198 学校にいるヘビースモーカーな用務員は校舎裏で出会ったボッチな彼のことが気になって…
「(シュポッ)
(ジジジ…)
(プカプカ)
はー………
ねっむ…
………
………
………
(スタスタスタスタ)
………ん?
あ。
………
…あー、あたしか?
あたしはここのセンコーじゃねーよ。
事務員っつーか用務員っつーか、ま、学校の雑用係みてーなもん。
………
…いや、そっちが生徒だっつーのは見りゃわかるっつーの。
その制服どんだけ見慣れてると思ってんだよ。
…けど、こんな校舎裏なんかに生徒が来るなんて思わなかったな。
サボってタバコ吸うにはもってこいの場所だったんだけど、まあいいや。
じゃあな。
………
…あー、いや、先生でもないやつが生徒追っ払うわけにもいかねーし、あたしが消えるよ。
こんな校舎裏とはいえ、一応学校の敷地内だしな。
………ん、あたしがいてもいいのか?
ふーん。じゃ、ま、遠慮なく。
(プカプカ)
はー………
………タバコ?
別に、うまくも何ともねーよ。
ただ、いろんなこと忘れてぼーっとするにはもってこいっていうだけ。
…で、そっちは?ボッチとかそんな感じなん?
………いやいや、休み時間に一人でこんなとこ来るとか、ボッチ以外の何でもねーだろ。
ここじゃなきゃ、図書室か屋上とかな。
あー、でも。屋上は普段鍵開いてないか…
…ま、でも、友達なんかいてもいなくてもいいけどな。
………あたし?
あたしは全然。
学生の頃は一人だったよ。
つか、友達とかそういうの面倒だしな。
あれだぜ?
女子って常にグループで行動してて、移動教室もトイレも部活も登下校も一緒なんだぜ?
そんなのバカバカしくてやってられるかって思ってたら、いつの間にかあんたみたくボッチになってたよ。
(プカプカ)
けど所詮、友達なんてタバコと一緒で娯楽品みたいなもんだからな。
いたらいたらでいいもんだけど、別にいなくても問題ないとか、そんな感じのやつ。
………って、何語ってんだあたし。
センコーでも何でもねーのに。
………ん、そうか。
ま、ほどほどに頑張れよ」
「(プカプカ)
はー………
………
…ん、なんだお前、また来たのかよ。
………いやだって、一人になりたくて人気のないところ探してたんじゃねーの?
…ふうん。別にいいけど。
………
…あっそ、前よりボッチでも気が楽なったんだ。
そりゃおめでとさん。
………
…さて。
(ゴソゴソ)
…え?これ?
見ての通り昼飯。
今昼休みなんだし、お前も後で食うんじゃねーの?
………へー、財布忘れたんだ。
そりゃ災難だったな。
………朝飯も抜いてたとか、それもやべーじゃん。
………
…そんなもの欲しそうな目でこっち見んなよ。
え、つか、こんなの食いたいわけ、お前?
パンに適当に冷蔵庫にあったもん挟んだだけの手抜きなのに…
………
…あーもう、わかったわかった。
半分やるから、それで我慢しろ。
………いいよ別に。
腹減ってる人間目の前にして、自分だけ食べるとか無神経な奴じゃねーの、あたしは。
………
…いや、そんなうまいうまい連呼されても、あたしがすげー料理下手なやつみてーじゃん…
あたしだって、ちゃんと作ってる時はちゃんとしたもん作ってんだからな。
ふん」
「…ほら、どうだ。
あたしの手作り料理の味は?
………ふん、よしよし。
これで汚名返上はできたな…
今度からちゃんと、料理のできるおねーさんと敬えよー。
………いや、そこでマジで返すなよ。
ったくこれだから、会話の経験値がすくねーボッチは…
………あー、つか、なんか呼び止めて悪かったな。
ていうかなんだよ、そのでっかい荷物。
…キョウザイ?
ああ、教材か。
次の授業で使うやつとか?
…ふーん。そんな雑用、断りゃいーのに。
………
…はあ?委員長、お前が?
………はー、あれか。
クラスの中で誰もやんなくて、無理やり押し付けられたパターンだろ?
…だと思った。
みるからにそういうのやるやつじゃねーもんな、お前って。
………でもそれならなおさら、やりたくなきゃやんなくてもいーんじゃねーの?
別に委員長だからって、雑用やる理由にはならないだろ。
無理やりさせられたって言うんならなおのことな。
やんなくたって罰金取られるわけでもねーし、サボってもいいだろそんなもん。
………
…はー、真面目なんだなお前って。
………うん、うん。
またなー。
………
………
………
…あいつのクラスの担任って確か、大学の後輩だったっけ」
「(スタスタスタスタ)
………
………
………
………ん、なんだあれ?
あいつ、他の奴らに囲まれてる?
で、財布。
つーことは………
…おい!お前ら!そこで何やってんだ!
(タッタッタッタッタッ)
ったく、蜘蛛の巣散らすように逃げやがって…
………おい、お前、大丈夫か?怪我は?
…なさそうだな。
で、財布は…そこにあるか。
(ヒョイッ)
ほら。
中は平気か?一応確認しとけ。
………にしてもあいつら、今時カツアゲとか、やること狡いんだっつーの。
………
…いいよいいよ、礼なんて。
………いやそりゃ、これはセンコーとかそういう以前の問題だろ。
困ってる奴がいたら助けるのは、大人としての常識だよ常識。
………それでも礼言うとか、律儀だなお前って。
(シュポッ)
(ジジジ…)
(プカプカ)
………んー?ああ、この間の話?
…へー、担任がお前に謝ってきたんだ?
仕事押し付け過ぎたって、その担任も思ったんじゃねーの?
ま、何はともあれ、それでお前の仕事減ったならよかったじゃん。
………
…いや別に、あたしは礼言われるようなことはしてねーっつーの。
ったく。
(キーンコーンカーンコーン)
ほらほら。チャイム鳴ったんだし、早く教室戻れって。
(スタスタスタスタ)
………
………
………
…ま、雑用係って言っても、さすがにカツアゲはフツーにセンコーに言うべきことだよな…?」
「(シュポッ)
(ジジジ…)
(プカプカ)
はー…
………
………ふうん、あの不良達停学になったんだ?
停学になるっつーことは、あれ以外にもいろいろやべーことやってたんだろ。
悪い奴がいなくなってめでたしじゃねーの?
………そこは素直に喜んでおけよ。
ったく、それじゃあこっちもやりがいが………
いや、何でもないよ。こっちの話。
………それよりお前、テストやばい感じ?
………そりゃお前、こんな校舎裏来てまでノート開いてるとか、そう聞いてくださいって言ってるようなもんだろ。
どれどれ………
ふーん、今はここやってるのか。
………ん、まああたしだって、一度は学生の道たどってるしね。
やったことくらいのところは覚えてるよ。
何だったら、わからねーところ教えてやってもいいけど。
センコーじゃねーし、教え方が上手かどうかはわからねーけど…
………いや、そこまで期待されても困るんだが…
まっ、いいや。
…あー。その問題なー。
それは………
―――
―――
―――
………っと、そろそろ時間か。
んー?まあ、暇なときにまた教えてやってもいいけど。
………だから、そこまで期待するってーの。
…うん。うん。
また明日な。
(スタスタスタスタ)
………
………
………
…そういえば、今朝のゴミにテスト問題のコピー混じってたっけ………」
「(プカプカ)
………ほー。
(ペラッ)
…ふん。
(ペラッ)
…はー。
(ペラッ)
…へぇ。
(ペラッ)
…ふむ。
(ペラッ)
…ん。
…90、84、98、78、88、92。
すごいなお前。こんな高得点、あたしでも取ったことねーよ。
………いや、お前の実力だよ実力。
お前が勉強したからそれが実っただけだっつーの。
まあ勉強なんて所詮、進学か就職にしか使えねーけどな。
………
…あー、はいはい。偉い偉い。
こんな点とったお前はすごいって。
………でも、テスト問題やってこれってことは、地力の差かな…?
………いや?ただのこっちの話。
(シュポッ)
(ジジジ…)
(プカプカ)
………でも、お前みたいのが急にこんな点とったら、周りのやつも少しは見る目が変わったんじゃねーの?
………そうだよな。
勉強っていうのは目に見えるステータスだからな。
弱肉強食のスクールカーストじゃ、それは結構でかいよな。
………え、手紙?女子から?
ふーん、ちょっと見てもいいか?
…ん。
(ペラッ)
………放課後に呼び出しとか、ベタだな。
…あー、返す返す。
ほら。
んー、でもそういうの、あんま期待しすぎない方がいいと思うよ。
女子ってやつは、ちょっと出てきたやつをたたくのが面白いっていう人種がゴロゴロいるからな。
………
…はー、こういう話は全然、あたしの話聞かねーのな。
いや、別に、いいけど。
ま、期待しない程度にがんばれー。
また明日な。
………ん、ああ。ちょっと用事思い出したから。
じゃあ、また。
(スタスタスタスタ)
………
………
………
…あの手紙とあの文字。
問題児のギャルのやつだよなー。
あたしにすら耳に入ってくるくらいの黒い噂の多い奴。
そんな奴に痛い目合う前に、あたしが何とかしないと。
………
ただサボってタバコ吸ってた時間が、あいつのおかげでちっとは楽しくなってきた。
その恩返しくれーは、しとかないとな。
あいつは、あたしのお気に入りなんだから」




