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260 国家直属の正義の騎士団。カリスマ性溢れる騎士団長に新入りの彼はどこまでも付いていく

「(ブン、ブン、ブン、ブン)

(ブン、ブン、ブン、ブン)

(ブン、ブン、ブン、ブン)

863、864、865、867………

ねえ、そこの新入り。

そこのあなたよあなた。

あなた、それでちゃんと真面目にやってるつもり?

剣が全然まっすぐに振れてないわ。

………

…口答えはよして。

一人でも駄目な人間がいれば、騎士団全体の権威に関わるのだから。

もう少し脇を締めて、それから振った後は腕を伸ばして。

(ブン…)

…違う、そうじゃないわ。

こうやるの。

(ブンッ!)

私のを真似て、もう一回。

(ブン…)

もう、何回言わせれば気が済むのよ。

…ほら、この位置で握って、こう構えるの。

………え?だってこうしてあなたの手を取らないと、ちゃんとした位置を覚えられないじゃない。

…そして、ここで構えた剣を、こう振り下ろす。

(ブンッ!)

(ブンッ!)

(ブンッ!)

…ほら、ちゃんとしっかり振れるでしょ。

それじゃ、今度は自分でやってみて。

(ブン…)

…もう、何回言わせれば気済むんだってば。

だから、手の位置はここで、こうやって構えて………」




「(カン!カン!カン!カン!)

(キン!キン!)

………相変わらず、ゴブリン兵は数だけは多いんだから。

でも…

(シャッ)

(スドン)

一人一人の実力は平凡中の平凡。

こんな奴ら、いくら束ねてかかってきたところで、私達の敵じゃないわ。

でも…

(カン!カン!カン!カン!)

(キン!キン!)

ああ、もう、やっぱり…

仕方ないわね。

(タッタッタッ!)

(シュパッ)

(スドン)

………ほら、さっさと立ちなさい、新入り。

ゴブリンに囲まれて手も足も出ないとか、あなたが握っているのはただの棒きれなのかしら。

…これが戦場よ、新入り。

お互いに命を懸けた戦い。

常に死と隣り合わせの世界。

生半可な気持ちは今すぐ捨て去ることね。

この騎士団にあまったれた心の持ち主なんていらないの。

怖いのならさっさと逃げ出してお家に帰ることね。

………『戦える』?

そう、ならせいぜい頑張ることね。

(カン!)

なら、あなたがまともに剣を振れるようになるまで、私が隣で見ててあげるわ。

(カン!カン!)

(キン!)

(ズドン)

だって私は、この騎士団の団長なのだから」




「………え、何?聞こえなかったの?

ならもう一度言ってあげる。

おめでとう。あなたは第一分隊の隊長に就任しました。

………まったく、ついこの間まで新入りだった人間が、隊長なんてね。

…いい?隊長になったからって図に乗らないことね。

あなたが隊長になったのは、決して実力があるからじゃない。

ましてやカリスマ性や頭脳を買われたわけでもない。

あなたの将来性に期待しての就任だから。

あなたはまだまだ実力不足の勉強不足。

これまで以上に、自己研鑽および鍛錬に励むこと。

以上。

引き続き演習に戻りなさい。

(スタスタスタ)

(バタン)

………

………

………

…何か言いたそうな顔をしているわね、副団長。

言いたいことがあるならはっきり言ったらどう?

………あんな奴に隊長が務まるわけがないって?

まあ、そうかもしれないわね。

相手の隊長格はおろか、雑兵数体にも手こずる程度の実力。

周りとの連係も下の下。

むしろ味方の邪魔にしかならいような体たらくの働きぶり。

現状では、確かにそうでしょうね。

………推薦した理由?

それはもちろん、彼の夢をかなえてあげる為よ。

知ってる?

彼って、親が敵の軍にやられたことからこの騎士団に入ったんだって。

その敵を討つため、そしてこの国の平和のために尽力する。

それってとても素晴らしいことじゃない。

ここが国の騎士団といっても決して全員が全員、正義の心を持っているわけじゃない。

地位や名誉のため、あるいは金のために入っている人なんてそこら中にいる。

そんな中、彼は清い心を持って入団した。

だから私は彼を推薦したの。

不相応の実力の中、隊長になってかなり苦労するでしょう。

そうなれば、彼は私のことを頼りにせざるを得なくなる。私が推薦したという情報も、いずれ彼の耳にも届く。

そこで私がこの身を持って手ほどきをすれば、彼は私に依存する。

そしていずれ、私の可愛い飼い犬に成り下がることでしょう。

………

趣味が悪いって?

あなたに言われたくないわ、副団長。

似たような手段で何人の女性も囲っているあなたにだけはね。

ここが国の騎士団だろうと何だろうと関係ない。

私はただ、私の欲望を満たすためだけにこの地位にいる。

そのためなら、どんな手段だって正義でしかない。

………さて、彼はいつ、私の飼い犬として服従してくれるのかな?」

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