわけ。

そのくらい、説明しなくてもわかるでしょ。

ったく、頭鈍いんだから。

………え、そうじゃない?

ああ、弁当箱の方ね。

そうそう、今日ちょっと、量が多くなっちゃってね。

いつものじゃ入りきらないから、おっきい方の弁当箱に変えたの。

………うん?そう。

それは私が作ったやつ。

今日は友達との間で、自分で作ったお弁当を持ってくるって話になってたから、朝早く起きて作ってたんだけど、あんまし慣れてないから量が多くなっちゃったの。

別に、あんたに作るつもりなんてさらさらなかったんだけど、作りすぎちゃったし、わざわざお母さんにあんたの分だけ作ってもらうのも悪いと思ったから、仕方なくよ仕方なく。

変な勘違いとかしないでね。

………え、もう食べるの?

別にいいけど。そんなにお腹減ってるなんて、動物みたいね。

(…パカ)

………美味しそう?

フン。私が作ったんだから、食べなくても美味しいわよ、当然。

………

…はあ?そんなわけないでしょ?

なんで私が作るのに、わざわざあんたの好きなおかず入れなくちゃいけないのよ。

唐揚げとか卵焼きとか、普通のお弁当でも普通に入ってるおかずでしょうが。

それなのに自分の好きなもの入れてくれたーとか、頭の中お花畑なんじゃないの?

一回保健室に行って来れば?

………ああ、もう。そんなことばっか言うなら…没収。

………

フン。別にいいでしょ。

元々私が作ったものなんだから、私には食べる権利がある。

………知ーらない。

あんたのお昼なんて、学食か購買にでも行けばいいでしょ。

じゃ、私友達と約束してるから。

それじゃあね」




「(クンクン、クンクン)

………これは、体操服。

(クンクン、クンクン)

………こっちは、シャツ。

(クンクン、クンクン)

………ん、靴下。で次は下着…

(ガチャッ)

………は?何?どうしたの?

脱衣所になんか用?

…ああ、タオルね。

そっちの棚のやつ使えば?

………ん?何してたのかって?

…はあ?『匂い嗅いでた』って、変な言いがかりやめてくんない?

いやそりゃ、これはあんたの体操服で、シャツで、靴下だけど、匂いなんて嗅ぐわけないじゃん。

どこの世の中にあんたの匂い嗅ぎたい奴なんているのよ。

………別に、ちょっと変な匂いがしたら、変なものでもついてるんじゃないかって確認しただけ。

ほら私、今日の洗濯当番だし。

洗濯しようかなーって思ったら、あんたの洗濯物から変な匂いがしたんだもん。

私の洗濯物と一緒に洗うんだから、変なものがついてたら大変でしょ?

そういう理由だから匂い嗅いでたとか、人を変態かなにかみたいに言うのはやめて。

………で?

『何が?』じゃないわよ。

そのタオルで汗かなんか拭くんでしょ。

これから洗濯するんだから、それも一緒に洗うって話。

拭き終わったならカゴ入れてってね。

(…ッポイ)

………じゃ、これから洗濯するから。邪魔者は早く出てった出てった。

………

………

………

………タオル。

(クンクン、クンクン)」




「………あ。

うわ。こんなところで会うとか最悪。

なんでこんなところにいるのよ。

あー、確か、この時間はグラウンドで部活中でしょ?

それなのに昇降口にいるとか、サボってんの?

………ふーん。体育館に用具取りに来ただけ、ね。

だったらさっさと行けば―。

………私?

別にいいじゃん。

私がどこで何してようが、私の勝手でしょ。

………ああ、もううるさいな。

呼び出されたのよ、体育館裏に。

放課後一人で来いって。

…さあ?場所と時間指定されただけ。

何の用件かは会ってからだって。

………告白?

そうかもね。

呼び出しの相手は同じ学年の男子だったし、あり得るんじゃない?

………付き合うのかって?

…別に、あんたには関係ない。

………じゃ、もう時間だし、そろそろ行くから。

じゃねー。

(スタスタスタスタ)

………

………

………

…あ、どうも、すいません。遅れちゃって。

………まあ、時間前ですけど、待たせたのは変わらないですし。

それで、何の用ですか?

………

………

………

…あー、告白ですか。やっぱり。

………ごめんなさい。お断りします。

………

…どうしてって………

んー、まあ。他に好きな人がいるので。

…えー、それは………


私のお兄ちゃんです。


いや、私のお兄ちゃん本当カッコよくて。サッカー部入ってるんですけどレギュラーで毎日毎日汗流して頑張ってるんですよ。この間の試合なんか相手のパスを華麗に止めてすぐにパスして味方のゴールにつなげたりして。そういうところめちゃくちゃカッコよくて。あそれに勉強もすごくて。部活がんばってる割に夜遅くまで勉強しててこの間の学年テストも学年20番以内に入ってんですよ。これすごくないですか?私なんかいっつも半分より下なのに20番以内ですよ20番以内。それもこれも自分の夢をかなえるためで。知ってます?私のお兄ちゃん獣医さんになるのが夢で。それ昔家で飼ってた犬が理由なんですけどね。お兄ちゃんその犬すっごくすっごく可愛がってたんですけど病気で死んじゃって。同じ思いを他の人にもさせたくないってそんな夢持ったんですよ。すごいですよね。すごいすごい。私そんなお兄ちゃんに憧れて憧れて将来は絶対この人を支えたいなって思ってるんです。あでもお兄ちゃんにおんぶにだっこじゃなくて私も一緒に働くつもりで。夫婦一緒に頑張っていこうと思ってるんですよ。学校卒業後は二人でアパートかなんか借りて同棲して。でお金が貯まったら庭付きの家に引っ越すんです。赤い屋根の家とか住むのが夢なんですよね。その家で子供とペットと暮らすのとか考えるとすっごく頑張れるんです。まあでも私はお兄ちゃんと違ってそんなに頭に良くないし。いやお兄ちゃんよりも頭いい人なんて本当はいないんですけど。それでもパートナーとして支え上げたいとは思うんですよ。お兄ちゃんと寄り添っていくには私も頑張らないと。勉強いろいろ頑張ってるんですけどなかなかうまくいかなくて。でもそんな時教えてくれるって言ってくれるこれがまた優しいお兄ちゃんでますます好きになっちゃって。でもでも照れくさくて断っちゃうんですよねこれが。てへ。でもだからずっと一緒にいたいと思うんですよ。それで10年20年30年40年50年いくつになっても二人仲良しで暮らして。おじいさんおばあさんになってもいちゃいちゃしてて。死ぬ時も二人同時で。来世はお兄ちゃんと妹じゃなくて………………

………

…って、あれ。いなくなってる。

まだまだ全然、語り足りないのにな。

………ま、いっか。多分あれで諦めてくれるだろうし。

…あー、でもなんで私、お兄ちゃんの前だと素直になれないんだろう。

お兄ちゃんを前にすると、つい冷たくしちゃう………

もしかして嫌われてる………っていうのはないよね。うんうん。

だって、私はお兄ちゃんの妹だし。

私がこんなに大大大好きなのに、お兄ちゃんが私を嫌いになるなんてこと、あるわけないよね。

お兄ちゃん、大好きだよ。今日も部活、がんばってね♪」

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