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175 山奥に店を構える薬屋は、僕のためにいろんな薬を出してくれるが副作用も大きくて…

「(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

………

(コンコン、コンコン)

…開いてるよー。

勝手に入ってきたまえ。

(バタン)

………おや、君かい。

どうしたんだい。そんなあからさまにやつれたような様相をして。

…ふむふむ、頭が痛くて腹もちぎれるように痛い、と。

………もちろんだ。

ここをどこだと思っている。

この世界一の薬屋に、置いてない薬なんてないさ。

………ふんっ。

世界一かどうかは店の大きさだけで決まるもんじゃない。

たとえこの店が町の大通りの店の半分の広さもなかろうが、誰がその店の主で、どんな種類の薬を置いてあるかで店の価値は決まるというものだ。

君だって、他のお店でなかったからわざわざこんな森の奥深くの店に来たのだろう?

………たまたま通りかかっただけか。

まあいいさ。

なんでも取りそろえているのがこの店の売りだ。

頭と腹の薬だったな。

…ほれ、持ってけ。

………大丈夫大丈夫、ちゃんと治るさ。

他の奴らならともかく、君に怪しい薬を渡したりなんかしないよ。

………ふん。そんなこというなら、渡さないぞ。

そんなに気分悪そうな顔して、手段を選んでられるのかな、君は?

………はい、毎度あり。

お大事にね。

(バタン)

………

………ふっふっふ。この私が作る薬に間違いなんてあろうことはない。

ちゃんと君の頭も腹も治るだろうさ。

…まあただ、治す代わりにしばらく全身がしびれて動けなくなるんだが、背に腹は代えられるまい。

感謝するといい。

この私にな」




「(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

………

(コンコン)

(バタン)

…いらっしゃい。

…って、君か。

何だ、ずいぶんと汗をかいてるようだな。

修行にでも行った帰りなのかい?

………ふうん。ここのところ毎日じゃないか。

しかも朝から晩まで。

その内体壊しても知らないよ。

………なっ。たまたまだ、たまたま。

私は日がな一日ここに座ってるからな。

窓の前を横切った人物くらい、覚えてても不思議じゃあるまい。

…ふん。わかったならいい。

………それで?修行というと、今度の武闘大会にでも参加するつもりなのかい、君は?

…はあ、やっぱりね。

あんな大きな大会、君のようなポッと出のやつが出ても優勝なんて難しいだろうに。

………挑戦することに意義がある、ね。

まあ、言うだけならたださ。

………ああ、そうだね。頼まれてた品だね。

ちゃんと用意してあるよ。

これを飲めばたちまち元気になれるお薬さ。

これを飲んだうえで鍛えれば、たちまち君は膨大な力が得られるだろう。

…あ、その顔は信じてないな。

疑うのも今のうちだけさ。

日に日に鍛えられていく君の体の変化に、後で君は私の前に頭を下げに来るね。

賭けてもいいさ。

…ああ、この薬を朝と晩に飲めば、たちまち効果を発揮する。

最初は騙されたと思って飲んでみるがいいさ。

結果を楽しみにしてるよ。

(バタン)

………

………ふん。あの薬を飲んで鍛え続ければ、武闘大会で優勝なんて楽勝さ。

一日で倍、次の日で倍、そのまた次の日で筋肉が倍増する薬なのだから。

…まあ、飲むのを辞めた次の日には元通りになっているのだが。

武闘大会で優勝できるのなら、かまわないだろう。

………この私の薬を飲んでいるんだ。

必ずや、優勝を君に」




「(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

………

(コンコン)

………どうぞー。

(バタン)

………やあやあ、君かい。

君も物好きだね。

世界一とはいえこんな辺鄙なところにある薬屋に通うなんて、もしかして暇人なのかい?

…いやいや、私は暇人なんかじゃないぞ。

日々新しい薬を作る研究で手いっぱいだ。

この世に薬の製造を示す本はごまんとあるからな。

それを読み解くだけでも一苦労さ。

薬は何と何を混ぜるかですべてが決する。

薬を作るのに必要なのは技術なのではなく、知識なのさ。

………と、昔も君に言ったような気がするのだがな。

…それで、今日はどうしたんだい?

いつもの暇つぶしか、冷やかしなのかな?

………ふうん。最近眠れないと。

ぐっすり眠れる薬が必要なのか。

…もちろんもちろん。

このお店に置いてない薬なんてないのさ。

………ほら、この薬を飲めばどんなにうるさかろうが

どんな猛獣だろうが、たちまち眠りに落ちる。

…おいおい、疑ってるのか?

今まで私が出した薬に間違いなんてなかっただろう?

この薬もきちんと効果のある薬さ。

………はい、毎度あり。

ゆっくり眠って、休みたまえ。

君は疲れているんだ。休んだって、罰は当たらないと思うよ。

(バタン)

………

そう、君は働き過ぎなんだ。

こんな人里離れた辺鄙なところにあるお店に薬を買いに来るなんて、君は優しすぎる。

いくら過去に町で私が君を助けたからって、そのお礼は十分くらいもらいすぎている。

決して安くない薬を買うのだって、楽ではないだろうに。

だから、あの薬でゆっくりと眠りたまえ。

………あの薬は、飲めば数か月、数年は眠り続けることができる薬。

人によっては、一生ということもあり得る。

私なんかのために、君に無理はさせたくない。

だからあの薬は、君へのお礼さ。

あの薬を作るために、どれだけ材料を集めるのに苦心したか。

この店を担保にしなきゃならないくらいの金額だからね。

………さてさて、あんな借金があるんじゃ、いつまで店が続くのやら。

後悔なんて、していないがね。

店をたたむその日まで、ゆっくりと本でも読んでいようか。

(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)

(ペラ、ペラ)」

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