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217 吸血鬼になった彼をお世話する彼女は献身的にその身を捧げている

「(バタン)

………あ、君か。

一体誰が来たのかと思っちゃった。

どうしたの?お日様も沈んだこんな夜に。

………あ、わかった。

ご飯欲しくなっちゃったんでしょ?

………

…あはは、やっぱり。

………じゃあ、その、ご飯にする?

………

…うん、いいよ。

じゃあ、はい。

(カプリ)

………

………

………

…ん、お腹いっぱいになった?

………そう。

私なんかの血でよければ、いくらでもあげるから。

………

…うん。うん。

君を人間に戻す方法は色々探してみてはいるんだけどね。

けど、これがなかなか難しくって………

元々、君がどうやってそんな体になっちゃったのかすらも、よくわかってないし。

………ごめんね?

あの時私が、あの変な宝箱を開けなかったら………

………いや、私のせいだよ。

君が吸血鬼になっちゃったのは、全部私の責任。

だから、血が欲しくなったらいつでも言って?

お腹いっぱい、飲ませてあげるから」




「(スタスタスタスタ)

………ふう。いろいろ買いすぎちゃったな。

後は、お肉と野菜を少々…

………あれ?あそこにいるのは………

おーい………って、え?

(バタッ)

君、大丈夫?急に倒れちゃって。

顔色も悪いし、と、とにかく、一旦どこかで休も?

私の家なら近いから、そこまで歩ける?

(フラフラ)

私が肩貸してあげるから、そこまで頑張ろ?

―――

―――

―――

(バタン)

ほら、そこのベッドで休んで。

それにしても、どうして………

…あ、そっか。

君の身体、太陽の光に弱いんだよ。

吸血鬼は元々夜の生き物。

なのにこんな晴れの日に外に出たら、そうなっちゃうんだと思うな。

(シャッ)

…これならひとまず光は入ってこないだろうし、ちょっと休めばよくなると思うな。

………

…ううん、全然。

むしろどうして今まで気づかなかったのか、自分の無知さ加減が悔しいよ。

もし前もって君に伝えていたら、こんなことにはならなかったのに………

………

…うん、ありがとう。そう言ってもらえて。

とにかく、今日はこのまま夜になるまでここで休んでて。

その間、君のことつきっきりで看病してあげるからね」




「(コンコン)

(バタン)

…こんばんは。

今日も君のために色々持ってきて………え。

ねえ、どうしたの君?

全身傷だらけで…

血で真っ赤になってるじゃない。

と、とにかく、手当てするから、そこに横になって。

(シュッシュ)

(ふきふき)

(まきまき)

………ねえ、どうしてこんなことになったの?

この腕の傷とか、明らかに刃物でついた傷だよね。

………うんうん。

………うん。

…うん………

…そっか、街中で人の血を吸いそうになって、吸血鬼だって思われて町の人に………

………君をこんな目に遭わせたのは、確かにひどいかもだけど、でも、街の人がそうしたのもしょうがないのかもね…

吸血鬼は昔から、忌むべき存在として恐れられている。

昔の言い伝えだけど、吸血鬼を断絶するのに、昔の人はすごく苦労したんだって。

その吸血鬼が再来したとなれば、周りから白い目で見られるだけじゃなく、そのうち君を………

………

…これからは、君はあまり外を出歩かない方がいいと思うな。

いくら君が動ける夜間は人が少ないって言っても、全くいないってわけじゃないから。

安心して。

君の欲しいものは私が全部持ってきてあげる。

会話をしたくなったら、何時間でも付き合ってあげる。

血が欲しくなったら、いつでも私の血をあげる。

だから、ね。

これ以上、君が傷つくのは見たくないよ………

………

………うん、うん。

ありがとう、わかってくれて。

とりあえず、今日は疲れちゃったよね。

ここままゆっくり、休んだ方がいいよ。

君が眠るまで、君の手を握っててあげるから。

………

………

………

…寝ちゃった、ね。

吸血鬼の身体って、結構不便なんだね。

血は定期的に飲まなきゃいけないし、不死身だって言っても傷が治るのは遅い。

他の人を吸血鬼にすることはできないみたいだし、言い伝えほど危険な存在じゃないみたい。

………でも、そのおかげで、君は私に頼らざるを得なくなる。

私なしでは生きていけなくなる。

君が吸血鬼になっちゃったのはたまたまだけど、この状況をうまく使えば君は私のもの。

…ごめんね?

君を元に戻す方法なんて、最初から探してないんだ。

国の大きな図書館とか行けば何か掴めるのかもしれないけど、でもそうしたら、君が人間に戻ってしまう。

人間に戻っちゃったら、私を頼る必要は無くなる。

だから君はこのままずっと、吸血鬼の身体でいてね。

その間は思う存分、君の世話をしてあげるから」

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