196 久しぶりの田舎への帰省。従姉のお姉さんはボクのことを何でもお見通しで…
「(スタスタスタスタスタ)
(スタスタスタスタスタ)
(スタスタスタスタスタ)
………
………あれ。
あれあれ?
あれあれー?
あー。やっぱり君だー!
なになに、こっち帰ってくるの久しぶりじゃない?
………ふーん、大きな仕事片付いたからこっち戻ってきたんだ。
そっかそっか。
………ね、ね。
こうして話すのも久しぶりなんだし、どこかでお茶しながら話さない?
お姉さん、君に何でもおごってあげるよー。
…あはは。もうおごってもらわなくても大丈夫なんだ。
お姉さんのおごりを断るとか、君も大人になったねー。
(よしよし)
…それじゃ、あそこの喫茶店行こ?
あそこのお店、相変わらず昔と同じマスターでさー………」
「………ここのカフェラテ、昔と味変わってないよね?
本当に君は、ここのカフェラテが大好きなの変わってないな。
…君があっちに上京してから、もうずいぶん経つよね。
どう?仕事には慣れた?
………そうだよねー。
毎年毎年下の子が入ってきて後輩がたくさんできると、慣れてなきゃしょうがないよね。
後輩に仕事教えることもたくさんあるんでしょ?
先輩が仕事わかってなきゃやってられないもんね。
上司とかとはうまくやってる?
………あはは、うんうん。
いるいる、そういう人。
他人のミスは絶対に許さないのに、自分のミスは絶対認めようとしない人。
そういうタイプって結構やりづらいよねー。
そういう人相手にはあんまり真正面から反抗しちゃだめだよ?
…って、君ならうまくやってるんだろうけど。
私みたいなちょっと年上の従姉にもこんなに愛想のいい対応ができるんだから、ね。
………またまたー、知ってるんだぞー。
私が小っちゃかった頃、君に抱き着いたりほっぺーにチューしてたら、お母さんに告げ口したの。
その後、私すっごく怒られたんだからー。
…そっかそっか、もうそんなことはないか。
やっぱり君は大人になったなった。
(よしよし)
………
…えー、いいじゃないこのくらい。
私にとっては、まだまだ君はあの頃のまま、子供なんだからさ。
………そう?
でも君、私生活はだらしないんじゃないの?
ご飯とか、スーパーとかコンビニで買ってばかりでしょ。
別に外で買うのは否定しないけど、あんまり自分の好きな物ばかり食べてたらダメなんだからね。
ハンバーグとか、焼肉とか、トンカツとか、そういうのばかり食べてたらその内いつか体壊しちゃうんだから。
………そうだよ。
私は君のことならなーんでもお見通しなんだから。
…君の家には洗濯物がたまっていることも、床にゴミが散らかっていることも、全部全部、ね。
………あはは。やっぱり当たってたー。
君は外での生活はしっかりしてるんだけど、自分の部屋とか内の生活は本当にだらしないよね。
かわいいなー、このこのー。
…あ、マスター、カフェオレもう一杯お代わりお願いしまーす。
あ、はい。2杯で―。
…ん、あれ?何か別の注文したかった?
ごめんごめん、お姉さん、気が利かなくって。
…ん、そうじゃないんだ。
………ああ、もちろんそれくらいは見てるって。
話ながらでも、君のカップの中身はきちんと見えるからね。
………それでそれで?
あっちでの人間関係はどう?
好きな人とかできた?
…いやいや、むしろこれが本題じゃない。
恋バナ恋バナ。
君の恋バナ、お姉さん聞きたいなー。
…ほら、会社の後輩とか、上司とか、いい人っぽい人くらいいるんでしょ?
仕事を教えてって可愛くなついてくる後輩とか、ミスは認めないのに顔はかなり美人の上司とかの話とか聞かせてよー。
………んー?どうしたの。
変な顔しちゃって。
私、なんか変なこと言ったかな?
………なんだ、そんなこと。
言ったじゃない。
君のことは、お姉さんにとってなーんでもお見通しなんだって」
「(カランカラン)
それじゃ、まったねー。
今度会ったら、君の恋バナ、また聞かせてねー。
(スタスタスタスタスタ)
(スタスタスタスタスタ)
(スタスタスタスタスタ)
………
(プツッ)
(ザーザーザーザー)
…よし、マイク感度は良好っと。
(………)
…うんうん。ちゃんと声も聞こえてるね。
これでばっちり、君のことを見守ることができる。
………あーそろそろ、部屋のカメラの電池も交換しとかないとな。
もうしばらくはこっちにいるだろうし、その間なら入り放題だよね。
(………)
…扉の音、実家の方に帰ったみたい。
(………)
………君がちゃんとやれてるか、それを見守るのがお姉ちゃんの役目だよ。
幼い頃から君はしっかりしているようで、どこか抜けているところがあるから。
だから、私みたいなしっかりした人間が見守っててあげないと。
これからも、お姉ちゃんが見守っててあげるから、安心してね」




