029 小さいころから一緒の隣のお姉さんに彼は一生甘え続ける
「………あれ、どうしたの?私の家の前で?
…どうしたの、うずくまってて、何かあった?
………って、大変!膝から血が出てる!
転んじゃったの?
待ってて、すーぐお姉さんがきれいにしてあげるからね。
…ふきふきふきふき。
よし、キレイになった。
もう大丈夫だよー。きれいになったからもう痛くないよー。
………いたいのいたいの、とんでけー。
いたいのいたいの、とんでけー。
…うん、泣き止んだね。
よく我慢できたねー、えらいえらい。
…なでなでなでなで。
じゃ、もう一人で立てる?
学校行けそう?
うん、いい子だね。
じゃ、行ってらっしゃい」
「…あっ、おかえり。
今帰ってきたんだー。
………うん、お姉ちゃんもちょうど今帰ってきたとこ。
お揃いだね、ふふっ。
あっ、そうだ。さっきデパートでおいしいお菓子買ってきたんだ。
もしよかったら家で食べない?
………うん。じゃあ入って入って―。
リビングで待っててね。すぐお茶入れて持っていくから。
………
………
………
お待たせー。
よい、しょっと…
紅茶はミルクと砂糖多めだよね?
ふふ。君の好みなら、お姉ちゃんは何でも知ってるからね。
…はい、どうぞ。
………うん、君の大好きなチョコチップ入りのクッキーだよ。
おいしそうなの見つけて、つい買ってきちゃったんだ。
………
おいしい?
…よかったー。じゃあお姉ちゃんも…
うん、おいしー!これはもう頬っぺたが落ちちゃうね。
…もぐもぐもぐもぐ。
………そういえば、君がこの家に来るのも久しぶりだね。
…前に来たのは2か月くらい前だっけ?
結構久しぶり。
ちょっと前までは毎日のように遊びに来てたのにね。
………え、そんな毎日じゃない?
えー、そうだっけー。
『お姉ちゃんお姉ちゃん』って。よくお姉ちゃんの袖引っ張ってたじゃない。
…ふふ、もう、強がっちゃってー。
…でも、本当に久しぶりだよね。
別に、お姉ちゃんとしては、昔みたいに毎日毎日遊びに来てくれていいんだよ?
その方がお姉ちゃんも嬉しいし。
………『子供じゃない』って、もう。お姉ちゃんから見れば立派な子供だよ。
…もぐもぐもぐもぐ。
………え、話があるの?
うーん、何の話だろう?
もしかして、お姉ちゃんに告白、とか?
………えっ、そうなんだ。
ちょ、ちょっと待って、ちゃんと座りなおすから。
………コホン。
いいよ、聞かせて。
…どきどきどきどき。
………
………
………
………え、もう少し経ったら、家を出るの?
…うん、うんうん。
うん………
寮のある学校に、入るの………
…え、あの、でも。
寮に入るとか、そういうのはまだ早いんじゃないかな?
その学校なら、自宅からでも通えるでしょ?
…そ、それにさ。
寮の生活って大変だよ?
自分でいろんな事やんなくちゃいけないし。学校に行きながらそういうことするのって、難しいと思うんだ。
ね、ね、だからね。
寮に入るのは止めた方が………
………もう決めたって…
ど、どうして………
お姉ちゃんや家族に、迷惑かけたくないって…
そんなことないよ。お姉ちゃんいつだって、君のこと迷惑だなんて思ったこと…
………
………や、やだよ。行かないで行かないで。
…ぎゅー。
………やだ。
君がやめるって言わない限り、離してあげない。
………
…ぎゅー。
…お姉ちゃんから離れないで、ね。
一生の一生の、お姉ちゃんからのお願い。
お姉ちゃんと一緒にいる限り、お姉ちゃんにいっぱいいっぱい甘えていいから。
何でも好きなもの買ってあげるし、何でも好きなもの作ってあげる。
ゲームとか遊園地とかなんでも君に付き合ってあげるし、君の望みは何でも叶えてあげる。
…ぎゅー。
…君はがんばらなくていいの。
自立しなくていいの。
お姉ちゃんの隣にいればいいの。
お姉ちゃんに抱っこされてればいいの。
君がそばにいてくれるなら、がんばるのは全部、お姉ちゃんがやってあげる。
…ぎゅー。
…君は何もしなくていいんだよ。
甘えて、甘えて、甘えて、甘えて。
頼りにして、全部お姉ちゃんに任せて。
…ぎゅー。
…ぎゅー。
…ぎゅー。
………そう、わかってくれたんだね。
えらいえらい。
いいこいいこ。
…なでなでなでなで。
お姉ちゃんと、ずーっと一緒にいようね」
「………ねえ、お姉ちゃんそろそろ出かけるけど、何か欲しいものある?
…うん、わかった。帰りに買ってくるね。
ん、またスマホのゲーム?
どのくらいレベル上がったの?
…ふーん、そうなんだー、すごいねー。
………え、また課金したいの?
もう、しょうがないなー。
1万円ね、わかった。
それだけで平気?それで欲しいアイテム出そう?
…うん。わかった。
あ、夕飯?そうだなー、君は何が食べたい?
………焼肉ね。
もう、君はそればっかだなー、焼肉だと、お姉ちゃんの料理のしがいがないよ。
………もう、わかったわかった。お肉たーんと買ってきてあげるから、きちんと待っててね。
…車も欲しい?
車って、君免許持ってないじゃない。
君は乗れないけど…まあいいよ、コレクションしたいんだもんね。買ってあげる。
後でカタログ見せるから、その中から欲しいの選んでね。
…もっと広い家がいい?
ええ。ついこないだここに引っ越してきたばかりじゃない。
また引っ越すのは面倒だけど、君の言うことだからしょうがないかー。
じゃあ、今度は海の見える家にでも引っ越そうか。
もうちょっとで夏だし、海で泳ぐのもいいよねー。
………うん。じゃあそろそろ行ってくるねー。
ちゃーんと、いつも通り、おうちでお留守番して待っててね。
じゃ、行ってきます」




