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254 陽気な女囚人は何回更生してもまた罪を犯して何度も何度も舞い戻ってくる

「(ガシャン!)

(ガチャガチャ)

(カチャッ)

………相変わらず粗末な部屋。

狭い部屋によれよれのベッド一つだけとか、退屈死しそう。

(スタスタスタスタ)

あっ!

看守のお兄さん、おひさー。

またわたしの担当になったの?

………やった。嬉しい。

………

…ああ、今回は火事だよ火事。

火つけて捕まっちゃった。

火ってすごいよねー。

最初はこんなにちっちゃい火なのに、時間が経ったらあっという間に建物焼き尽くしちゃんだもん。

お兄さんにも見て欲しかったなー。

………

…えー、そうかなー?

前の怪我させたとか城の財宝盗もうとしたのとかと、あんまり変わらないと思うけど。

…あっ、でもでも。

その分今回はちょっと長くここにいるみたいなんだよねー。

それだけお兄さんといられる時間も一緒だよ?

どうどう?嬉しい?

………

………はーい。

ちゃーんとここで罪を償って、反省してまーす。

………とりあえずまたよろしくね。お兄さん」




「(ガシャン!)

(ガチャガチャ)

(カチャッ)

…ちょっとー、あんまり手荒にしないでよー。

別に逃げようするわけでもないんだし、女の子の身体は優しく扱ってよね。

(スタスタスタスタ)

………お兄さん久しぶりー。

久々、というかついこの間まで一緒だったよね。

お兄さんと会えなくて寂しかったよー。しくしく。

………

…ん?今回は強盗だよ。

お金がなくて、ちょーっと食事代もらおうかと思ったんだけどさ、建物出る前に見つかっちゃって。

ま、そこでいろいろと、ね。

………

…えー、でもお兄さん。

わたしが盗みに入ったとこ、悪徳商人として有名な人のとこだよ?

たんまり悪いことして稼いだお金なんだから、多少くすねてもいいじゃんって思うじゃん。

………思わない?

ちぇー、相変わらずお兄さん真面目だなー。

………まあ、真面目じゃなきゃ、こんなわたしの相手なんか、何回もしないよね。

うんうん、お兄さんが真面目なことはいいことだ。

………あっ、もう食事の時間?

そう言えばお腹減ってたなー。

ね、ね、お兄さん。

せっかくだからあーんして食べさしてほしいな。

ここの外からで良いからさ。

………はいはい、わーかりましたっとさ。

ちゃんとご飯は一人で食べますー。

これ食べて、更生しますよーっだ」




「(ガシャン!)

(ガチャガチャ)

(カチャッ)

………ただいま。

もうなんかこっちの方が家みたいになってきちゃった。

このベッドもくたくただけど、慣れてくれるとこっちの方が気持ちいい気がしてきた。

こんなにくたくたなのに、なんでだろ?

(スタスタスタスタ)

………あっ!

お兄さんお兄さん。今回も来てくれた!

また会えて嬉しいな。

その顔を見ると、今回もやっぱり………

やったやったー。またお兄さんが担当だー。

イエーイ。

………

…あー、今回はね、人を××しちゃった。

人ってすごいよねー。体の中にあんなに大量の血があるのなんて、初めて見たよー。

段々と顔が正気をなくしていって、徐々に天国へと近づいていく。

あれが俗にいう事切れたっていうやつなのかな?

………

…えっ、なになに?

わたしちゃーんと、ここから出た時はお兄さんの言う通り更生してるよ?

だからわたし、同じ罪は繰り返してないもん。

毎回毎回違う罪を重ねた結果、ここに入れられるだけだもん。

………

…んー?

別に盗みをするとか、人を傷つけるとか、火をつけるとか、人のお金を取るとか、人を××すのが好きとか、そうやって罪を犯すのが好きとか趣味っていうわけじゃないよ?

そういうのが好きとかっていうなら、とんだ変態じゃないの、その人。

………

…えー、なんて罪を繰り返すのかって言われたら、それは…

―――お兄さんに会うためだよ?

罪を犯して、こうして牢屋に入れば、お兄さんが担当になって、その分一緒にいられるんだもん。

それ以外の理由なんてないよ。

………

…まあ、それも考えなかったわけじゃないけど。

でもさあ、ここを出た後に普通にお兄さんに会って、普通に告って、普通にお嫁さんになったとして、一緒に居られる時間って短くない?

お兄さんは毎日のように仕事仕事の毎日で、夜はくたくたの体で帰ってきて寝るだけ。

そんなすれ違うだけの関係なんて、寂しいじゃない。

それに比べて、こうして檻の中と外なら、お兄さんと終始一緒に居られる。

わたしが逃げないように見張ってるわけだから当然だよね? 

まあ別に、お兄さんと一緒に居たいわたしとしては逃げるわけないんだけど、捕まった身であるからには、お兄さんはわたしを監視していないといけない。

ずっとわたしと一緒にいなくちゃいけない。

それってとってもとっても素敵なことだと思うの。

陽が昇っても、陽が落ちても、ずーっと一緒。

寝る時もご飯の時も一緒に過ごせるのなんて、なんて幸せな時間なんだろう。

………あ、そうそうお兄さん。

わたしね、今回…

何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も何人も××したから、死ぬまでず―――――――――っと、ここに入ってるのが決まってるんだ。

わたしが死ぬその時まで、ず――――――――――――――――――――っと、一緒だよ。

わたしの最期をちゃんと看取ってね、お兄さん?」

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