267 ボクの部屋に入り浸る幼馴染。脱引きこもりに向けて度々登校するボクに対して幼馴染の解答は実に緩くて…
「………
………
………
(カチャッ)
よーっす。
………なにあんた、またそのゲームやってんの?
よくもまあ飽きないわね。毎日毎日やってて。
…よいしょっと。
………んー?
別に用って用はないけど。
いつも通りただここにダラけに来ただけだよ。
………ふふっ。
なーに、あんたが文句言える立場なわけ?
学校にも行ってない不登校の引きこもりっていう立場のあんたがさ。
………あー、はいはい、そうですねそうですねー。あんたは学校に行くメリットがないんだったねー。
………はー、漫画読も読も。
………
…んー?別に普通かな。
面白いと言えば面白いし、つまらないと言えばつまらないよ、学校なんて。
つか大体そんなものでしょ?この世にある物なんて。
………
…べっつにー、あんたが学校行きたくないって言うんなら、それはそれで別にいいんじゃない?
個人の自由でしょ、そんなの?
………
…ふふっ。そうだねー。あんたが学校行く行かないはあんたの自由だし、あたしがここに来る来ないもあたしの自由だよ。
………えー、つれないなー。だったら来るなとか、幼馴染に対してつめたーい。
ま、あんたが来るなっていっても、あたしは勝手に来るけどね」
「………
………
………
(カチャッ)
よすよすー。
………ふう、昨日のゲームの続きしよ。
(ポチポチポチポチ)
………
………
………
…そういえばあんた、今日学校来てたんだってね?
………まあ、人づてに聞いて。
そりゃあ今まで学校来なかった引きこもりがいきなり学校きたら、噂の一つや二つ流れて当然でしょ。
………で?どうだったわけ、久々の学校は?
………
…ふふっ。まあそうだよねー。
今まで来なかった奴がいきなり学校来て、授業の中身なんてわかるわけないよねー。
………
…えー、あたしのせいなの?
いやそりゃあさ、あんたに言われて多少なりとも勉強は教えてあげたけどさ。
昔のあたしの成績知ってるでしょ?
真ん中よりも下くらいのあたしに頼まれても、そうそううまく教えられるわけないっつーの。
勉強頑張りたいんだったら自分で勝手に頑張れば―?
(ポチポチポチポチ)
………よーし、オリハルコンの石ゲットー♪
あとは天使の輝く羽か。
ねえねえあんたさ、その素材持ってない?」
「………
………
………
(カチャッ)
………あ、いた。
クスクスクスクス。
ねえねえあんた。今日のお昼、どこでご飯食べてたの―?
………
うわー、わかりやすく動揺しちゃってー。
ねえ、そんなに恥ずかしかったの?
トイレで一人ご飯食べるのがさ。
いや、今時便所メシとか、本当ないないって。
せめて校舎裏とか体育倉庫とかにしときなって。
ま、そっちもそっちで笑えるけど。
………
…んー、でも、そんなに友達ってできないもん?
………えー、あたし?
あたしはまあ、ちょっと話しかけてー、わいわい楽しく話してー、一回お昼食べたら友達できるけど。
………んー?そんなに難しいことかなー?
ま、陽キャのあたしとボッチのあんたじゃ違うってことで。
………はー、喉乾いた。
なんか適当にジュース飲むからー。
………
………ん?別に、友達なんていてもいなくてもどっちでもいいと思うけど。
いなかったらそりゃあそれで寂しいとかあるかもしれなけどさ、でもいたらいたらで、結構面倒くさいこともたくさんあるんだよ?
女子同士の友達ってさあ、何でもかんでも一緒じゃないとダメなんだよね。
いやさすがに、トイレ行くのまで一緒とかはどうかと思うわさすがに。
断るのも面倒だから一緒にいるけど、だるくなったら友達止めるかな。あたしの場合。
…そういうもんでしょ。
所詮学校の友達なんて、さ。
(ゴクゴクゴクゴク)
………これおいしい。
もう一杯飲もっと」
「………
………
………
(カチャッ)
………はろー。
…しょっと。
(ペラ、ペラ)
………
………
………
…ねえ、それってツッコミ待ち?
………
…いやいや、腕に包帯巻いてるとかツッコミ待ちでしょ、どう考えても。
………
…ふーん、階段から落ちて、ね。
じゃあ誰かに突き落とされたんだ。
…うわ、明らかに目逸らしてるじゃん。
あんたって嘘吐く時に目逸らす癖、相変わらずだね。
………
…ふーん、不良共のイジメにね。
………
…別に、イジメなんてどこにだってあるでしょ。
あんたがイジメられてるからって、あたしが心配しなくちゃいけない理由なんてある?
………ないよね。だってただの幼馴染なんだし。
………まあでも、不良だってそのうち飽きるでしょ、きっと。
………
…んー?まあ明日かもしれないし、一週間後かもしれないし、卒業までかもしれない。
そんなのその不良に聞きなよ。
…それが嫌なら、学校なんて行かなければいいと思うけどね。
所詮学校なんて、コミュ力つけるためだけの場所なんだし、それができないなら行かなくていいでしょって話。
あんたみたいな根暗でボッチな人なんて、絶対向いてないでしょ。
向いてないんだったら行かなくていいじゃん。
行かないのは得意でしょ?十中八九引きこもってるあんたにとってはさ。
………ま、あたしには関係ないけど。
(ペラ、ペラ)
………あ、読み終わっちゃった。
ねえ、これの続きってある?
………えー、ないんだ。つまんなーい。
じゃあ、つまんないから今日は帰ろうかな?
(カチャッ)
………ん?何?
別に心配なんかしなくても、どうせまた明日来るよ。予定がなければね。
なになにー?あたしがいないと寂しいのー?
よちよち、だいじょうぶでちゅよー。また明日来まちゅからねー?
………ごめんごめん。
ま、たぶん明日も来るよ。
だからあんたも、ちゃんとここに居なよ。
ね?
(バタン)
(トン、トン、トン、トン)
………
んー、今回はちょっとやり過ぎちゃったかな?
見るからに落ち込んでるし、あの不良共、腕以外にあいつにどんなことしたんだか。
まっ、でも、腕怪我したんだからそうそう凹んで復活するには時間がかかるはずだよね。
間違ったところの勉強教えるとか、ボッチにするよりは手がかかるけど、その分効果は大きい。
あんまし同じ手ばかり使うと疑われるかもだから、次は別の手にしないといけないけど、それはまあ、また今後考えればいっか。
………
学校に行かず、ずっとずっと学校に行かなくて引きこもっていれば、あいつと会うのはあたしだけ。
あたしだけを見てくれる。
あたしだけしか見られなくなる。
あたし以外の人は見なくなる。
いつ、あたしの告ってくるのかな?
まあ、告って来ないにしても、あいつと一緒にいるのは、あたしだけになる。
ふふっ」




