210 いつもモテモテな腐れ縁の幼馴染。彼女の周りにはいつも他の男がいるのでボクが告白できるチャンスはない
「………え、わたしのことが…すき?
へぇー、そっかそっかー。
きみは、わたしのこいびとになりたいんだ。
…でも、ごめんね。
きみとはつきあえないよ。
きみとわたしなんて、ぜったいにつりあわないから。
だって―――」
「………ええ、ごめんなさい。
あなたの告白は嬉しいけど、あなたとは付き合えません。
………んー。
どこを直せばって言われても、そういうのじゃないので。
とにかく、本当にごめんなさい。
(ペコリ)
(スタスタスタスタ)
………ごめんごめん。おまたせ。
…えっ、今の。
バスケ部の先輩。
私と付き合いたいんだってさ。
………うん、まあ、確かにかっこいいけど、付き合うとかとはなんか違うかなって。
………うん、今週だけで3回目。
色んな人がとっかえとっかえ告白してくるものだから、本当に参っちゃうよ。
………それはそうでしょ。
私、小学校の頃と中学の頃じゃ、ずいぶん変わったんだから。
あの頃はおしゃれなんて全然興味なかったけど、髪の手入れの仕方を覚えて、ちょっとメイクもするようになって、食べるものにも気を付けるようになって。
だからこんな、学校中の男子から告白される毎日なったんだよ?
これもそれもすべて私の努力のおかげ。
………んー、私あんまり謙遜とか嫌いだから。
きちんと努力をしたんだから、その努力を誇って何が悪いのかって話。
………
…どうかしたの?
何か、真剣な顔しちゃって。
もしかして、君も私に告白…
(―――♪)
あ、電話だ。ちょっとごめん。
…もしもし、私です。
………ええ、ええ。
………はいはい。
………わかりました。
(ッピ)
ごめーん。ちょっと用事できちゃった。
………うん、男の子から呼び出し。
まあ、たぶん、告られるんだろうね。
だから君は、先に帰って。
ちょっと告白受けにくるから」
「………へー、そうなんだー。
………すごいすごーい。
………それで、その後はどんな風に…
…あ。
君、偶然だね。
こんなところで会うなんて。
…ああ、この人?
この人は今の私の彼氏。
この辺ぶらぶらしながら、デートしてたんだ。
………えー、何人目だったかな?
高校入ってから、1、2、3………8人目かな。
…うん?もちろんこの人も知ってるよ。
…ねー?
………あ、うん。
この子は昔からの腐れ縁の友達。
………えー、別に彼とはそういうのじゃないんだってば―。
………
…あ、うん。じゃあまた連絡するね。
じゃあねー。
………
…えっ。ううん。
町のいろんなところ行った後で、ちょうどお開きにしないかって話してたところだから。
君も今から帰り?
…だと思った。
その手に持ってるの、どうせマンガ本かゲームでしょ?
君って、そういうの早く家に帰ってやりたい派だもんね。
それじゃあ、帰ろうか?
………ん?別に?
どうせ一緒の方向なんだし、わざわざ別れて帰る必要ないでしょ。
…彼氏?
…ああ、大丈夫大丈夫。
あの人、そういうの全然気にしない人だから。
…それでさあ、あの人すっごいいろんなこと知ってて、いろんな場所にデートに連れてってくれたんだよね。
話も面白くって、終始私、笑い転げてたよ。
今度のデートでね。ほら、あそこ。あそこにできた映画館に行こうって話になってて………」
「(カランカラン)
………私、ウーロン茶で。
君は?アイスコーヒー?
…ええ。じゃあアイスコーヒーで。
………それで?
急に私に話って何?
わざわざこんなところまで呼び出して。
(ペラ)
………写真?
この並んだ写真がどうかした?
…あー、うん。そうだね。
この写真の人達、全員付き合ったことある。
………えっ?
あーうん。普通にデート行ったりしたこともあるし、ホテルとかも行ったりしてるけど?
それが何?
………えー、いやいや。私らもう大学生なんだよ。
大学生なんだから、そういうこともする年頃でしょ。
どんだけ君はピュアなのよ。
………心配って。
大丈夫大丈夫。危なそうな人には最初からアプローチかけてないし。
っていうか付き合ってるって言っても、軽い感じというか、半分遊び相手にする感じばっかて、別れても全然気にしない人達だから。
みんな後腐れなく別れてるよ。
………うーん、でもそんなに心配心配って言われてもさ、具体的に君はどう心配してくれるの?
変な男に引っかからないように見張ってるとか?
ふふっ。
そんなの絶対に無理じゃない。
いくら心配心配って言っても、行動が共わなくっちゃ、全然心配してることにならないと思うけど?
君は、私のことをきちっと責任もって面倒見てくれるの?
………あ、黙った。
…はあ、君って本当に口ばっかだよね。
約束なんて全然守らないし、言ったことなんてすぐ忘れちゃうし。
そんなことだから、彼女の一人や二人できた試しがないんだよ。
君はもうちょっとこう、さ………
(バンッ!)
(タッタッタッタッ)
………帰っちゃったか。
何をそんなに怒ってるんだろ。
………
…あー、すいません店員さん。騒いじゃってて。
あ、それ。アイスコーヒー。
…あー、私飲むのでいいですよ。
もちろんお金も払いますから。
………ええ、ええ。
うるさくしてすみませんでした。
………
…はあ。私、こんなに頑張ってるのにな。
中学の時は目一杯可愛くなっていろんな男子から告白されて。
高校の頃はいろんな彼氏にいろんなところに連れっててもらって、どんな場所のデートにもばっちり行けるようになって。
で、大学の今はもっといろんな彼氏といろんな経験を積んで、どんな男女交際でもシミュレートして失敗しないように努力して。
後は、君次第だっていうのに。
………
…あーあ。
私、もっともっといい女の子にならなくちゃいけないのかな?
こっちは君から告られるの、ずっとずっと、ず―――――っと、待ってるのに」
「…でも、ごめんね。
きみとはつきあえないよ。
きみとわたしなんて、ぜったいにつりあわないから。
だって―――
きみはすっごくあしがはやくて、テストもいちばんで、めちゃくちゃカッコよくて。
そんなきみとならべるほど、わたしはすごくないから。
………でも、でも。
わたし、これからいっぱいいっぱい、がんばるから。
きみのとなりにいてもはずかしくないくらい、いいおんなのこにがんばってなるから。
…だから、もしそうなったら、さ………
そのときにもういちど、わたしにこくはくしてね?」