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022 「教えて?」と聞いてくる彼女と話していたら周囲の人々がだんだんと…

「うんうん。それで?もっと教えて教えて。

君は、その子とはいったいどこで会ったの?

…ああ、この間の球技大会で。

男子はバレーボール、女子はバスケットボールだから、同じ体育館でやってたんだね。

…ふむふむ。ふーん。

君が試合に出てた時、女子の方のボールが飛んできちゃったんだ。

そのボールが君に当たって…えー!そのまま倒れちゃったの?

大丈夫だった?怪我とかしてない?

…うん、もう大丈夫そうだね。

それで、ボールをぶつけたお詫びってことで、その子に保健室に連れて行ってもらった、と。

ふーん…

気を失った君をおんぶしてくれたんだ。

君は結構ちっちゃいとはいえ、力持ちなんだね、その子。

…ごめんごめん。君は全然ちっちゃくないよー。

………

あー、その子部活でもバスケやってて、しかもエースで部長さんなんだ。

―――っていうことは、あの子か。

あっ、ううん、なんでもないよ。

それでそれで、保健室に行ったらどうなったの?

………目が覚めるまで付き添ってもらったんだー。

でもそれ、彼女が単にさぼりたかったとかだけないんじゃないの?

………あはは。やっぱり。

それで話しているうちに連絡先も交換して、と。

…君も案外やるじゃない。このこのー。

ごまかしたって私にはお見通しだぞー。

私には全部わかってるんだからね」




「うんうん。それで?もっと教えて教えて。

…休みの日に、君は図書館に行ったんだね。

君っていつも本読んでるもんね。

どんな本読んでるの?

ミステリーとか、恋愛モノとか、ちょっとエッチなやつとか?

………

ふーん。エッチなのは読んでないんだー、へー。

はいはい、わかったわかった。

そういうのを君は読んでないんだね。ちゃんとわかったって。

………で、いつもの通り本を借りようと図書館に行って、本を選んでいた、と。

『どれ読もうかな?』『何読もうかな?』って本棚の間を歩いていた君。

で、一冊の本を取ろうとしたところで、その司書さんと出会ったんだね。

…その時、その本が床に落ちちゃったんだ?

二人してペコペコ謝り合戦…

うふふ、目に浮かぶようだよ。

…うんうん。それでその後、その人の仕事がちょうど上がりの時間だったから、お詫びもかねて一緒にカフェに行ったんだ。

そこで君は何頼んだの?

あ、ちょっと待って、私が当てて見せるから。

うーんとねー………(ポン)

アイスコーヒーでしょ?

…うふふ、やっぱり。

年上のお姉さんの前でかっこつけようと思ったんでしょ。

本当は甘ーい甘ーいココアが好きなのにね、君は。

…で、その人との会話はどんな感じだったの?

………

あー、その人のスイッチが入っちゃって、思いっきり趣味の話全開だったんだ。

それは大変だったねー。

―――あの図書館の司書で、そういう趣味を持っているとしたら…

あ、ううん、なんでもないよ。

…あ、そういえば聞いた?

君がこないだ言ってたバスケ部の子。

うん、保健室に付き添ってもらったあの子のこと。

なんか、怪我しちゃったんだってねー。

交通事故に巻き込まれちゃって、そのまま腕を…

………

うん。聞いた話だけど、もうバスケは無理かもしれないらしいよ。

今頃ショックで病院に引きこもってるんじゃないかな。

………え、お見舞い?

いやいや、やめといた方がいいって。

本人が一番ショックなんだから、今はそっとしておいた方がいいよ。

…うんうん。その通りその通り。

私の言うとおりにしていれば、間違いないって」




「うんうん。それで?もっと教えて教えて。

…最近、君のクラスに教育実習生が来たんだ?

かわいい系のお姉さんで、ちょっぴりドジで、スタイルは抜群で、と。

―――じゃ、やっぱりあの人だね。

あっ、ううん、こっちの話。

………でも、ただの教育実習生だよね?

あんまり生徒と仲良くなることはなさそうだけど…

どうやってその人と仲良くなったの?

…ああ、なるほどなるほど。

廊下で出会った時、その人がドジでプリントとか散らかしちゃったんだね。

で、その場に立ち会った君が、それを拾うのを手伝った、と。

………いつも君は優しいよね。

どんな時でも、誰が相手でも、どんな状況でも、君は困っている人がいたら助ける。

…人として当たり前のことだって?

ううん。そんなことないって。

確かにそれは人として正しい行動だけど、それがちゃんとできるかどうかは別だよ。

そんな君に助けられたからこそ、私は…

いやううん、何でもないよ。

………それでそれで?プリント拾った後はどうなったの?

…うんうん。半分持つのを手伝って、職員室まで行って、それでその人に懐かれちゃったんだね。

………へぇ、連絡先も交換して、後日家にまで招かれちゃったんだー。

手作り料理をふるまってもらって、と。

おいしかったの?

…ふんふん。味は濃かったけど、まあまあの味だったんだ。

うーん。でも、料理がちゃんとできない人ってどうなのかなー?

三食のご飯は基本だし、それがしっかりしてないっていうのは、ね?

…そっかそっか。そういうのはこれから勉強すればいいものだよね。

うん、君の言うとおりだと思うよ。

…あー、そういえば、図書館の司書さんとはどうなったの?

その後に何か進展あった?

…えっ?その司書さん図書館やめちゃったんだ。

君に何の挨拶もなく?

…ふーん。それは残念だったね。

いきなり辞めちゃうとか、何か問題でも起こしちゃったんじゃないかな。きっと。

(~~~♪~~~♪)

あれ、君の電話鳴ってるよ。

…うん、いいよ、出ても。

………

………

………

………(ピッ)

…どうかしたの?

ずいぶん蒼白な顔になってるけど、何かあった?

…ふむふむ。へー。

教育実習生の先生が、生徒と売春してたんだ。

それは今頃てんやわんやだろうね。学校は。

………そんなことするような人に見えなかった?

いやいや、人は案外見かけによらないよ。

表では害になさそうに見える人でも、裏で何やってるかなんてわからないもん。

………ん、私?

さてさて、どうだろうね?

もしかしたら、司書さんのこととか教育実習生さんのこととか、あとバスケ部のあの子のこととか、ぜーんぶ私が仕組んだことだったりして、ね。

………

あー、ウソウソ、もちろん嘘だよ噓噓噓。

私はただ、君の話を聞いているだけだよ。

『私は』、全然これっぽっち、かけらだってなーんにもしてないから。本当に、ね。

………

これからも君のお話、色々聞かせてね。

君の話を聞くことが、私の生き甲斐だから。

これからもずっと、私だけが君の話を聞き続けてあげるからね。

それはもう、この先何十年と、ね」


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