253 魔王と勇者との最終決戦!!激しい戦いの末に勇者が勝利した後…
「(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
(ドドドドドドドドドドドドドドドド)
(ズドン)
………ようやくこの日が来たわね、魔王。
この日が来るのを、私はずっとずっと、待ちわびていた。
あなたがこの世界に破滅と混沌をまき散らし始めた、あの日からね。
あの日から、世界の色は変わってしまった。
それまでの平和な日々は終わりを告げて、弱肉強食の世が始まった。
それもこれも、全てあなたという史上最悪の魔王のせい。
…ここまで来るのにはとても苦労したわ。
魔王軍の魔物をなぎ倒し、四天王をすべて退けて、鏡の世界のあなたの影を捉えなければならなかった。
…ああ、この装備も、すべてこの日のために揃えたものよ。
このエクスカリバーは100の試練を乗り越えて手に入れて。
この千年の杖は666日の修行を経て携えて。
この鋼よりも強固な鎧は、1000人の鍛冶職人が作り上げたものを身に付けているの。
全ては今日この日、あなたと相対するためにね。
…ここまで到達するのは、とてもとても長い旅路だった。
でもそれも、今日でおしまいよ。
今日までの修行は、苦労は、苦行は、この瞬間のためにあった。
私はこれまで築き上げてきたものをすべて、今この時に開放する。
…世界の半分?
いらないわよ、そんなもの。
私なそんなもののために、ここまでやってきたんじゃないんだから。
………それじゃあ、そろそろ始めましょうか。
あなたもそろそろ我慢の限界だと思うし。
では、世紀末の決戦を、勇者と魔王の最終決戦を、いざ………
始めっ!」
「………ハァ、ハァ、ハァ。
ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…
…これで戦いは終わりね、魔王。
お互いに死屍累々の有様だけれど、最後にはやっぱり勇者が勝利する。
おとぎ話の定番よね?
………とどめ?
いいえ、とどめなんか差さないわ。
とどめなんか差してどうするというの?
とどめを差しても何にもならないのに。
別に私は魔王を滅ぼすためにここに来たんじゃないんだから。
それこそあなたじゃあるまいし。
………情け?
アッハッハッ!
………いえいえごめんなさい。
あなたがあまりにもおかしなことを言うものだから、ついね。
私がとどめを差さないのは、情けなんかじゃないよ。
そもそもどうして私が勇者になったのか。
長い旅をしてここまで来たのか。
あなたという魔王の前に現れたのか。
それはね…
あなたを手に入れるためなの。
………ああ、今でも思い出せる。
あなたという存在がこの世界に現れた瞬間を。
あなたはこの世界の人間すべての前に現れて、この世界の破滅と混沌を宣言した。
そのあまりにもな大胆不敵さ、強欲さ、凶悪さにね。
私は一瞬で心を奪われちゃったんだ。
あなたの姿を見てから、幼い私はあなたの絵を描き続けた。
友達と勇者のまねごとをする時は、誰もやりたがらない魔王の役を進んでやった。
誰も彼も工作で勇者の剣や賢者の杖を作る中、私だけは魔王の像を作った。
少し年を重ねた後は、図書館に入り浸って魔王の本を片っ端から読み続けた。
色々な人の話を聞いて、魔王の存在を実感した。
あなたが破壊した土地に足を運んで、興奮した。
年々あなたに思いを募らせる中、私の中にある願望が思い浮かんだの。
あなたに会いたい。
そして、あなたを自分のものにしたい。
そう、心に誓った。
それから本当に本当に長い道のりだったけれど、今日でようやく、それが叶った。
………え?勇者の力は必要不可欠よ。
だって私は、あなたの手下になりたいわけでも、パートナーになりたいわけでもない。
ただ、あなたを手に入れたかった。
だからこそ、強大な力が必要だった。
勇者になったのはその手段の1つにすぎないわ。
勇者という存在になれば、あらゆる免罪符を逃れられる。
魔王を倒すためなら、どんな人たちも私に協力してくれる。
そのための勇者なんだから。
…それでね?
あなたを閉じ込めておくための檻はもう作ってあるんだ。
どんな力をもってしても壊せない神の加護の力をも加えた絶対絶壁の牢壁。
その中で、あなたというペットを飼ってあげるんだ。
………ああ、本当に楽しみ。
これから夢にまでも見た、あなたとの生活が始まるんだもの。
これからは仲良く暮らしていきましょうね、魔王。
いいや、私の可愛い愛しい愛らしいダーリン♪」




