221 隣の席のギャルがやってる裏アカを突き止めたらなぜかデートすることになった
「(スタスタスタスタ)
(スタスタスタスタ)
(スタスタスタスタ)
………なーに、オタクくん?
こんな人気のない廊下まで連れだして。
もしかして愛の告白?
うわー、それやっばーww
オタクくん、私のこと好きだったんだ。
全然知らなかったんですけどww
同じクラスで隣の席とはいえ、あたしら全然喋ったこともないのに、それで愛の告白とか、超やばいんですけどww
………ん?違うの?
なーんだ。
それじゃあ何の用なワケ?
早くしないと休み時間終わっちゃうんじゃない?
………これ見ろって?
…ふむふむ、誰かのSNSだねー。
うわー、これなんかすっごいきわどい写真。
こっちのとか、もうすでに見えそうなってるんですけど。
オタクくん、こういうの興味あるんだー、意外ww
………で、この誰かの裏アカっぽいSNSがどうしたの?
こんなのあたしと見たくて連れだしてきたわけ?
もしそうなら趣味激やばじゃんww
…あー、うん。このSNSのことは知ってるよん。
学校中で噂になってるもんね。
確か、ちょっと前の写真にここの制服が映ってたんでしょ?
女子の間でも話題になってたし。
男子の間でも………って、オタクくん友達いないから聞いてもわからないよねww
まあ、友達いないオタクくんくらいにも伝わる噂なんだし、これは誰なんだって言ってる人もいるよね。
………ん、別の写真見てって?
どの写真?
…ふーん。この写真がどうかしたの?
普通のこの人の部屋が映ってるだけだと思うけど。
………ああ、このマンガ?
知ってる知ってる。
週刊誌に載ってて最近流行ってきてるやつだよね。
…うん、まーそうだね。
あたしもこのマンガ好きで、単行本も持ってるけど。
で、それが何?
………また別の写真?
…ああ、この写真、ちょっとだけどここの学生鞄映ってんじゃん。
確かにこの鞄映ってたら、ここの生徒の誰かってなるよねー。
………え、カバンじゃなくて、それに付いてるキーホルダー?
…ああ、これね。なーんかかわいいキャラのキーホルダーが付いてるよね。
うん、あたしもこのキャラ、結構かわいいと思うよん。
オタクくんもかわいいと思う?
………
………え?
このキーホルダーが、前あたしの鞄に付いてるの見たって………?
………
………
………
…あはっ!
バレちゃった?
いやー、まさかオタクくんにバレるとは思わなかったー。
そのキーホルダー、気付いた後にソッコー外したのに、覚えてる人がいるなんて思わなかった。
えー、てか、あたしがあのマンガ好きなの知ってたん、オタクくん?
………あー、そういえば、前に学校に持ってきて読んでたっけ。
それにしても何のマンガかまで覚えてるとか、オタクくんあたしのストーカーなわけ?
………ああ、ウソウソ。冗談だって。
オタクだから、キャラクターとかマンガとか気になっちゃうんだもんね。
そういうのオタクのさがとか言うんでしょww
………ん、他にもいろいろ映ってた?
………
………あ、この髪留め。そういえば外してなかった。
………科学のノート。確かにこれあの先生の授業のやつだ。
………へー、この紙袋のお店って、あそこしかお店ないんだ。知らなかったー。
………
…でもオタクくん、それでも気付くなんてなかなかのもんだね。
あれ、オタクくんって名探偵とか目指してるん?
まっ、そんなわけないよねーww
…で、真犯人はお前だーっていうことで、この後オタクくんはどうしたいの?
…あ、待って待って、あたしが当ててみる。
………うーんと、そうだなー。この裏アカのこと知ってオタクくんは………
あ、わかった!
『これをバラされたくなかったら…』って言って、あたしのこと脅迫するつもりなんだー。
うわー、オタクってほんとキモイわー。
どうせオタクくんも、女の子が無理やり命令されるやつとか読んでるんでしょ?
きっもーい。
まあまあでもでも、あたしとしてもこれバラされるのは色々面倒だし?
じゃあ今度の日曜、10時に駅前集合ね?
………え、何って。デートに決まってんじゃんデート。
わかる?デートだよデート。
男女でお出かけしてあれこれするやつだよ。
どうせオタクくんとはこれまで一回も縁のなかったやつだろうけどww
まあオタクくんにこれバラされるのも嫌だし?
仕方なくデートに行ってあげる。
………ん、いいよいいよ。『バラすつもりはない』とか聖人ぶらなくっても。
善人面するのとかが一番性悪な奴だから。
オタクくんだって、こういうの1ミリも想定してないわけじゃないんでしょ?どうせ。
だからあたしはバラされないように仕方なーく、嫌々デートに行ってあげるって言ってんの。
それじゃ今度の日曜、よろ~」
「………あー、楽しかったー!
行きたいとこは大体全部行けたし、買いたいものも全部買えたし、超楽しかったー。
………え、いいよ別に、このくらいは持つって。
ていうか、そもそもオタクくんもう半分以上持ってるんだし、これでさらに持たせたらあたしの家来みたいなもんじゃん。
あたしは今日嫌々オタクくんとデートしに来てるっていうのに、これじゃ立場逆じゃん、完全に。
…それよりオタクくん。
今日の初っ端、女子とデートに行くのに行くとこ決めてないとか超あり得ないんですけど。
おかげでぜーんぶあたしが行きたい所になっちゃじゃん。
………あれ?それはいいのか別に。
いやいやそうじゃなくて。
女子とデートに行くのにマナーってものがなってないよ、まったく。
こんなんじゃ他の女子に嫌われちゃうよ?
…あー、でも、女子はおろか男子の友達もいないオタクくんには関係ないか、メンゴメンゴww。
でも、次からはそういうとこちゃんとしなきゃだめだよオタクくん。
2回も3回も失敗するような男なんて、カッコ悪いにもほどがあるんだからさ。
………ん?そりゃあ2回も3回もあるでしょ?
だってあたしはオタクくんに脅迫されてるんだもん。
オタクくんに命令されたら、たとえ火の中水の中だって行かなくちゃいけないんだから。
…あ、でも火の中は勘弁ね。
火の中なんか飛び込んだら日焼けどころじゃすまないしさ。
………あー、まだあの裏アカのSNSは消してないよ。
いやほら、あの裏アカ、あそこまで人気出るの結構時間かかったんだよ?
表アカじゃ全然なのに、裏アカってだけであんなに人気あるんだから、消すのもったいないじゃん。
さ・い・わ・い、オタクくんは誰もに言わないでいてくれてるみたいだし?
まだまだ人気集めていつか頂点目指してやるんだ。
………あっ、もしかしてオタクくん昨日上げたもう画像見た?
あれ、今までよりもさらに攻めてみたんだよねー。
ねえねえ?あの写真よりももっとすごいの、見たい?
あたし、オタクくんにだったら………
………ぜーったい、嫌だから。
アハハッ!
オタクくん顔真っ赤。
もしかして想像したの―?オタクくのえっちーww。
ま、リアルじゃ見せてあげないけど、あっちの画像ならいくらでも見てもいいからね。
………あ、あたし帰りこっちだから、
うん、うん。
それじゃオタクくん、待ったねー!
………
………
………
………あー楽しかった楽しかった。
オタクくんとのデート。
気の遣い方とか超へたくそでエスコートも全然だけど、逆に初々しい感じがたまらないっていうか。
………それにしても、あの裏アカオタクくんにちゃんと気付いてもらってよかったなー。
キーホルダーとかマンガとか、これよよがしにオタクくんに見せてたけど、気付くかどうかは五分五分だったし。
まあこっちで裏アカの噂流した時点で、最低限裏アカをオタクくんに見てもらえれば、それで半分は成功したものなんだけどね。
………オタクくん、昨日の画像もちゃーんと見ててくれたんだな。
他の皆はあれがあたしだっていうのは知らないけど、オタクくんだけはあれがあたしだって知りながら見てくれている。
オタクくんだけがあたしの正体を知っていて、あたしの秘密を握っている。
男はみんなサルだっていう言葉もあるし、オタクくん、絶対あたしに興味持ってくれるよね?
とりまオタクくんがあたしの秘密を握って脅迫してるって構図だし、オタクくんと仲良くなるのにはやりたい放題できる。
今はあたしからのアプローチだけだけど、オタクくんの方から求めてきたら…
アハッ!
オ・タ・ク・くん。
君のことは、あたしがぜーったい、落として見せるからね」
 




