039 僕を嫌いなギャルに人を好きにさせるアプリを見せたら…
「(タンタンタンタン、タン)
………よーやくついた。
ったく、なんなの?
わざわざこんなところまで連れてきてさ。
用件あるなら早くしてよね。
この後、友達と新しいカフェ行く約束してるんだからさー。
………てか、なんなのあんた?
…とぼけないでよ。さっきの土下座のこと。
なんで人呼び出すだけで土下座するわけ?
わざわざ皆のの前で土下座しちゃてさー。
「どうかお願いしますー」って、キモ過ぎなんですけど。
こんなの、行かなかったらあたしの方が責められるじゃん。
いい?あたしはあれで仕方なくここについてきただけだから。
土下座すれば何でも言うこと聞くとは思わないでよね。
………それで?
そうまでして、あんたはここで何がしたいの?
さっさとしないあたし、帰るから。
…口もごもごさせて、グズグズしてんじゃねーよ、このノロマ。
………
………は?好き?
コク、ハク………?
………
………
………
………
………
…うん、あたしも君のこと大大大好き―………なんて答えるわけねーだろバァーカ!
一体何の話かと思えば、は?好きです?告白?
思い上がりもほどほどにしろよこのキモオタ!
同じクラスだからって、全然話したことも絡んだこともない奴が付き合うとかねーだろ。
コクハクする前にまず鏡見て来いよ、鏡。
このぶっさいくな面、2回3回生まれ変われなきゃ相手になんかするかっての。
つか顔がイケメンになったところでお前なんか無理だし。
いっつもいっつも教室の隅で変なイラストの本読んでるか、キモ絵のゲームばかりしてるじゃん。
なんでそんな奴にあたしが付き合わなきゃならないわけ?
身の程をわきまえろよ、このクソキモオタ野郎。
…あー、鳥肌たってきた。急に寒気がしてきた。
慰謝料払ってほしいくらいだわー。
いや、あんたが触った金なんて拾いたくもないから絶対払うな。
あー、やだやだ。
今日占いで最下位だったのこれか―。これだったのかー。
こんなキモオタに告白されるとか、人生最悪の日だわー。
………あ?なにこっち見てんび。
そんな気持ち悪い顔向けんなっつーの。
は?「これを見ろ」って、なんでそんなのあたしが見なきゃ………
………100%………絶対………………恋愛………アプ、リ………?
………
………
………
………うわ、すっごいイケメン…
めちゃくちゃあたしのタイプ…。
好き好き、あたし君の超好き―。
大好き大好き―。
………え、付き合う?
うんうん。もちろんオッケーオッケー。
むしろ今まさにこっちから告白しようと思ったくらいだよー。
君みたいなイケメンに告白されて、オッケーしない女の子なんていないって。
あ、でもでも、今はあたしの彼氏だから、他の子に告白しちゃだめだよ。
…あ、そうだ!
駅前の方に新しくカフェできたの知ってる?
今から一緒に行こうよー。
………え、友達?
いいよ別に、あんな奴ら。
君以上に優先することなんて、何もないよ。
ほらほら、さっそくレッツゴー!」
「おっはよー!
君の家まで迎えに来ちゃった。
一緒に学校行こう?
………腕組んでー。
ふふっ、君の隣隣っ」
「…はい、あーん。
………どう、どう?おいしい?あたしの手作り弁当。
君の好きなおかずばかり作ったからね。
ポテトサラダも、春巻きも、麻婆豆腐も甘めの味付けだよ?
さあさあ、どんどん食べて食べて。
はい、あーん」
「………あ。
ねえねえ、このアクセサリー可愛くない?
…うん、可愛いよね。
2つ買うからお揃いにしようよ。
………へへ。またお揃いのが増えちゃった。
スマホのストラップ、君とお揃いやつでいっぱいになっちゃった」
「………それでね。今度の休みのデートのことなんだけど、映画もいいけど、あたし遊園地にも行きたくてさ………
…え、何?どうしたの、改まった顔しちゃって。
なになに?あたしに告白したいことでもあるの?
『愛してる』とか、さ。
もう、そんなの全然当たり前のことじゃん。
わざわざ言わなくてもそんなの………
………え。
…ご、ごめん。もう一回言って?
『別れたい』………?
え、え。どうしたのいきなり?
いきなりそんな、別れたいなんて………
………重い?
四六時中一緒にいて、疲れた………?
………え、え。
そんなのやだやだ!
あたし君のこと好きだし!大大大大大好きだし!
君が運命の人なの!君が王子様なの!
君以外ありえないの!
だから別れるなんで言わないでよ!
…直すから。あたしの悪いところ全部直すから。
君の言うとおりにちゃんとするから。
だから、だから、別れるのだけは嫌だよぉ………
………
…それでも、無理………?
あたしとは、別れる………?
………
………
………
…ちょっと待って、行かないで。
わかった。わかったから。
君がどうしてもっていうなら、別れるから。
だから、最後に1つだけ、お願い。
これで最後にするから。
本当に最後だから、お願い。
………うん、ありがと。
じゃあちょっと、これを見て欲しいんだけど…
………
………
………
それで?あたしと、本当に別れちゃうの?
こんなに可愛い可愛い彼女と別れて、また一人ぼっちになるっていうの?
負け組に戻っちゃうの?陰キャに戻っちゃうの?
………
………うんうん!そうだよね。
君もあたしのこと、大大大好きだよね。
彼氏と彼女でいてくれるよね。
ずっとずっと、隣にいてくれるよね。
君なら考え直してくれるって、あたし信じてたよ。
これからもず―――――――っと、一緒だよ?」
「………
…それにしてもすごいなあ。このアプリ。
『成功率100%!絶対好きになる恋愛アプリ』
これを好きにさせたい相手に見せるだけで、本当に好きになってくれたし。
………あれ?下の方になんか書いてある。
『効き目には個人差があります。
人によっては、多大な効果を与える場合もありますので、表示時間やレベルをきちんと守ってご利用ください』
…ふーん。
多大な効果って、ウケる。
それだけ大好きになってもらって、後悔するなんてこと、あるわけないのにね」