030 お隣の奥さん家では今日もまた子供が増えました
「(ピンポーン………ガチャッ)
…はいはーい、どちらさま………あら、ボク君、今日はどうしたの?
ごめんね。あの子は、今ちょっと家にいないのだけれど…
困ったわねえ…どうしましょう。
うーん………あ、そうだ。
あの子が返ってくるまで、あの子の部屋で待ってたら?
そのうち戻ってくると思うし、そうする?
…うん。じゃあどうぞ、上がって上がって。
今、飲み物持っていくから。待っててね」
「(………ガチャッ)
お待たせー…
って、あら?あらあら?
どうしたのー?横になっちゃって。
…もしかして寝てる?
(………zzz)
寝言言ってる…
…本当に寝てるみたいね。
学校で疲れちゃったのかしたら?
………
…それにしても、かわいい寝顔ね。
無邪気な顔ですやすやと………
うふふ、見ていて微笑ましいわ。
ほっぺたなんて、本当に柔らかそう…
(…ぷにぷに)
柔らかい…
肌も白いし、あどけない顔だわ。
………ああ、こんな寝顔、欲しくなってきちゃう。
…我慢、できなくなってきちゃうわ。
…んー………
ダメだわ。やっぱり我慢できない。
…よいしょ、っと。
ふふ、軽い軽い。
こんなところで寝ないで、ちゃんとしたところでお寝んねしましょうね?」
「………あら、起きた?
ずいぶんとぐっすり寝てたわね。
もう、外は陽が落ちてるし、お寝坊さんね。
………え、ここ?
ああ、ここはさっきの部屋じゃないわ。
私の家の庭にある倉庫、って言ってわかるかしら?
…そうそう、あの赤い屋根の倉庫よ。
ちゃんとおぼえてて偉いわね。いい子いい子。
………ん?どうしてこんなところで寝てるかって?
それはもちろん、私が運んだからよ。
………ねえ、ボク君。私の子供にならない?
子供は子供よ。そのまま意味よ。
私の子供にならないかってこと。
ボク君のことは、実は結構前から気にかけていたのよね。
その童心の残る顔や、無邪気に遊んでいる姿を見て、『ああ、この子は私の子供にぴったりだわ』って、常々思っていたの。
そんな時、この家に遊びに来て、ぐっすり寝ちゃってるんだもん。
もうあの寝顔見たら、私、君のことが欲しくなっちゃって。
我慢できなくなったから、ここに連れてきちゃったの。
(………ビシッ)
…ああ、逃げようとしちゃだめよ。
今、あなたの首に首輪ついてるでしょ?
ひもがちゃんと壁に括り付けられているから、ここからは出られないわ。
………え、どうして外してくれなんて言うの?
君は今日から私の子供なの。
私の子供なんだから、私の言うことはちゃんと聞いて、ね?
…大丈夫。
ボク君がちゃんと、『私の子供』になれたら、その首輪は外してあげるから。
………そう、『私の子供』。
…最近ね、どういうわけかあの子が変なの。
急に帰りたいとか、お父さん、お母さん、って叫ぶことが多くなったの。
あの子のお母さんは私なのにね。
だから、ね。
…見える?そこの奥の方にあの子がいるの。
そう、ボク君は今日、あの子と一緒に遊ぶために来たんだもんね。
ちょっと、『私の子供』じゃなくなってきたから、ボク君と同じように首輪をつけているの。
ここにいれば、ボク君もきっと『私の子供』になれるわ。
大丈夫大丈夫。
最初はちょっと寂しいかもしれないけれど、ここにいれば『私の子供』にきっとなれるから。
なんなら、あの子じゃなくてボク君が一番の『私の子供』になっていいのよ?
近頃反抗期なのか、あの子、私の言うことを聞いてくれないことが多くなってね。
私はあの子のことを愛しているのに、ひどい話よね。
あの子の代わりに、ボク君が一番になってくれれば、私の愛情をたんとボク君にあげるわ。
(ぎゅー)
今日から『私の子供』として、大事に大事に、育ててあげるわね。
よろしくね、ボク君」