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038 毎日会っている昔馴染みの男の親友。彼の本当の正体を知ってしまったら…

「………ーい。おーい、起きろー。

…あ、目覚めたか?

もう映画とっくに終わってんぞ。

早く行こうぜ。

(タンタンタンタン)

………今日の映画、まあまあだったなー。

恋愛映画だったけど、展開も登場人物もどっかで見たような感じで、ラストも何のひねりもなかったし。

………ああ、ラストでカップルがキスして終わりって感じ。

お前の希望であの映画選んだけど、俺やっぱ、こういうのあんな好きじゃねーな。

なんかこう、俳優がアクロバットに動き回るやつとか、銃弾の嵐中走り回るとか、そういうのが見たいだぜ。

ほら、去年見た超有名シリーズの第5弾のやつとか、あれとかめっちゃ派手だったよな!

こんな感じでさ。

(シュッシュッシュッシュ!)

………ええー、似てないって。

じゃあお前がやってみろよ。

(シュッシュッシュッシュ!)

ハハッ、お前も全然にてねーっつのー!

…昔は全然こんなんじゃなかったのになー。

ほら、小学校の頃、ジャングルジムから飛び降りるとか、ブランコめっちゃこいでジャンプするやつとかよくやったじゃん。

俺はそんなにできなかったけど、お前なんかすっげー高いところからジャンプしてさ、ちょっとカッコよかったぜ。

………ちょっとだっつーの。

つか、今なら俺だってできるし。

いや、昔だって全然できたし。

俺、小学校の頃は校内で『ロンリーウルフ』ってあだ名が広まってたんたぜ。

ってまあ、お前は知らねーんだろうけど。

俺達、結構長いことつるんでるけど、おんなじ学校に通ってたことはないもんな。

他にもさ、『眠れる獅子』とか『スーパーチーター』とか、そんなあだ名がさ………

………あ?どうした?ぼけーって顔して。

………

…またその話かよ。進学の度に言ってっけどさ、いいんだよ、別にお前と一緒の学校行けなくてもさ。

俺の成績、ドベのドベだぜ。

偏差値っつーんだっけ?それが最低のところの学校にギリギリ受かる程度の頭しかないんだから。

それに比べてお前は勉強そこそこできんだから、俺に合わせなくていーんだっつーの。

…だから、毎回毎回言ってんだろ。

大事なのは一緒の学校行くかどうかじゃなくて、毎日会えるかどうか、だろ?

別々の学校に行っててもさ、毎日のようにこうしてつるんでるんだから、それでいーんだっつーの。

俺はお前と一緒にいられれば、それでいいんだから。

………うわ、はっず。

やっぱ今のんなしなし。今すっげーはずいこと言ったし。

…えー。いいから、忘れろっつってんだろ。このこの。

………

………

………

ん?誰かこっちくんぞ。

誰だあれ?お前の知り合い?

違えのか…

………あ、どうもー。

…は、お茶?俺らと?

あー、いや。俺ら別にそういうのに興味ないんで。

………ほら、突っ立ってねーでさっさと行くぞ。

(タンタンタンタンタン…)

………

…はー、変なのに引っ掛かりそうだったな。

諦め早くてよかったけど。

………は?別にもったいないとかねーだろ。

お前、女に興味ねーじゃん。

…いや、そりゃグラビアとかの写真はよく見てるけどさ、何つーか、こう、彼女とか、恋愛的な?

そういうのには興味ないんだろ?

ああいう、顔とおっぱいだけで誘ってくる連中なんか………

………え?彼女欲しいの、お前?

え?え?は?

…好きなやつ、いんの?

え、なにそれ?初耳なんだけど?

え、あ、ちょっと待てちょっと待て。

………

………

………

あー、わり。

ちょっと気分わりーから、トイレ行ってくるわ。

…いいよ別に、出すもん出せばすっきりするっつーの。

それに、男の連れションなんかきもいだけだろ。

じゃ、ちょっとこの辺ぶらつてろよなー」




「(タンタンタンタン…ガチャン!)

………どういうことだどういうことだどういうことだ。

なんであいつに好きなやつがいる?

あいつそんなの全然興味なかったはずだったのに…

その好きなやつと付き合うのか、あいつは?

いや、まだ告白とかじゃーねーからそれはねーはずだ。

でも、これからそういうのがゼロじゃねーわけで………

………クソっ!

(…ガンッ!)

あー、くそっ!

あいつが女に興味ねーっつーから俺は、俺は………


女から男になったっつーに。


………ああ、そうだ。

その好きなやつってーのを、排除しちまえばいいんだ。

そうだそうだ。

あいつの視界からそいつがいなくなれば、あいつの隣にいるのは、俺のままだ。

なら、さっさと戻って、あいつからそいつのこと聞きださねーと………

(ガチャッ…)

………

………

………は?

なんで、お前がここに…?

今の話、聞いて………?

………っち。

おい、ちょっとこっち入れ。いいから!

(ガチャン!)

…バレたんならしょうがねえ。

何するつもりかって?

そりゃあ、もちろん…

女の私で、お前の心と体を逃げられなくすんだよ。

覚悟しろよ」




「………ーい。おーい、起きろー。

…あ、目覚めたか?

もう映画とっくに終わったぞー。

………今日の映画は最高だったな。

いやあ、もう男と女の関係がすっげーピュアでさ、もどかしいくせにせつなくて、感動したぜ。

…よくお前、今日の映画見てて寝られんなあ。

俺なんか身を乗り出して見いちゃったぜ。

………元気ねーのか―?大丈夫かー?疲れてそうだけど。

………

………

………

…つか、さ。そろそろ俺のこと思い出してくんねーの?

………思い出せねーのか。

んー…あ、そうだ!これなら思い出すぜ、絶対。

………コホン。


『私と遊ぼうよ!』


あっ!よーやく思い出したか。

………そうそうそうそう!

小学校入る前、一緒に遊んでた奴。

髪型は、こう、ポニテみたいにしてた女の子。

やっと思い出してくれたかー。

おせーっつーの。

………いやまあ、髪も切ったし、着る服も結構変わったから、無理ゲーだったのかも知んねーけど。

でも嬉しいぜ。

お前が俺のこと思い出してくれてさ。

………あ?

なんで別人で男のフリしてたのかって?

………そっちは覚えてねーのかよ。

…あー確か、小学校上がってすぐのころだったかなー。

いつものようにお前んとこ遊びに行った私にしさ、お前こう言ったんだぜ?

『女なんかに興味はない』ってさ。

それまでは普通に遊んでくれたのに、急にそんなこと言いだして、私が遊びたいって言っても、全然遊んでくれなくて。

いや、マジであんときはショックだったわー。飼ってる犬が死んだ時ぐれーショックだった。

でも、そん時の私は、こう考えたわけだよ。

「男になったら一緒にいてくれるんじゃないか」って。

それから髪を切って、服も男っぽいものに変えて、それからもう一回俺はお前に会いに行ったわけだよ。

『女の私』から、『男の俺』になったら、お前は俺を受け入れてくれた。

そういうことだよ。

………バレた時は正直焦ったけど、でもま、よくよく考えたらそっちの方がいいよな。

だって、今のお前は、『女の私』にもちゃんと、興味を持ってくれるってわけだよな。

『男の俺』はお前の親友として、で、『女の私』はお前の彼女になれるんだし。

カツカレーみてーに、一個で二度おいしい俺と私だぜ。

………あん?そのヒモの拘束?

だから、それは外せ―ねって。何度も言ってんだろ?

だが安心しろよ。別にいつまでもそのままにするつもりじゃーねーから。

お前の心と体が、俺と私から離れられなくなったら、そん時には、外してやるからよ。

………じゃあどうする?飯でも食うか?

…食欲ねーのか。食わねーと体持たねーぞ。

まあ、ずっとベッドの上いるから、そんなに腹減らねーのはわかんねーでもねーけど。

…じゃ、そろそろすっか。

………何って、わかってんだろ?

今ここには、お前と、『女の私』の二人きり。

部屋の中で男女が二人っきりって言えば、することは一つじゃねーか。

…ああ、それともう、こういうこと言った方がいいのか?

………コホン。

お風呂にする―?ご飯にする―?それとも、わ・た・し?

………

………

………

…うわ、やっべ。めっちゃはずい、はずい。

忘れろ忘れろ。今すぐに忘れろ!

………

………

………

はあ。じゃ、ま、気を取り直して。

今日もたっぷり、可愛がってやるぜ。

俺の親友で、私の彼氏のお前を、な」

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