156 お隣のお姉さんが出すゴミはいつも多くて大変そう
「………あっ。おはようございます。
今日もいい天気ですよね。
…ゴミ出しですか?
………はい、うちもです。
もう、この町ってゴミ出せる日少ないですよね。
月曜日と、火曜日と、木曜日。
おかげで一回出すの忘れるとすぐに溜まってきちゃうんですよね。
(ガサガサ)
………えー、そうですそうです。このくらいのごみ出ますって。
…にしても、そっちのゴミは少ないですね。
一人暮らしでも、出るものは結構出るんじゃないですか?
(カランカラン)
…あっ。それ缶じゃないですか。
ダメですよ。今日は燃えるゴミの日なんですから。
空き缶は、ビン・缶の日に出さなくちゃいけませんよ
?
………って、いろんなゴミが混ざっちゃってるじゃないですか。
こういうの、ちゃんと分別しないと後で怒られても知りませんよ?
………いや、見てる人は結構見てますよ?
だから、後で誰が出したかっていうのは、案外わかるものです。
業者だって、違うゴミは処分できないんですから、それくらいの対策はしてますって。
私今ちょうどビニール袋あるんで、燃えるゴミだけ分けちゃいましょう?
………いいですよ。
お隣さんのよしみというやつです。
あー、でも、そろそろ収集車来ちゃいますよね。
じゃ、ちゃっちゃっとやっちゃいますか。
………
………
………
………ふー、これでよしと。
ダメじゃないですか、空き缶だけじゃなくて、燃えないゴミまで一緒に混ぜちゃって。
これからはちゃんとしなくちゃダメですよ?
私との約束です。
はい、ゆびき………
(~~~♪)
あっ、電話…
いいですよ、出ても。
何なら、出す方のゴミは私の方で出しておきますから。
………いえいえ、お気になさらず。
(………)
………
………
………
………また、邪魔者ね」
「(ドタドタドタドタドタ)
あーっ!待って待って待ってー!
あー………行っちゃった。
はあ………
………
………
………
………って、お隣さん。
やだやだ、変なとこ見られちゃったわね。
………うん、そうなの。
このゴミ出そうと思ったんだけど、つい時間忘れてて。
ご覧の通りちょうど収集車が行っちゃったところ。
…というか、お隣さんもゴミ出し?
そっちは出せたのね。
いーなー。タッチの差で出せなかったー。
………いえいえ、お隣さんは私がゴミ出してないのなんて知らないんだから、止めるも何もないでしょ。
気にしないで。今のは運が悪い自分を自虐しているだけだから。
………ところで、今日はお出かけ?
よそ行きって感じの服してるけど。
………へー、デート………
そうだよねー、お隣さんくらいの人だと、デートする人の一人や二人、いるものよね。
…ううん。別に、怒ってませんよー。
デートくらい、行って来ればいいじゃない。
隣に住んでるからって、それを止める権利なんてないもの。
………あ、ほら、ネクタイ曲がってるわよ?
(ギュッ、ギュッ)
…はい、これでよし。
………え、きつい?
デートなんだったら、きついくらいがちょうどいいの。
ゆるゆるのネクタイなんて見たら、相手も幻滅するわよ。
(………ま、そっちの方が良いんだけど)
…ううん。何も言ってないわ。
………何も言ってないったら。もう、繰り返し聞かないで。
(プップー!)
あ、車。
…もしかして、あなた呼んでるんじゃない、あれ?
(プップー!)
そう、あれが今日の………
行ってらっしゃい。
デート、楽しめると良いわね。
………
………
………
………ナンバー、覚えておかなくちゃ。
泥棒猫の、車だしね」
「………ふわぁ………あ。
うーん、眠いわー…
ちょーと、夜更かししすぎちゃったかしらね。
………よいしょっと。
うん、これでよしと。
………
…あっ、お隣さん。おはようござ………
ってやだ!恥ずかしい、こんな格好。
…うー、ごめんなさい。こんなあられもない格好で………
いやいや、シャツとジャージズボンだけっていうのは十分あられもないの!
しかもこんなよれよれのやつ………
あー、もうなんで、こんな格好で出てきちゃったのかなー、私。
どうして人に見られるってことを考えなかったのかしら………
うーうーうーうー………
………
…もう、やめてよ。お世辞でもそんなこと。
こんなだらしない格好見て、普段の生活もだらしないって思っちゃうんでしょ?
………まあ確かに、昨日は遅くまで夜更かしするくらい、だらしないんだけど…
…うん、ありがとう。フォローしてくれて。
そんなあなただから………
………ううん。何でもないわ。
………それ、今日のゴミ?
そ、じゃあ貸して。
(ポンッ)
よし、これでオッケー。
…え、別に?全然全然。
今のゴミ、かなり軽かったじゃない。
あれくらいの重さ、上に乗せるのわけないわよ。
それに比べたら、私のゴミなんか結構重さあるからね。
ちょっと持ってみる?
………でしょう?
このゴミ袋3つも持ってきちゃったから、家からここまで来るのも一苦労よ。
………もう、何が入ってるかなんて聞かないでよ、恥ずかしい。
ただのゴミよ、ゴミ。
ゴミ以外の何でもないわ。
あなたのだってそうでしょ?
………そうそう、だからこの話はこれでおしまい。
………
…ん、何?聞きたいことって?
昨日の夜?
あー、そういえば、昨日夜あなた帰ってくるの遅かったわよね…
………違う違う!
夜たまたま、たまたま家の電気ついてないのが見えただけ!
もう、変に勘繰らないでよ………
それで、あなたの家に誰か来なかったか見なかったって?
…さあ、どうかしら?
私は、気付かなかったかなー………
………ふんふん。へー、妹さんが…
まあ来なかったのなら、急に予定が入ったとかなんかじゃない、きっと。
………あ、電話もつながらないの。
それは確かにちょっと心配ねー。
でも、大丈夫なんじゃないかしら?
妹さんも高校生なんだし、たまには一人になりたい時だってあるのよ、きっと。
………え?あー、妹さんのことね、妹さんのこと。
………そうそう、前にあなたが話してくれたんじゃない。そういう妹さんがいるって、私聞いたの。
だから妹さんのことも知ってるのよ。
…あ、これから警察に………
でも、大丈夫なんじゃないかしら。
高校生くらいの子が、一日二日、どこかに行くってよくあることよ?
………そう、そんなに妹さんのことが。
…ううん。私の方こそごめんなさい。変に引き留めちゃって。
妹さん、見つかるといいわね。
………ええ、ええ。
いってらっしゃい。
………
………
………
………警察行っても、無駄なのに…
しっかし、どうしてこうして、あの人の周りには、いろんなゴミがまとわりついてるのかしらね?
ゴミならゴミらしくゴミ相応にしていればいいのに、ゴミじゃなくなろうとするから、本当、手がかかるわ。
あの妹さんも、本当にゴミだった。
高校生にもなって兄に甘えて訪ねてくるとか、ブラコンが過ぎるんじゃないかしら。
あんなゴミは、あの人にはふさわしくありません。
だから、ゴミはゴミらしくゴミ相応に処分しないと。
(ガサガサ)
今頃警察に行ったって、もう見つからないだろうに、ね。
………
…あ、収集車さん。
ゴミの回収、お疲れ様です。
いやー、今日もこんなに多くて、本当にご苦労様ですよ。
毎回毎回、ゴミの処分お疲れ様です。
今日もゴミの回収、よろしくお願いしますね」
 




