215 超ネガティブ系陰キャクラスメイトは自分に自信がないので好きになってくれる人なんているわけがないと信じている
「(スタスタスタスタ)
………あ、あの。えっと。
急にこんなところに呼び出して、話って何でしょうか?
………あ、わかった。カツアゲ、なんでしょ。
私みたいな子を人気のないところに呼びつけるなんて、そのくらいしかないもんね。
そ、それか、あれだ。
い、今からあなたに、ここで襲われちゃうんだ。
き、きっと、他にも何人か隠れてて、
集団で、わ、私のことを………
は、はは。ははは。
私の存在なんて、所詮そのくらいの価値しか………
………
…違う?
へ、へー、そ、そうなんだ。
でもきっと、ろくでもない用事なのは確かで、たぶんきっと、私にひどいことを………
………
………え?
今、なんて言ったの?
………
は、はは。
はははははは。
やっぱりそうなんじゃない。
そうだそうだ、やっぱり、私の予想は間違ってなかった。
………
…ええ、ええ、ええ、ええ。
聞いてたよ、ちゃんと聞いてたよ。
私への告白っていうのはちゃんと聞いてたよ。
で、でもでもでもでも、これってあれでしょ?
罰ゲームかなんかなんでしょ?
き、きっとあなたの友達がそこらへんに隠れてて、私が一喜一憂する姿を見てあざ笑ってるんでしょ。
ほら、そこの茂みとか。
あるいは、近くの窓とか。
………
…あれ、誰もいない………?
ふふふふふふっ。
そっか。それならあれだ。きっとどこかにカメラでも隠してるんでしょ?
そ、それで私の醜態を撮って、ネットに上げる気なんだ。
はは、ははは。
あなただけじゃなく、クラスのみんなだけじゃなくて、全世界の人の笑いものにされる。
はははははははははっ。
………
…ち、違わないもん。
絶対そうだもん。
絶対絶対、あなたの告白なんて信じないんだから!」
「(スタスタスタスタ)
(スタスタスタスタ)
(スタスタスタスタ)
………うう。太陽の光が辛い…
………
しょ、しょうがないじゃない。
休日なんて部屋に引きこもってるのが普通なんだから。
だ、誰かと一緒に出掛けるなんて、生まれて初めてだし………
…そ、それに、こんな格好、通行人みんなに笑われる。
………
わ、笑われるよ。
だ、だって、こんな昼間から外に出るのにジャージとか、運動部でもあり得ないじゃない。
あー、あー、あー、あー。
やっぱりこなきゃよかった。
あなたがどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしてもって言葉で脅迫するから、出てきたけど、やっぱり帰りたい………
だ、だ、だ、だ、だって、男子と一緒に出掛けるとか、そ、そ、そ、そ、その…
デート、みたいじゃない………
………
ち、違う。絶対デートなんかじゃない。
いくら君がデートだって言っても、これはデートなんかじゃないから。
…あっ、そうだわかった。
デートだっていうのは建前で、私に高価な物買わせるのが狙いなんでしょ?
すっごく高い時計とか、宝石とか、ネックレスとか、金とか、私にそういうの買わせる気なんだ。
あー、あー、あー、あー。
やっぱりこなきゃよかった。
私の手持ちが少ないことを知ってて借金してまで私に高価な物買わせる気なんだ。
借金させるだけ借金させて、そのあとポイされるんだ。
こなきゃよかったこなきゃよかったこなきゃよかった。
………
…ふんっ。
あなたがいくらなんて言おうとも、これはデートなんかじゃないんだから」
「(スタスタスタスタ)
………ふ、ふふ。
はははははは。
と、とうとうここまで来ちゃった。
も、目的地は、そこ?
………
そ、そうなんだ。
1泊6000円、2時間の休憩3000円………
「ラ」から始まるあそこに、今から………
や、やっぱりそうだったんだよね…
…あ、あなたの目的はやっぱり、私の身体だったんだね………
そうだよねそうだよね。
こんな価値のない私なんて、この身体くらいしか価値がない…
で、でも、期待しない方がいいよ。
見てわかるように、私全然胸も小さいしお腹は出てるし足は太いから。
入った後であなたががっかりするの、目に見えてるんだから。
………
嘘ばっかり。何が「きれい」よ。
わ、私なんかきれいじゃないもん。
大体、もしきれいだと思ってるなら最初から身体目的だって言って襲えばよかったじゃない。
そうしないってことは、所詮おためごかしってことでしょ?
『君を大切にしたい』とか、『初めてはちゃんとしたい』とか、あんなのの全部全部、私の身体じゃその気にならなかった言い訳じゃない。
こ、告白して何年も経ってからこういうことがしたいのなんて、結局そういうことじゃない。
………あー、それともあれかな。
あなたが人に言えないような趣味を持ってて、私になら使い捨てでできると思ったんだ。
そ、そうだ、そうにきまってるんだ。
わ、私のことが好きだから、あそこに行きたいのなんて、全部嘘っぱちなんだ」、
「(スタスタスタスタ)
………ここ?
…ふーん、ここなんだ。
………
…ううん。別に。
これから君の両親に挨拶するからって、緊張なんかしてないよ。
だって、わかってるもん。
どうせなんだかんだ両親はここにはいなくって、お茶を濁して、私を紹介する気なんてないんでしょ?
…そ、そうだよね。
だ、だ、だ、だって、親に何か紹介したら、私をからかってるだけだってこと、バレちゃうもんね?
あーあ、今まで君に騙され続けてきたけど、今日のこれこそ絶対そういうんじゃないんだ。
やっとネタばらししてくれるんだ、よかったよかった。
ドッキリって書かれたプラカードはどこにあるの?
大丈夫大丈夫。
ここまで下準備してきたんだもんね?
出るってわかってるからこそ、ちゃんとそれ相応のリアクションは取ってあげるから。
ほらほら、早く出しなさいよ。
………
…ふ、ふふ。
本当に親はいるんだ。
ふーん。
そ、それならあれなんだ。
あなたの親、やばい宗教かなんかにはまってるんだ。
紹介なんて言ったって、私にどこそこに入れって勧誘するのが目的なんだ。
そ、そうだよね。あなたの両親から勧められたら、私断れそうにないもん。
そ、それで、入信なんかしちゃったらそれで最後。
そしたら死ぬまで一生搾り取られ続けるんだ。
は、はは。
わ、私の人生なんて、どうせそんなのばっかりなんだ………
ふ、ふふ………」
「(スタスタスタスタ)
うー、うー、うー。
どうしてこんなことにどうしてこんなことにどうしてこんなことに。
これは夢?
それとも妄想?
私の願望が生み出した幻?
…そ、そうよ。それしかありえないそれしかありえない。
あ、あの人と結婚して、こ、子供もできて、家族全員で買い物に来てるとか、絶対あり得ないあり得ない。
………そ、それとも、保険金とか?
私の知らない間に保険に入らせておいて、私が死んだら何十億の保険が入ってくるんだ。
………あ、あるいは、自分のいいように扱う奴隷が欲しかったとか?
何でも言うことを聞く奴隷で好き勝手に扱うのが目的………?
………そ、そうじゃなかったら、私という女を隠れ蓑に、いろんな女に手を出すプレイボーイ?
私が浮気されても何も言えないってことがわかってるから、きっと、何人もの女と遊ぶために………
それしかないそれしかないそれしかありえない。
こ、こんなに手間暇苦労を掛けて私をこんな風にするなんて、きっと別の思惑があるに違いない。
そう、きっときっと。
私が昔から、あの人が気になってたってこと、最初からあの人はわかってたんだ。
廊下でぶつかって私の眼鏡を拾ってくれたこととか、移動教室の時に次の教室に教えてくれたりしたこととか、あ、あれも全部、このために計算してやってきたことなんだ。
………バ、バカみたい、私。
ちょっと告白されたからって浮ついて、違うってわかっていながら付き合って、籍を入れるなんて、とんだ道化じゃない………
ふ、ふふ。
ふふふふふふっ。
わ、私は、あなたが私のことを好きじゃないことなんて、最初からお見通しだったんだから」




