197 天才科学者はタイムマシンを開発して想い人と結ばれようとするが恋愛に関しては素人で…
「………ふふ。ふふふ。
ふふふふふ。
ようやく、完成した。
数十年かけた最高傑作。
タイムマシンが、完成した。
これで、どんな時代でも行き来できる。
そうすれば…
そうすれば…
そうすれば絶対に、彼と結ばれることができるはずだ」
「(タッタッタッタッ)
(ドーン!)
…いたたた。
ああ、ごめんなさいごめんなさい。大丈夫ですか?
お体、怪我してないですか?
………良かった。
あ、でも、服。私のジュースが………
私、弁償します。
あなたって、私と同じ大学の人ですよね。
え?
えーっとそれは、授業で何度かお見かけしたことが…
………ええ、ええ。
それじゃあ、そこの服屋さんで新しい服を…」
「………なんでダメだった?
この上なくさりげなくかつ、インパクトのある出会いだったはず。
なのにどうして、他の女と…
ならもっと、同じ時間を共有できる時代に…」
「………はー、今日も練習も疲れたねー。
え、私?
君と同じ吹奏楽部の一年だよ?
…あー、うちの吹奏楽部、部員多いもんね。
………うんうん。でもこれからは同じパート同士、仲良くしていこうよ」
「………ダメだダメだ。
いくら同じ部員同士でも、部活しか接点がないとそれ以上の関係になれない。
だからまたあいつは、別のやつと…
………そうだ、あの女は中学からの幼馴染。
だったら…」
「(キーンコーンカーンコーン)
…今日から新学期だね。
隣の席同士、よろしく」
「………クソクソッ。
入学時からずっと同じクラスで隣の席だったのに、眼中にないだと?
何度も何度もこちらから話しかけて、宿題も貸して、勉強も教えたというのに。
何が足りない?
何が不足している?
………時間が、時間がもっとあれば」
「ねーねー。
きょうはあそこのおやままでいってみようよ。
………だいじょうぶだって。
くらくなるまえにかえってくれば、おとーさんもおかーさんもおこらないって。
いこっ?」
「………幼少時から彼を監禁。
私以外を見えないようにしてきたのに、助けられた後、別の女と………
ふふっ。
ふふふっ。
これなれば、あの手を…」
「ばぶー。
ばぶばぶ。
ばぶばぶばぶ。
ばぶ。
…ばぶばぶー。
ばぶー。
………
………
………
(ふっふっふっ。
私とあいつの手を二度と離れないようにくっつけてやった。
これぞまさしく一心同体以外の何物でもない。
生まれて間もなき赤ん坊の頃から一心同体なら、必ずや私と彼は結ばれることができるはずだ。
ふふっ。
ふふふっ。
ふふふふふっ)」




