147 ある動画配信者のファンである彼女。いつも応援している彼女だが彼が配信をやめてしまうと…
「~~~♪
~~~♪
~~~♪
………あ、そろそろ時間だ。
(カチカチカチカチ)
…なんか重大発表あるって言ってたけど、なんなんだろ?
………
…ん、始まった。
(………)
(………)
(………)
ふふっ、オープニングは相変わらずだなー。
ホント、バカバカしい。
(………)
ん、重大発表だ。
…んー、何かな?
この前は禁煙解除だったし、その前は脱ダイエットだったし、今日は、節約生活やめるとかかな?
(………)
(………)
(………)
………え?
(………)
(………)
(………)
…え、いや、そんな………
(………)
(………)
(………)
………もう終わらせるって、そ、そんな、ダメだよ。
(カチャカチャカチャカチャ)
『配信やめないで。』
(………)
(………)
(………)
『配信やめないで。』
『配信やめないで。』
(………)
(………)
(………)
『配信やめないで。』
『配信やめないで。』
『配信やめないで。』
(………)
(………)
(………)
そんな………
みんなの評価なんて、気にすることないじゃん。
あなたは、あなたの思うとおりにやってればいいんだって。
少なくともここに一人、あなたの動画を楽しみしてる人がいるんだよ?
(………)
(………)
(………)
………あ、あ。あ………
(………)
(………)
(………プツッ)
…終わっちゃ…った………
………
………
………
…本当に、終わりなの?」
「(カチカチカチカチ)
今日もアップはなし、か………」
「(カチカチカチカチ)
何にも、変わらない………」
「(カチカチカチカチ)
ずっと、同じ………」
「(カチカチカチカチ)
…………………………」
「(カチカチカチカチ)
……………………………………………………」
「(カチカチカチカチ)
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「~~~♪
~~~♪
~~~♪
(コポコポコポコポ)
お茶オーケー。
(パサッ)
お菓子オーケー。
よし、行こう。
(スタスタスタスタ)
(カチャッ)
………ちょっと休憩にしたら?お茶、淹れてきたよ。
………
…それでどう?動画制作の方は、進んでる?
………って、全然進んでないじゃない。
数時間前に来た時と画面変わってないし。
前は一日二日で動画一本とか余裕だったんでしょ?
なのになんで最近は全然進んでないの?
この部屋の機材、全部あなたのために用意したんだよ?
カメラにマイクに、パソコンにゲーム機。
私はあんまりよくわかんないけど、どれもすっごく高くてすっごく高性能なんだよね?
前に配信で機材買うお金がないって言ってたけど、これ以上の撮影機材はないと思うんだけど。
…それとも、ネタがないとか?
そっちにしても、いろんな人の意見が入ったアンケート結果、渡したよね?
私ちょっと仕事のつてがあってそういうの用意できるんだけどさ、もっと他のアンケートを用意した方が良いのかな?
(………)
………えー、それ噓でしょ?
外で撮影がしたいなんてさ。
前もそうやって嘘ついて、私から逃げ出そうとしたの、忘れたと思ってるの?
まあ、外に出てる時はこっそり監視を付けてあるから、逃げるなんていうのは無理なんだけどね。
………もう一度言ってあげようか?
あなたは私のために、ここで動画制作をしてくれればいいの。
動画制作に必要なものは全部揃えてあげるし、動画制作してれば衣食住は満足に与えてあげる。
動画配信者として、これからずっと生きていけるんだよ?
それが夢だって、あなたは言ってたじゃない。
(………)
…ううん。再生数なんてどうでもいいの。
あなたの配信や、あなたの作った動画は、私の胸に刺さった。
例え再生数が数百そこらだって、みんなあなたの良さがわからないだけなの。
でも、私だけはあなたの良さを知っている。
私だけは、あなたの動画の価値を知っている。
世界で私だけが、あなたの動画が好きなの。
他の人のためになんか作らなくたっていい。
私のためだけに、あなたに動画を作って欲しいの。
あなたの配信で、私は救われたんだから。
(ジャラッ)
………ほら、早く作業進めてね?
もし、作業が進まないんだっていうなら…
(ジャラジャラジャラジャラ)
この首輪、もっともっと、きつくしちゃうからね?
………それじゃあ、お茶とお菓子置いていくから、頑張ってね。
私は、あなたのファンなんだから。
ファンの期待に、きちんと応えてよね」




