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017 元恋人からの留守電。彼女からの最期のメッセージの内容は…


「もしもし。

これを聞いてくださっているということは、私はもうこの世にいないでしょう。

私は、この世から立ち去る決断をしました。

おそらく、これを聞いている時はもう、すべてが済んだ後のことでしょう。

私がどうしてそんなことをしようと思ったのか、あなたにその理由がお分かりになりますか?

…あなたと私の出会いは、確か桜が舞う季節のことでしたね。

最初は、ほんの些細なきっけけから私たちは巡り合い、次第に距離を縮め、恋人になるのもそう遅くありませんでした。

あなたと恋人だった時間は、まさに至福の時で、これ以上ない幸せを感じていました。

………ただ、そんな幸せも、そう長くは続きませんでした。

ひょんなことから私たちはすれ違い、離れ離れになり、会う機会もだんだん減っていってしまいました。

それまで幸せな時間を存分に堪能していた分、落差も激しく、落ち込んで泣いてしまった日も数多くあります。

私が死を意識し始めたのは、多分このころだと思います。

ふと気づくと、カッターナイフを握りしめている日々。

実際に手首に当てたことも何度もあります。

知っていますか?血って、思ったよりも赤くはないんですよ。

私は家に引きこもり、食事も満足に摂らず、段々と精神的に追い詰められていきました。

その頃に鏡で見た自分自身の顔は、それはそれはもうひどいものでした。

決してあなたには見せられない顔であり、

あなただけには見られたくない表情です。

家に閉じこもってから数か月、ことあるごとに、私は死を考えるようになりました。

最初はあいまいに、徐々に具体的に、この時には鮮明に。

どうやって、どのように命を散らすか。それだけに時間を費やしていきました。

ただ、死を考える間も、決してあなたのことを忘れたことはありません。

…それも当然でしょうね。

だって、私が死を考えているのは、あなたとの離別が原因なのですから。

あなたと死を一緒に考えることにより、ある意味で、充実した時を過ごしたともいえます。

私の死と、あなたは決して離れることはありません。

私が死ぬのは、あなたがいるからこそなのです。

先程、遺書も用意しました。

当然中身は、大半があなたのことです。


『あなたが好きだから死ぬ』


『あなたと付き合っていたから死ぬ』


『あなたを愛していたから死ぬ』


それはもう、愛のしるしを存分に、書き連ねました。

私があなたに贈る最後のラブレター。

あなたが読んでくれていると嬉しいのだけれど、こればっかりはわかりませんね。

私は、あなたを今でも愛しています。

あなたが私を愛しているかどうかに関わらず、私はいつまでも愛し続けます。

死んでなお、私の愛は途切れないことでしょう。

今日も、明日も、明後日も。

あなたは幸せに生きてください。

私は幸せに死んでいきます。

………そうそう、私はこれから死にますが、決して無駄死にはいたしません。

あなたを洗脳し、私と別れる原因を作ったあの女は、私が一緒に連れていきます。

地獄の底まで共に連れて行き、もうあなたとは金輪際関わらせません。

これは報いなのです。

私とあなたを引き裂いた、あの女の自業自得。

それで心置きなく、あなたは私のことだけを考えてくれますよね?

永遠の時、天命にしたがって、一生一人きりで過ごしますよね?

もしまた、あなたを洗脳するような人間が現れたなら、地獄の底から復活して、あなたから引き離してみせます。

ええ、それは絶対に、ね。

…では、ごきげんよう。

かなうことなら、また来世で会いましょう。

またどこかで、いつか必ず」


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