188 一人暮らしのワンルーム。彼女は毎朝同じルーティーンを繰り返している
「(ブーン、ブーン、ブーン………)
(シュッ)
………
…ん、んー………
………朝か。
(バタッ)
(スタスタスタ)
(ジャー)
(バシャバシャ)
…ひー、つめたーい。
でもすっきりする。
(キュッキュッ)
…さて、朝ごはん朝ごはん~♪
(バタッ)
………んー。よし。
(トントントン)
(ジャー)
(チャッチャッチャッチャッ)
(パラパラパラ)
…完成。
それじゃ、いただきます。
(モグモグモグモグ)
(モグモグモグモグ)
………
(ピッ)
(―――)
…へー、あの人が逮捕か。
最近調子出てきたのに………
………
…ん、美味しそう、あのケーキ。
イチゴとナシとマスカットとあんことか、すっごーい。
………
…コーヒーって美容いいんだ。
………
…ん、今日は雨か。もう一枚上着必要かな?
………
…猫ちゃんかーわいー。
………
…占い最下位だ。最悪…
………
(カッカッカッカッ)
…ふぅ。
ごちそうさまでした。
(ピッ)
(ジャージャージャージャー)
(キュッキュッキュッ)
………よし、洗い物終わり。
さあーって。もう時間あんまないぞー。
早く掃除やんなくちゃ。
(サッサッサッサッ)
(パッパッパッパッ)
(フキフキフキフキ)
………よし、これでピカピカ。
後汚れてそうなのは…
(ブーン、ブーン、ブーン………)
…あっ、ヤバッ。
もう時間だ時間。
…えーっとえーっと………
うん、もう大丈夫。
きれいになったし、何も落ちてないね。
平気なはず。
(ブーン、ブーン、ブーン………)
…おっと、やばいやばい。
急がなくっちゃ。
(バタッ)
(ゴソゴソ)
………
………
………
(ガチャッ)
(タン、タン、タン)
(ジャー)
(キュッ)
………
………
………
(ピッ)
(―――)
………
(…疲れたような顔で、テレビ見てる。
今日も夜から朝まで、警備の仕事頑張ってたのかな。
毎日毎日働いてて、本当にお疲れ様。
………あなたと一緒に同棲を始めてから、もう一か月。
その前から、ずっと私はあなたを見てきた。
あなたは毎日毎日大変で、仕事に追われてて、家のことは何にも手が付かない。
私がここに住むようになってから、ずいぶんときれいになってきたよ。
部屋のゴミを片付けて、壁や床の掃除をして、洗濯物を片付けて、冷蔵庫に食べ物を入れておく。
最初は少し不思議がってたあなただけど、徐々に慣れてきて、今ではもう前と同じような…ううん。前よりももっといい生活を送れている。
それは全部、私のおかげ。
あなたは私のおかげというのはわからないかもだけど、私はあなたの役に立てればそれでいいの。
だから。
だからだから。
だからだからだから私は、クローゼットの中からあなたをこっそり見ているだけで満足できる。
こんなに狭い場所が寝床でも。
あなたが起きてる時にここから出られなくても。
あなたが私のことを認識してなくても。
それで私は平気だよ。
あなたからの愛がなくても、私の愛があなたに届ければ、それで心が満たされる。
私のおかげであなたが健やかに生きられれば、それで幸せ。
この先も一生、ここからあなたを見ているね)
(バサッ)
(バリバリ)
(あー、ポテチあんなふうに食べて、食べかす床に落ちちゃうよ。
でも…)
後でちゃんと、キレイにしておくからね」




