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207 雨の中の捨て犬。拾われた子犬はご主人様のことが大好きなあまり…

「(ザーザーザーザー)

(ザーザーザーザー)

(ザーザーザーザー)

………

………

………

…なんですか?

………ボク?

ボクは見ての通り、ご主人に捨てられたんだわん。

お前なんかいらないって言われて、ここに放置されてるんだわん。

………

…拾ってくれるんですか?

ありがとうございますだわん」




「わんわんっ!

ご主人!

今日はいい天気だわん。

絶好の散歩日和だわん。

ポカポカしてて、歩くのも気持ちいいわん。

(タッタッタッタッ!)

…ご主人―!早く早く―!

もう、ご主人は歩くのが遅いんだわん。

………えー、犬には勝てないって、そんなことないんだわん。

ご主人だってきっと本気を出せば、

(タッタッタッタッ!)

(タッタッタッタッ!)

(タッタッタッタッ!)

このくらい走れると思うんだわん!

………んー、ちょっと走り過ぎちゃったかなー?

ご主人があんな遠くに。

おーい!おーい!

ご主人―!

………ん、なんだあの人間達?

ご主人の知り合い?

でも、あんまり仲良さそうに見えないわん。

………あっ。ご主人が、ご主人が、地面に倒れて…

助けなきゃわん!

(タッタッタッタッ!)

お前達―っ!

ボクのご主人に何してるんだわん!

ご主人から離れろー!

(がぶっ!)

(がぶがぶがぶがぶ)

(がぶがぶがぶがぶ)

(スタタタタタタッ!)

…ふう、全員いなくなったわん。

ご主人―。ご主人―。

大丈夫かわん!

………ううー。足にすり傷が…

ボクが最初からご主人の側にいれば…

ごめんなさいだわん………

………

…え?

噛みついたらいけなかったんだわん?

ケガさせたら、ダメ…?

で、でも、先にやってきたのはあいつらの方で………

………ううー。

ご主人、ごめんなさいだわん…」




「(ヒュッ)

(タッタッタッタッ!)

(タッタッタッタッ!)

(タッタッタッタッ!)

(タンッ!)

(カプ)

…やったー!キャッチできたわん!

(タッタッタッタッ!)

ねえねえご主人。ちゃんとボール、キャッチできたわん!

ほめてほめてー!

(なでなでなでなで)

んー。

ご主人の手、気持ちいいわん。

ねえねえご主人、もう一回やろやろー!

(ヒュッ)

(タッタッタッタッ!)

(タンッ!)

(カプ)

ふっふっふーん。

ボクは天才だわん。

どんなボールだってキャッチできるわん!

ねえご主人、もう一回…

………ん?ご主人、何を見てるんだわん?他の人間なんか見てて。

あっちの人間も、何かを飛ばして遊んでるわん。

もしかしてご主人、あれで遊んでみたいの?

…わかったわん!ボクに任せるわん!

(タッタッタッタッ!)

(タッタッタッタッ!)

(タッタッタッタッ!)

(タンッ!)

(カプ)

やったー、キャッチキャッチ―!

(タッタッタッタッ!)

ご主人―、持ってきたよー。

今度はこれで遊んでくれるわん?

(ヒョイ)

………え?あ、あれ………?

どうしたのご主人?

それもって、さっきの人間のところに………?

………あ、さっきの人間に渡してる。

ご主人、戻ってきた…。

…ねえねえご主人。

せっかくボクが取ってきたのに………

…え?他の人間のは取っちゃいけない?

他の人間のものは、他の人間のものだから…?

………う、ううー。

ごめんなさい、ご主人………」




「(もぐもぐもぐもぐ)

(パクパクパクパク)

(もぐもぐもぐもぐ)

(パクパクパクパク)

(カラン)

………はー、おいしかったー。

ご主人、ご飯おいしかったわん!

いつもいつもご飯をくれてありがとうわん!

前のご主人は何かにつけて罰だっていってご飯くれない時もあったけど、ご主人は毎日毎日ご飯くれるから大好きだわん!

………ねえねえご主人。

ご主人今日は休みの日だわん?

そしたら今日は一日中、ボクと………

………えー、出かけちゃうのかわん…

そっかそっかー、なら仕方ないわん。

ご主人、行ってらっしゃーい。

………

………

………

(きょろきょろ)

(きょろきょろ)

…よし、誰も見ていないわんね。

………よいしょっと。

(スポン)

ふっふーん。ボクにかかればこのくらい朝飯前だわん。

…ご主人と一緒にいるのはダメだけど、ご主人を遠くから見てる分には大丈夫だよね。

さーって、ご主人の匂い匂い。

(クンクン、クンクン)

…ん、あっちだわん。

(タッタッタッタッ!)

………あ、ご主人見つけたわん。

どこに行くのかなー?

(トコトコトコトコ)

(トコトコトコトコ)

(トコトコトコトコ)

…お、止まったわん。

でも、あんなところで止まってどうするんだわん?

………

………

………

…ん、あれ。

別の人間が、ご主人の側に寄って………

前みたいな奴らなら、またボクが………

………

………違う。前のあいつらみたいなやつじゃない。

ご主人、なんか楽しそう…

ボクといる時より、笑ってるわん………

…あ、その人間と一緒に歩きだしたわん。

あんなご主人、今まで見たことないわん………

うーうー。

許せないわん。

ご主人の隣にいるのはボクだわん。

ご主人はボクのものだわん。

あの雨の日に見つけてくれた瞬間から、ボクはご主人のもので、ご主人はボクのものなんだわん。

その人間のものはその人間のものって、前にご主人言ってたわん。

だから、ボクのご主人はボクのご主人なんだわん。

あんな人間は、いらないわん。

このままこっそり追いかけて行って、あの人間が一人になったら………

待っててね。ご主人。

ご主人のこと、絶対ボクが取り返してみせるわん!」

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