143 愛と正義の魔法少女が犯したたった一つの過ちとは…
「(シュタッ)
出たわね。ブラックビター団。
街の皆をこんなにも傷つけて…
今日という日は許さない。
私達、正義の魔法少女があなた達を倒してみせる!」
「………ケホ、ケホ。
っち。
今日もまた逃げられちゃったわね。
ったく、あいつら逃げ足だけは速いんだから…
………さて、私もそろそろ帰らないと。
変身を解除してっと…
(~~~♪)
…ふう、いつもの姿の方がやっぱり落ち着くわ…
(ガタッ)
えっ?誰?
…あなたは確か………
………
…う、うん。そうなの。
私が、この街の平和を守っていた魔法少女なの………
…ねえ、お願い。
私が魔法少女だってことは、誰にも言わないで。
もし正体がバレっちゃら、私…
………
…そう。ありがとう。
じゃあまた明日、学校でね。
バイバイ」
「(ガラッ)
…もう、それでさー。もうホントやんなっちゃってね。
………
…あ、昨日の………
うん、おはよう。
………
…ちょちょちょ、ちょっと!
君、ちょっとこっち来て!
(ズンズンズンズン)
(ズンズンズンズン)
(ズンズンズンズン)
…ふう。ここなら誰も来ないかな………
それで君さ。
私が魔法少女だってことは秘密だって言ったじゃない!
なのにどうして教室でそのことを話そうとするのよ!
………『ついうかっり』って、もう。
ならいいけど。
でも、今度からは気を付けてよね。
本当は誰にもバレちゃいけないんだから。
君にバレちゃったのはたまたまなんだから、絶対絶対、他の人に言っちゃりしちゃだめだよ?
いくら同じクラスだからって、話していいこと悪いことがあるの。
わかった?
………
…ならよろしい」
「………くっ!
ブラックビター団め。なんていうロボットを開発してきたの…
私達の攻撃が当たらない………
どうすれば…
………あ、手からビームが。
みんな、逃げて!
(ガッシャーン!)
…君、大丈夫?小さい子を庇って………
あ!腕から血が………
………
…許さない。
覚悟しなさい!ブラックビター団!
この私を怒らせたら、ただじゃおかないんだから!」
「…なんだろう、この手紙?
………え?
『彼のことは預かった。
返してほしければ取返しに来い』
………そんな…彼が、人質に………
…ううん。うつむいてる暇なんてない。
私は、正義の魔法少女。
絶対に助け助け出してみせる!
彼に指一本でも触れたらどうなるか………
わかってるわね、ブラックビター団!」
「………ハァ、ハァ…
なんて、強さなの………
今までの相手の比じゃない…
ブラックビター団四天王幹部。
まさか、こんなに強いなんて………
………でも、何があろうと、私達は絶対にあきらめない。
…だって私達は、魔法少女なんだから!
(ボワン)
………あ、また、触手攻撃が…
………え?
(バチンッ!)
………なんで、君がここに…
私を、庇って………
………え?
『困ってる時は、お互いさま』って…
でもだからって、こんな………
………
………
………
…私の大切な人を………
………
…ブラックビター団。
あなたは、私を怒らせた。
この傷ついた思い…百倍にして返してあげるわ!」
「(ガラッ)
………ねえ、怪我はどう?
…『大丈夫』って、あちこち怪我してここに入院してるのに説得力ないよ………
………
………ごめんね。私のせいで、君がこんな目に………
…ううん。気にするって。
もし君が私の正体を知らなかったら、小さい子を庇って怪我することも、ブラックビター団に誘拐されることも、触手に当たって入院することもなかった。
…どうして、君はそんなことまでできるの?
………
…そっか、優しいんだね、君は。
人間よりもずっとずっと強い魔法少女を、こんなにも心配してくれるなんて………
…え?
………そう。
私を、魔法少女じゃなくて一人の人間って思ってくれてるんだ………
………そっか。そうなんだね。
だから私は、君のことを…
………ううん。なんでもない。
とりあえず、その怪我は早く治さなきゃだめだよ。
また、君と同じ教室で話すの、楽しみにしてるから。
…うん。そう、だね。
君と話すのは、楽しいから………
…それじゃあねっ!
(ガラガラ)
(タッタッタッタッ)」
「(タッタッタッタッ)
………はー、よかった。
思ったよりも大きな怪我じゃなくって。
まさか私を庇ってくれるなんて、夢にも思わなかったな。
………
………
………
………私が、魔法少女であること。
本当に、私の正体が彼にバレてよかったな。
「魔法少女は他の人に正体がバレてはならない」
そういうルールがあるから、変身の際はいつも気を付けていた。
でもあの日、あの時。
彼が背後にいることがわかっていながら、私は変身を解除した。
「魔法少女は他の人に正体がバレてはならない」
でもそれ以上に、彼に隠し事をしたくなかった。
本当の私を見て欲しかった。
魔法少女であることを。
そして、一人の人間であることを。
彼には、わかってほしかった。
だから私は、彼の目の前で変身を解除した。
私の大好きな男の子の前で。
好きな人相手に、秘密を抱えてるのは、よくないことだもん。
まあそれで、今回みたいな目に遭っちゃったわけだけど、でも彼は今、そんな私のことを見てくれている。
魔法少女の私を。
一人の人間である私を。
本当の本当に、正体がバレてよかった。
もし正体がバレてなかったら、ここまで仲良くなるなんてことできなかったしね。
ただのクラスメイトのまま、何の関わりも持てなかったかもしれない。
ただの片思いのまま終わってたかもね。
でも、今は違う。
これからもどんどん彼とは仲良くなれるかな?
私が魔法少女であることを知っているのは彼だけだから、色々相談したりもできるかもしれない。
私達二人は、永遠の友達でいようね?
………
………
………
………え、ブラックビター団の襲撃?
もう、性懲りもなくあいつらは………
私は愛と正義の魔法少女。
この街の平和は、魔法少女の私が守ってみせる!」




