表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/285

178 研究熱心なクールな科学者は恋人が死んだと聞かされてもその手を止めることなく…

「………何か呼んだか?助手?

…私に客?

帰ってもらえ。私は研究で忙しいんだ。

………何?もうそこまで来てる?

ったく、こんな忙しい時に一体誰が…

…なんだ、お前か。

何しに来た?

………

まったく意味が分からないな。

私とお前が恋人関係であることが、一体なぜ今日会いに来るという話につながるんだ。

私と話したいのならもっと論理的にしゃべれ。

お前の言葉はまったくもって論理的ではない。

………これが何の研究かだって?

お前に言ったところで理解できる個所など一つもないさ。

だから、しゃべるだけ時間の無駄だ。

とっとと帰れ。

私は研究でとても忙しいんだ」




「………ん、なんだ?

………助手か。

一体どうしたんだ?そんなに慌てて?

実験機器が故障でもしたのか?

それか、化学反応で爆発でも起こったのか?

………

………ふうん。そうか。

用件はそれだけか?

なら、私は研究に戻る。

………なんだよ、助手。

何か言いたげな顔をしているが、言いたいことがあるなら言ったらどうだ?

………ああ、もちろんさっき話はきちんと聞こえていたぞ?

あいつが死んだ、という用件だろ?

それが一体どうしたんだ?

………ん?恋人が死んだというだけだろう?

十二分するほどに理解しているさ。

用件が終わったなら、さっと持ち場に戻れ。

今の研究はとても忙しいからな。

一分一秒が惜しいんだ」




「………ふう。

…ん、いつからそこにいたんだ?

………ああ、さっき私が終わるまで待てと言ったんだったな。

いいぞ、今ちょうど一区切りついたところだ。

それで何だ、助手?

………ふむ。今日があいつの通夜か。

………それで?

…は?なぜ私が参加しなければならない?

私は研究で忙しい。

行きたいのなら、お前一人で行って来ればいい。

………最後?

最後だからなんだというんだ。

助手、お前もあいつのセリフが移ったのか?

しゃべるのならもっと論理的にしゃべれ。

論理を無視した会話など全くの無駄だ。

………

…やっと行ったか。

ああ、忙しい忙しい。時間がいくらあっても足りないな」




「………ああ、助手か。

ちょっと今手が離せないんだ。今ここで言うか、それか後にしてくれ。

………ふーん、資金提供の打ち切りね。

これで5社目か?

次から次へと援助が減っていくな。

………私のせいだと?

一体何で私のせいになるんだ?

私は日中日夜研究に取り組み、成果を出し続けているというのにな。

………別にかまわないだろう、そのくらい。

私は別に資金提供する企業のために研究しているわけじゃない。

私が研究したいと思うことを研究しているだけ。

それに対してあいつらが勝手に金を出しているだけなんだ。

勝手に手を差し伸べた以上、勝手に辞めるのもあいつらの都合だろう。

話はそれだけか?

…ならこれで終わりだ。

私は研究で忙しくしている。

なるべく私に話しかけるな」




「………おい、助手。

昨日のデータの集計なんだが…

………おーい、助手。どこに行ったんだ?

………

ああ、そうだ。あいつはもういないんだったな。

長年一緒に研究しておいて急に辞めるだなんて、まったくもって理解不能だ。

まあこれで、うるさい奴がいなくなったことだ。

精々私は研究に手中させてもらおう。

…おい誰か、このデータの集計を…

………

………

………

…誰もいなかったか。仕方ない、後で私がやっておくことにしよう。

この研究が忙しい時に…ったく」




「………ふ。ふふ。

ふふふ。

ようやく、ようやく完成した。

助手、お前が今ここにいないことが残念だよ。

長い間一緒に研究し続けてきた助手には、一緒に見てもらいたかったんだがな。

まあ、いない奴のことをとやかく言っても仕方ない、か。

ふ。ふふ。

ふふふふふ。

思えば、ここまで長い月日がかかったな。

私の一生涯を費やしたともいえる研究。

人間を再び蘇らせる研究だ。

といっても、死んだ人間を生き返らせるわけではないがな。

死んだ人間を複製したロボットの開発。

この目。

この口。

この耳。

この手足。

まさしくこれはあいつそのものだ。

外見だけではなく、中身もあいつそっくりのチップを埋め込んである。

これはあいつであり、あいつ以外の何物でもない。

ふ。ふふ。

ふふふふふふふふふふ。

…ようやく。

ようやく、また会えたな。

人間は寿命が存在し、いつかはその命の灯は消え去る。

だが、機械はその限りではない。

人間よりもはるかなる時を生きることができる。

これでお前と、永遠を生きることができるようになった。

これから私と永遠を生きて行こう。

私の親愛なる、恋人よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ