192 長年隣に居続ける私の友人は頑なに男女の友情アリ説を唱え続けている
「私はね、男女の友情というのものは成立すると思うんだ。
今の世の中、男女に隔たりを作る方が難しい。
例えばスポーツ。
サッカー、野球、バスケ、バレーボール…
今じゃ男女両方ができないスポーツの方が珍しい。
スポーツ人口は男女ともに日々数を増やしていき、多くの人間が多くのスポーツに取り組む。
男子の中に女子が混ざるのも当然だし、女子の中に男子が混ざるのも何らおかしくはない。
同じスポーツに取り組むものは性別の垣根を超えた同士、と言っても過言ではないだろう。
例えば共働き。
昨今の情勢で共働きでない世帯の方が珍しい。
一昔前までは、嫁いだ先で家庭に入るとはよく言ったものだが、現在でそれは全く通用しない。
年々景気の悪化により給料は下降の一途をたどり、上昇の気配さえない。
女性が進出する、という言葉を使うのさえおこがましく、男性以上に稼ぐ女性だってごまんといる。
男性女性共に働き、社会を支えている。
いまだなお古い風習が残る企業はなくもないが、時代と共に廃れていくのは自然の摂理だろう。
父が、母が、両方が子供養うために働く、それが現代の真理である。
このように、今の時代に男女に隔たりなどない。
男女平等でさえなく、ただただ能力に秀でているものが中心となっている。
…それに、友情というのも決して同性同士、同族同士の間にのみ生まれるものではない。
今やペットは家族の時代。
犬、猫、ハムスターなど、人間以外の動物が人間の家族になりえている。
むしろ、他に家族がいるのにもかかわらず犬や猫を溺愛する人々の方が多いくらいだ。
人間同士では言葉を交わせるがゆえに時に衝突し、たもとを分かつこともあり得るが、犬や猫の場合そんな心配はいらない。
どれだけ彼らが迷惑こうむろうが、人間には決してわからないからこそ、ただひたむきに愛情を向けられる。
赤ん坊がただただ可愛いというのと同じようにね。
また、創作の世界に目を向ければ、動物以上の異生物と友情を築くものはたくさんある。
宇宙人、エルフ、人魚、虫、AI…など、ありえないような組み合わせが当然のようにはびこっている。
創作だからと切り捨てることも可能だが、しかし、人々が想像できることはすべて実現できるという名言もあるように、今後そんな未来が訪れる可能性は決してゼロではなく、起こりうる可能性が高い事柄でもある。
宇宙人やエルフと仲良くなる未来だって、あり得るのだよ。
…そう、男女の間に隔たりがないように、人間が以外の存在と友情を育めるように…
男女の友情は成立するのさ。
そう、だからこそ………
君が、君の側にいる男性の彼らに抱いている感情は全て、男女の友情というわけさ。
一緒に登下校するのも、お昼を一緒に誘われるのも、休日遊びに行くのもすべて、友情から来るもの。
決して、それ以上の感情ではない。
その証拠に、彼らは君に対して明確な好意を伝えたことがあるのかい?
君の家の隣に住む幼馴染も。
学校をまとめる生徒会長も。
頼れる部活の先輩も。
いつも教室の端にいるクラスメイトも。
君のことが好きだと発言したことはないだろう?
だからこそ、君が彼らに抱いているものも、彼らが君に抱いているのものもすべて、友情がおりなすものだ。
彼らを友情をはぐくんでいるからこそ、共に登下校し、お昼を一緒に食べ、休日に遊びに行く。
それだけでしかない。
………そんな有象無象、路傍の石ころである彼らとは違い、私ははっきりと君に好きだと言おう。
君のことが好きだ。大好きだ。愛している。
…なに、女性同士というのは気にする案件ではあるまい。
先ほど述べたように、男女の隔たりなどないのだから。
例え女性同士は子供を成すことができなくても、私達の子供を得る方法はいくらだったある。
大事なのは男女という枠組みではなく、好きか、嫌いかの二択だ。
私は君のことが好きだ。大好きだ。愛している。
だからこそ、友人以上の恋人の関係になりたいと望んでいる。
君は、私のことが嫌いではないはずさ。
嫌いでなければ、何年も私と友好な関係を築いていないだろう。
そろそろ私達は次のステップに進む頃合いだ。
有効な友人関係というのも捨てがたいが、しかしすでに機は熟している。
私達の関係をさらに奥深いものに、変化させようじゃないか。
君もそう思うだろう?
そう思うはずだ。
何せ君は…
私の恋人、なのだからな」




