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247 世界で一番可愛い奥さんはどれだけ浮気の証拠が出てきても世界で一番彼を信じている

「(ガチャッ)

お帰りなさい、あなた。

今日もお仕事お疲れ様です。

………ん、ああ。さっきあなた、メールくれたじゃない。

それでたまには玄関で迎えてあげようかなと思って。

あなたも出迎えがあった方が嬉しいでしょう?

………

…えー、もうそんな意地悪言っちゃって。

新婚の頃はただいまーって言いながら抱き着いてくれたのに。

………

…ま、それもそっか。

私だって、今あなたに抱き着かれたら少し照れちゃうし。

…ん、鞄持つわよ。

………

………あれ?

あなた、ちょっといい?

(クンクンクンクン)

…これ、香水かしら?

ねえ、どうしてあなたから香水の香りがするのかしら?

あなた、香水なんて付けたことなかったわよね?

それなのになんで………

………

………ああ、会社の人か。

いるわよね、たまに。会社に香水付けてくる人。

…へえ、今日はその人、きつい香水付けてきたんだ。

なるほど、それで少し香水の香りがするのね。

私てっきり、あなたが浮気したんじゃないかと思っちゃったわ。

………

冗談よ。

あなたのことは心の底から信じているわよ。

愛しているわ、あ・な・た」




「(バタン)

………

…あら、おかえりなさい、あなた。

今日もこんな遅くまでお仕事お疲れ様。

………

…ん、私は見ての通り、お風呂から上がったところ。

それであなたは?

お風呂にする?ご飯にする?それとも………

………

………

………

…あ、ごめんなさい。新婚当時ならいざ知らず、さすがにちょっと恥ずかしくなって言葉にできなかったわ。

なんで昔は、あんな恥ずかしげもないことを口にできてたのかしら。

不思議だわ。

………

…ん、お風呂にするのね。了解。

それじゃ上着貸して。

ハンガーにかけておくから。

…ありがとう。

………

…あら、あなた。

そこ、なんか汚れてない?

………そこよ、そこ。

ワイシャツの襟首のあたり。

何か、赤い汚れが………

………

…どうしたのあなた?

えらく慌てふためいちゃって。

もしかして、女の人の口紅とか?

………

…まあまあ落ち着きなさいって、あなた。

ちゃんと話は聞いてあげるから。

………そうだけど、そうじゃない?

どういう意味かしら?

………

…ふーん、帰りの電車で隣に座ってた人のが付いちゃったんだ。

終電の電車で、人がすし詰め状態だったから、と。

…そう。

………

…ああ、大丈夫大丈夫。

別に怒ってなんかないから。

………それはそうよ。

隣にいた人のが偶然付いちゃったなら、仕方ないものよね。

両者遅くまで仕事してて、気が抜けてたんだったのなら、そのくらいのアクシデントは怒っても不思議じゃないわ。

………

…だから大丈夫だって。

だって私、愛しているあなたの事は、世界で一番信頼しているもの」




「(パタパタパタパタ)

(パタパタパタパタパタ)

(パタパタパタパタパタ)

………ふう、これでよし、と。

…あなた、ソファの方は終わった?

………ん、ありがとう。

ごめんねー、せっかくの休日だっていうのに、お掃除手伝ってもらっちゃって。

………まあ、それもそうよね。

一昔前ならいざ知らず、今はもう夫婦で家事やる時代だもんね。

…でもあなたは、今だけじゃなくて、結婚した当初からいろいろやってくれてたわよね。

当時はまだそんな風潮なかったのに、本当色々やってもらっちゃって、むしろ私の方が申し訳なく思ってたくらいだもの。

………そう、ありがとう。

…ひとまず、リビングの掃除は大体終わったわね。

後はゴミをまとめておけば………

(ペラッ)

…あら、何かしら、これ?

………レシート?

えーっと、ホテルの宿泊代?

このホテルって確か、ベッドタウンの方にある………

―――ねえあなた、これはどういうことかしら?

このホテルって、普通のホテルでも、ビジネスホテルでもないわよね。

どうしてそんなホテルのレシートがこんなところにあるのかしらね?

もしかして、あなた、浮気してるの?

ねえ、ねえ。どうなのあなた?

黙ってたら何もわからないわよ?

はっきり答えて、ねえ?

………

………

………

…うふふふっ。

ごめんなさい、あなた。

あなたがあまりにも唖然とした表情するものだから、つい興が乗っちゃって、ふざけすぎちゃったわ。

………

…ん?ええ。もちろん冗談よ。

どう、どう?今の演技、本気に見えた?

………あらそう、もしかして私、女優の才能とかあったりするのかしらね。

ドラマのエキストラとか、今度やってみようかしら。

………

…ん、どうかしたのあなた?

………だから言ったでしょ、冗談だって。

まあこのホテルのレシートは本物みたいだけど、でも別にこれ、浮気じゃないんでしょ?

………

…ほら、やっぱり。どうせそんなことだろうと思ったわ。

他のホテルが満室だなんてこと、よくあることだものね。

………

…もちろん信じてるわよ?

むしろ、どうして私が疑うなんて思ってるのかしらね?

だって、私とあなたは、相思相愛、これまで二人三脚でやってきた夫婦じゃない。

夫婦なんだから、これしきの事で疑いを持つなんてもっての他だわ。

だって私は、世界で一番、あなたの事を愛してるんだから」




「(トントントントン)

(グツグツグツグツ)

(ジャー、ジャー、ジャー)

…よし、これで肉じゃがの方はオッケー。

後はお浸しと、煮豆と、ドリアね。

………

あの人の食の好みって、相変わらずね。

昔はそれこそ何でもかんでもおいしいおいしいって言ってくれてて、逆に好みはわからなかったんだけど、だんだんだんだん、どれが好きで、どれがいまいちかわかるようになっていった。

昔はおいしいって言ってくれてたトマトとか納豆とかいんげんとか、本当は嫌いなのに、それがわからないように一生懸命食べてくれて。

本当に愛おしい人。

………

もう少しであの人、帰ってくるかしらね?

できれば出来立てほやほやの料理を用意してあげたいのだけれど………

(シュッ、シュッ、サッサッ)

(………)

…電車の音。ってことはもう少しか………

スマホの場所はっと………

(シュッ、シュッ、サッサッ)

………ああ、あの駅か。

この時間にこの駅ってことは、どうやら今日は残業せずに済んだようね。

(シュッ、シュッ、サッサッ)

…あ、あの人の顔が映ってる映ってる。

動画でも見ているのかしら?じっとスマホの方見つめちゃって。

そういえば、最近土曜ドラマにはまってるって言ってたかしら。

…なにはともあれ、もう少しで帰ってきそうね。

待ってるわよ、あなた。

この世界の誰よりも愛しているあなたのために、おいしいおいしい料理を作って、まってるから。

早く帰ってきてね?

(チュッ)」

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