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162 魔王を討伐して世界を平和にした女勇者。長年連れ添った相棒にフラれるとすべてがどうでもよくなって…

「………くらえ魔王!

これが俺様の最終奥義!

ファイナルスターダストエンペラーソード!

(バシシシシシシィィィィィィィィッッッ!)

………

…ハア、ハア、ハア、ハア。

よし、これで終わったな。

俺様の手にかかれば、魔王討伐なんて屁でもないぜ」




「………

………

………

…お、剣士じゃん。何やってんだよこんなところで?

………俺様?

まあ、お前と一緒なんじゃねーの?

世界に平和が戻った祝賀会っつったって、ただのどんちゃん騒ぎしたいだけだからな。

飲むもんは大体飲んだし、ちょっと涼みに、な。

………

………にしても、村を出る時は、まさかお前と魔王を倒すことになるなんて、思ってもみなかったぜ。

ただ村で一番強い二人ってだけで王都に行った時は、まさかこんなに長い旅になるなんて、想像もつかなかった。

………ん?

いやいや、謙遜すんなって。

お前だって十分腕の立つ奴だよ。

…ほら、あいついたじゃん。

魔王の右腕ならぬ左腕って名乗ってった奴。

あいつも剣の技術はすごかったっけど、そんなあいつを倒せたのはお前のおかげみたいなもんだし。

…ま、俺様の剣の腕に比べたら全然かなわねーだろーけど。

………そうだ、久々にやらね?木刀使ったケンカ。

昔だったら五分五分だったけど、今ならお前に圧勝………

…やんねーのかよ、つまんねーやつ。

………いや、そりゃあ魔王がいなくなって世界は平和になったけどさあ。

なんかこう、ギリギリの勝負がしたい時ってあるじゃん?

…えー、ないんだ。

昔は俺様とお前でバチバチやりあってたのに。

………ふーん、平和なら腕を磨く必要は無いってか。

………

………

………

………なあ、ところで、さ。

こーして世界も平和になって、倒すべき奴もいなくなって。

なんつーか…そろそろ、一緒に暮らさね?

村に戻ってのどかに暮らすのもいいし、どっかに新しい家建てて暮らすのでもいいぜ。

あ、そうだ。旅の途中で海の町に行ったことあんじゃん。

あそこの海見ながら暮らすのもいいんじゃね?

………

…あ?おい。今なんつった?

………は?魔術師と結婚する?お前が?

いやいや、なんでいつも塩対応の魔術師がお前なんか………

…へー。魔術師からアプローチされて、ね。

全然、気付かなかったわー。

………あっそ。

じゃあなー。

………

(スタスタスタ…)

ついてくんな。一人にしといてくれ。

………

………

………」




「(なんで。

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。

ずっと一緒に戦ってきた相棒なのに。

パートナーなのに。

子供のから一緒で、

ずっとお互いの剣の腕を磨いてきて、

色んな敵を倒してきたのに。

あいつの隣にいるのは、私のはずなのに。

私だけが、あいつの隣にいていいはずなのに。

これからもずっと一緒だって、思ってたのに。

なんでなんでなんでなんでなんで。

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。

なんでなんでなんで。

なんで。

なんで)」




「(ドタドタドタドタドタドタ)

(ガシャンッ!)

………なんだよ、こんな夜中に騒々しい。

気持ちよく寝てる俺様を起こすなんて無法の輩は一体………おー、剣士じゃん剣士じゃん。

久しぶり久しぶり。

…あー、えー、かれこれ10年くらいか。

いやー、マジで懐かしいなー。

ここにやってくるのはお前が最初だって思ってたけど、まさかこんなに早くやってくるなんて、俺様思いもよらなかったぜ。

10年ぶりの再会、旧交でも深めて………

(スパッ)

………って、なんだよその剣は、物騒だな。

俺様とお前の仲じゃん。

少しくらい話したっていいだろ?

(スチャッ…)

で、どうよお前?

この10年で何かあった?

………へー、子供生まれたんだ、よかったじゃん。

やっぱあの魔術師との子供かな?違うのかな。

俺様はまあ、見ての通り………


魔王やってるって、感じ。


………いやいや、人間の手のひら返しったら容赦ないよな。

ちょっと前まで魔王討伐の英雄として祭り上げられたのに、今じゃもう魔王の再来とかで恐怖の対象になっている。

頭の中のどこでどう切り替えができるのか、本当に不思議だよ。

………え?いや別に?

魔王なんて名乗りたくて名乗りたくてやってるわけじゃないけど?

ただまあ、魔王倒した後、色々やなことがあってむしゃくしゃして、老若男女、誰彼ところかまわず、切ったはったばっさばっさやってたわけよ。

………あー、その頃からお前、俺様探してたんだ?

ただまあ、その頃魔王の元右腕って奴が現れてさ。

…そーそー、そうなんだよ。

俺様も絶対あいつ倒したと思ってたんだけどさ、髪の毛だが指の一部が残ってたか何だかで、復活してたんだって。

…で、その魔王の元右腕のやつに『魔王様!』とか言われて俺様の下僕になるって言われてさ。

いやまあ俺様も、立ち向かってきたり刃向かって来たり顔を見たら逃げるようなら切り倒したくなるんだけど、開口一番そんなこと言われた日には、剣向けるのも忍びなくてさ。

そんな魔王の元右腕、いやまあ今は俺様の右腕なんだけど、そいつの話に適当にうんうんうなずいていたら、あっという間に世界に残ってた魔物を集めてきてたさ、『我らが復活の魔王軍だ!』とか騒ぎ始めたんだよね。

まあ別にそこで切ってやってもよかったんだけど、ぶっちゃけどうでもよくてほっといたら、あれよあれよの内に魔王に担ぎ上げられてたってわけ。

あれだね。魔王って別に、魔物じゃなくてもいいだねって初めて知ったよ。

そう言えば確か、俺が倒した魔王も、元人間とかって言ったっけ?

どうでもいいけど。

………で、そんなお前は俺様のことを新しい魔王として、討伐しに来たわけ?

…ふーん、やっぱりそうなんだ。

じゃ、まあやろうか。

(シャキン)

………言ったろ?刃向かってくる奴には切ったはったするって。

それじゃあ、よーい、始め。

―――

―――

―――

―――

―――

………はっは!

何だよ、床に這いつくばっちゃって。

おいおい、俺様としのぎを削ってきたお前がここまで弱いなんて、思ってもみなかったぜ。

圧勝も圧勝、俺様の完全勝利。

…まあでも、こうなって当然だろ。

前の魔王を倒した後、平和な世界になってお前は剣の腕を磨くのをやめた。

対して俺様は、感情の赴くままに剣をふるい続けた。

この10年で、いろんな奴と戦ってきたからな。

魔王って言われるようになってからだって、魔物の中でも俺様の寝首をかかんとする奴はごまんといたし。

この10年の差が、今の俺様とお前の差だよ。

………ん?

ああ、べつに。お前のことは殺さないよ?

だって俺様、お前のこと愛してるもん。

愛してる奴のことなんて、普通殺さないだろ?

………ただまあ、お前以外のやつは何もかもどうでもいい。

俺様の思いが届かなくて、

『私の』思いが届かなくて。

全て、どうでもよくなった。

だから後のことはむしゃくしゃしてやった気の迷い。

人間が全滅したってどうでもいい。

世界が滅んだってどうでもいい。

俺様がいなくなったってどうでもいい。

………ただまあ、あの夜にお前が俺様を受け入れてくれたら、こうはならなかったのかもしんねーな。

ま、今となってはたらればだけど。

じゃ、これからは俺の隣で見ていてくれよ。

お前にふられた腹いせに、お前のせいで、世界が滅んでいく様子をさ」

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