241 女神様に転生された勇者の冒険を彼女はいつもいつも温かく見守っている
「………
………
………
…勇者様。ようこそお目覚めになられました。
………はい。私が勇者様を呼び出した女神です。
勇者様には、闇に染まってしまったこの世界を救っていただく、呼び出した次第でございます。
この世界を救えるのは、勇者様だけでございます。
どうか、この世界を救っていただけないでしょうか?
………
…ありがとうございます。
勇敢なる勇者様なら、そうおっしゃってくれると思いました。
世界を救うというのは、途方もなく困難なの道のりでしょう。
ですが、勇者様の知恵と勇気があれば、必ずや達成できると信じております。
私こそ女神は、この世界に干渉はできませんが、時に応じて、勇者様の手助けをさせていただきます。
勇者様。
私が温かく見守っていることを、どうぞお忘れなく」
「………
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………
…また、会うことができましたね、勇者様。
………はい、私が勇者様をここにお呼びしました。
今、勇者様の前には乗り越えられない試練を目の前にしておりますよね?
………ええ、もちろん。
私は常々、勇者様のことを見守っておりますから。
………
…勇者様。この度の試練は、決して勇者様おひとりの力で乗り越えるのは難しいかと思われます。
この世界を救う使命を自分一人で抱え込まないでください。
決して、勇者様は一人ではないのですから。
現在、勇者様が滞在しております街に、秀逸した腕を持った魔法使いが存在しております。
彼女の力を借りれば、その試練もきっと乗り越えられることでしょう。
………仲間を持つことを恐れてはいけません。
仲間と信頼する、絆を深める事こそが、勇者様をさらに強くすることでしょう。
仲間との強い絆は時に、膨大な力を生み出すこともあります。
勇者様、新たな仲間とともに、冒険の旅をお続けください。
私はここから、勇者様を見守っておりますので」
「………
………
………
…お亡くなりになってしまったのですね、勇者様。
………はい。勇者様は一度、お亡くなりになられました。
魔王が配する魔獣の手によって、あえなく。
…しかし、ご心配なく。
勇者様は特別な存在であるがゆえ、命を落としても、私が再び生き返して差し上げます。
ですので全身全霊、命を賭して、命知らずに、正義の剣をお振るいください。
いつ何時、どこで命を落としたとしても、すぐさま私が命の泉にて生き返らせます。
勇者様は私がここから見守っておりますので、ご安心ください」
「………
………
………
…勇者様。
ようやく、この時を迎えました。
数々の冒険を旅し、あらゆる試練を突破し、どんな困難も乗り越えてこられました。
多くの仲間を従え、世界に1つしかない秘剣や秘宝を集め、あらゆる準備を整えました。
これまで培ってた数々の経験が、勇者様の力になりえることでしょう。
ここまで勇者様を見守ってきた私が言うのですから、間違いありません。
これでもう、残すは諸悪の根源たる魔王を討ち倒すのみ。
勇者様の旅は、もう残すところわずかになりました。
私はそれらをすべて、見届けてまいりました。
旅を始めたばかりの頃は、剣もろくに震えず、苦労なさっていましたよね。
村の外に出れば猛獣の群れに襲われ、命からがら逃げ帰ったこともありました。
しかし勇者様は、心を折ることなく、修練に身を費やし、徐々に力を蓄えていきました。
ゆく先々で仲間を増やしていき、彼女らとは強い絆にて結ばれている。
勇者様は彼女らと全員が全員、愛を育んでおりましたね。
時には共に修練する中で。
時には酒場で夕餉を囲むことで。
時には決死の戦いの最中に救い出すことで。
時には宿屋の一室の中で共に夜を過ごすことで。
勇者様と彼女達の絆は、真実の愛でしょう。
………
………はい?
ええ、私は勇者様の全てを見守っておりました。
片時も目を話すことなく、勇者様を見届けておりました。
それ故に勇者様がどのような旅を経て。
どのような経験を積んで。
どのような絆を結んで。
どのような恋をして。
ここにいるのか、すべて把握しています。
勇者様のことで私は存じ上げないことなど、砂粒ほども存在しえないでしょう。
だからこそ自信を持って言うことができるのです。
勇者様が必ずや、魔王を討ち倒してくれることを。
勇者様のことを知らなければ、このようなことは断言できません。
信じております、勇者様。
勇者様の知恵と勇気で。
勇者様と仲間の絆で。
勇者様と恋と愛で結ばれた仲間達と共に。
勇者様と心と体でつながった愛の仲間達と一緒に。
この世界に平和をもたらしてくれるでしょう。
私はそんな勇者様を、最後まで見守っております」




