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169 帰宅したドジっ子お姉さんは閉じ込めておいた彼の部屋に向かうがそこはもぬけの殻で…

「~~~♪

~~~♪

~~~♪

帰ったらあの子が待っている~♪

家に帰ったらあの子に会える~♪

~~~♪

~~~♪

~~~♪

…ふふっ。

昨日の帰り道、まさかあの子が一人で歩いてるなんて、ラッキーだったなあ。

しかも人気のない夜道だなんて。

あれはもう、神様からの天啓に違いなかったよね。

『あの子をお持ち帰りしちゃえ!』っていう。

のんきに歩いてるところを後ろから捕まえて、袋に入れて、そのままお持ち帰り。

あの子は最初結構暴れてたけど、最後には疲れて眠っちゃった。

眠った後にあの子を袋から出して、空いている部屋に閉じ込めた。

…こういう時のために前々から準備だけはしといてよかった。

さすが私。

鍵をかけた部屋に、首輪をつけて、監視カメラもつけて。

これでもうあの子はあの部屋から逃げられない。

一生あのまま、あの部屋に、私の家にいてくれる。

………大好きなあの子と暮らせる日が来るなんて、幸せ。

今日もう、スーパーで奮発していろいろ買っちゃった。

お米に、お肉に、カレールー。

あの子の大好きなメニュー、作ってあげようっと。

~~~♪

~~~♪

~~~♪

(ツルッ…ステンッ)

…いてて。

もう、なんでこんなところにバナナの皮が…

おっと、いけないいけない。

早くあの子の元に帰らなくっちゃ。

―――

―――

―――

(ガチャッ)

ただいまー、っと。

あの子はちゃんと、良い子にしてるかな?

(カチャッ)

………あれっ?

鍵が、空いてる…

はっ!まさか私、閉め忘れてた?

やばいやばいやばいやばいやばい。

いやでも、首輪はちゃんと付けておいたはず。

鎖につないで壁にちゃんと打ち込んだから、あの部屋からは出られない…

(………)

………え?

誰も…いない………?

ねえねえ、どこどこー?

どこに隠れてるの―?

隠れてないで出てきてー?

(………)

(………)

(………)

………あ、首輪。

この首輪、穴が大きい………

あ、そういえば、あの子が痛くないようにって、結構緩めに付けてた…

それで、頭が抜けちゃったってこと………?

………うう。

でもでも、部屋には監視カメラが…

カメラを見れば、いつ出てったのかはわかるはず。

(タッタッ、シュッシュッ)

(タッタッ、シュッシュッ)

(タッタッ、シュッシュッ)

………あれれ?

何だろう、この映像?

白っぽい映像しか映ってない。

ちゃんとカメラは起動してるのに………

………あ、カメラ。間違えてレンズの方を壁に向けちゃってた………

これじゃあ、いつ出てったのかもわからない。

………と、とにかく、きっとまだ、遠くには行ってないはず。

あの子を探さなくちゃっ!」




「………どこー?

ねー。どこにいるのー?

お願いだから、出てきてー。

………

…はあ、はあ、はあ、はあ。

あれから、どのくらい経ったのかな?

ずっと町の中探してるけど、あの子、全然見つからない………

大丈夫かな、何か事故でもあったのかな。

もしものことがあったら、あの子は………

…こうしちゃいられないっ!

もう一回、街の中を回ってみよう!」




「………

………

………

…ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。

………見つ、から、ない…

ど、どこー?

どこにー、いるのー?

出てきて、よー………

(バタン)

………うー。

うわーん。

うわんうわんうわーん!

今日から、あの子と一緒に暮らせるって、楽しみにしてたのに。

大好きなあの子との幸せな生活が始まるって、ドキドキワクワクしてたのに。

その一日目から、あの子がいなくなっちゃうなんて、あんまりだよ………

私はただ、大好きなあの子と一緒にいたいだけなのに。

あの子と一緒にいるだけで、幸せになれるのに。

どうして私はこんなに、不幸になっちゃうんだろう。

ぐすん…

………会いたい。

あの子に会いたい。

大好きなあの子の顔が見たい。

大好きなあの子をぎゅっとしたい。

大好きなあの子のそばにいたい、よ………

(スタ…)

せめて、もう一回。

もう一回だけでも、見たいな。

でも、もう見られないのかな…

(スタスタ…)

これだけ町中を探し回ったんだもん。

きっとあの子はもう、この町にはいなくて………

(スタスタスタスタ)

(ピタ)

………あ、れ…

幻覚、かな。

あの子の顔が、目の前にあるような気がする…

幻覚幻覚。

だって、あの子がこんなところに、いるわけ…

(………)

…え!?本物!?

ほ、本物だあ。

本当の本当に、あの子がいる。

もう、探したんだよー。

(ガシッ)

うわーんうわーん。

見つかって、よかったー。

うわんうわんうわーん。

…でも、どうしてこんなところにいたの?

私、町中をずっと探し回ってたのに。

………え、探していた私をずっと見てたの?

それで、さっき、私の想いを聞いて………

そ、そうなの?

よくわかんないけど、君が出てきてよかったよー。

もう、君に会えないんじゃないかって、不安で不安で苦しくなって、死にたいくらい辛い気持ちだった。

でも今はもう、平気。

君の顔を見たらそんな辛い気持ち、ふっとんじゃた。

………ねえ、帰ろう?

私達のお家に。

君の大好きなカレー作ってあげるから、一緒に食べようよ。

………ご飯を食べるのなら、いい?

やった!

じゃあ早速帰ろう?

ほら、手出して。

手をつないで一緒に帰りましょう!

………

………

………

うーん、だけど。

今度はちゃんと、君が逃げられないようなの、用意しなくっちゃ。

おっきい牢屋みたいのがあれば、君は逃げられないよね?

次はもっともっとすごいのを用意して、君を閉じ込めてあげるから。

だからこれからの未来、ずっとずっと私と一緒だからね」

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