024 君の推しが変わるたびにキャラチェンジする幼馴染。彼女の本当の姿とは…
「よっ、おはよう。
今日も元気そうだな。
…ああ、今日の私のキャラ?
今お前が読んでる小説の先輩キャラだ。
どうだ?
髪型や口調はそっくりだろう。
お前が読んでいるやつを私も繰り返し読んだからな、完全にコピーした姿のはずだ。
………え?ピアス?右耳の?
な、なんだそれは。わ、私は知らんぞ。小説にはそんなこと書いてなかったはずだ。
………くっ。ファンブックだと。よくもまあそんなところまで把握しやがって。
で、どんなピアスを付けていたんだ、このキャラは。
………ふむふむ。
そうかわかった。今日帰ったら早急に同じのを探そう。ピアス穴も開けないといけないな…。
明日こそ見てろ。
絶対そのキャラになりきってやる。
………うむ。委員長もおはよう。
…ああ、そうだ。
今日のこれも、こいつの好きなキャラだよキャラ。
せっかくここまでなりきってるっていうのに、こいつときたらケチ付けてきやがるんだから、やんなるぜ。
…で、どうだ今日の私は?お前の好みのタイプになってるか?
………くそっ。右耳のピアスがそんなに大事だというのか。
このクソダメオタがっ。絶対に見返してやる」
「(ぺらっ)
………
………ん。ああ、いたんだ。気が付かなかった。
(ぺらっ)
………
………ん?
…うん。そう。
今日は、君の見てるロボットアニメのキャラ。
クールで無表情で、いつも本読んでるキャラ。
(ぺらっ)
………
………髪?
…うん。切った。
………なんでって、そのキャラが短い髪だから。
それ以外の理由はない。
(ぺらっ)
………
………長い髪にこだわり?
…ううん。別にない。今まで長かったのは、君の好きなキャラがそういうキャラだったから、っていうだけ。
(ぺらっ)
………
………ん。おはよう。委員長。
…うん、いい天気だね。
(ぺらっ)
………
(ぺらっ)
………
(ぺらっ)
………
………で、どう?これ。
君の好きなキャラに似てる?
………そ。わかった。
(ぺらっ)
………
(ぺらっ)
………
(ぺらっ)
………
…なに、委員長?
…うん。これは読んでるフリだから、そっちの視線はすぐにわかる。
………ううん。これの内容はさっぱり。
難しい漢字ばっかり。
(ぺらっ)
………
………うん。またね」
「よーっす。おっはよー。
…えー、近いってー?
もしかして近すぎて照れてんのー?
かわいいな、もう。
えー、やめてあげなーい。
うりうり。
うりうり。
うりうり。
…どーだー?こういうのがいいんだろー?
………うん。そだよー。今日のは君が読んでる漫画の推しキャラ。
…そ、ヒロインのギャルの子。主人公とめっちゃ距離が近い。精神的にも、物理的にも、ね。
あの子って本当にかわいいよねー。
…って、あたしもなんだけど。
………ん?ああ、まぶたと鼻?
そーそー、似せるのにちょっとプチ整形してさー。
どう?あのキャラに似てるっしょ、似てるっしょ?
ウン百万も費用かかっちゃったからさー。似てないと本当に困るんだけどねー。
………
あ、ゴメンゴメン。百万なんて嘘嘘。うっそー。
嘘だよ委員長。疑り深いなー。
そんなわけないじゃん。冗談だってば。
今時、安い費用の整形なんていくらでもあるって。
さすがに百万なんて高いのはしてないっつーの。
………ん?今日のキャラは似てる?
マジ?ありがとー!私も好きー!
………って、ハグ避けんなよー。
ま、今機嫌いいから許してあげる―。
………トイレ?
乙女にそんなこと言うなよー。
そんなの黙って行けって、しっし。
………
………
………
…んー?どったの委員長?
何か言いたげな顔してるけど。
なにー?真剣な顔してるけど、お説教ー?
いやいや、そういうのはいいっていって。
………え、マジの説教パターン?
いや、マジでそういうの良いんだけど。
………
『恋愛は、本当の自分じゃないと意味がない』?
………
………
………
………―――なら、本当の私って何?
委員長にはわかるの?本当の私が?
―――人なんて、誰が相手かで態度なんていくらでも変わる生き物。
家族、友達、先生、先輩、後輩―――
誰が相手でも変わるし、同じ相手でも、その時の状況によって変化する。
その中でどれが本当の自分かなんて、自分自身でさえわからない。
―――私は、彼に好かれるための努力をしているだけ。
美人が好きだったら、美人の顔になるように整形する。
お金持ちが好きだというなら、お金持ちになれるようにありとあらゆる手段を駆使してお金を手に入れる。
太ってる体形が好みなら、限界まで食べて、さらにその二倍は食べて、腹がはちきれるまで食べて食べて食べてブクブクになるまで太る。
本当の私というなら、そんな風にひたむきに努力するのが本当の私。
全部は彼に好かれるため。
彼に好かれる以外はどうでもいい。
だからこれからも、彼が好きだというキャラに代わり続ける。
そして仮に、彼に本当に好きになってもらっても、彼の好きなキャラになり続ける。なり替わり続ける。
なり替わって、彼に好きでいてもらい続ける。
だってそれが、本当の私だから。
―――
―――
―――
―――………あ。戻ってきた―戻ってきた―。
…うん?委員長と何話してたかって?
別にー。何でもないよー?
うーん………
まあ、しいていうなら………
君のことが好きだって話だし」