表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/268

014 勇者を手に入れたいヒーラーは、禁断の相手と取引をして…

「ヒール。

これで勇者のHPが回復、っと…

おーい、回復したから戻って大丈夫だぞー。

…ん。行った行った。

相変わらずあんな大剣、よく振り回せるもんだよなー。

それでいてスピードは獣人族に劣らないんだから、ホント、選ばれし勇者様。

………

ん、おかえりー、魔物全滅お疲れー。勇者含めて、みんな強いよねー。

…ん、私のヒールのおかげ?

べっつにー、私はただあんたたちの後ろで杖振り回してるだけだし、大したことしてないっつーの。

…それでも私がいないとダメ?

…あっそ。ま、あんたにそう言われるのもやぶさかでもなくないし………なんでもない。

で? これからどうするー?

今日はもう暗いし、レベル上げもそろそろ切り上げる感じ?

ん。じゃあそろそろ宿に戻ろうか。

…それにしても、私たちずいぶんレベル上がったよねー。

あんたも最初に会った時はあんなへなちょこだったくせに、ずいぶんガタイもよくなってさ。

ヒーラーのあたしとは大違い。

…別に、私の魔力なんてそんなすごくないって。

そりゃあんたよりは高いかもしれないけど、他の魔女とか賢者様に比べたら全然だって。

所詮、生まれつき両親から受け継いだだけで、あんたたちと出会うまで努力とか鍛錬とか全然しなかったからね。

地力の差が違うんだよ、勇者であるあんたとはね。

…だから全然すごくないっつーの。

ほら、バカなこと言ってないでさっさと宿戻るよ。今日はもう疲れちゃったし。

………

…急に褒めんなっつーの、バカ」




「…って、どこいった? 勇者のやつ。

軍師が魔王との闘いに向けて作戦会議するっつってんのに、どこほっつき歩いてんだか。

………

ん、いたいた。

おーい………って。

…あれは、勇者と姫騎士?

そういえば姫騎士もまだ来てなかったような…

何こそこそしてるんだろう?ずいぶん親しげに話しちゃって。

…ん、勇者が何か渡してる。

あれは…指輪?

姫騎士は、嬉しそうに受け取って…

………

ふーん………

最初の街からずっと一緒だったしね、あの二人。

いつだって、勇者の隣にいるのはあいつで。

街を歩いている時も、ダンジョンにいる時も、魔族と戦っている時も………

そうだよ…私は何を夢見て…

…私が、あの二人に割って入るなんて………

(ガタッ)

ヤバッ。

早くここから離れないと…

(タッタッタッタ)」




「ヒール!ヒール!ヒール!

…ほら、これで三人とも回復!

早く戻って!

…さすがラスボス、魔王。

切っても殴っても魔法当たってもHPがほとんど減らない…

しかも周りでアンデット族の配下が倒しても倒しても復活する…

ん…姫騎士だ。

ヒール!

OK!HP減ったらまた戻ってきて!

…でも、こっちは何とか勇者を中心としたコンビネーションで配下を退けつつ、少しずつだけど魔王のHPを削っていく…

さすがの勇者様とその御一行様だねー。

最初はたくさんあった魔王のHPも、あと残りわずかか…

………

魔王を倒せば世界に平和が訪れる。

平和が訪れれば、勇者は…私の勇者は…

………

だから、ごめんね。


ヒール!


…ん、これで魔王のHPが全回復っと。

せっかくぎりぎりまで追い詰めたのに、残念だったねー。

うわ、みんな驚いた顔してこっち見てるし。

ま、そりゃそうか。

…んー?何で魔王のHPを回復したかって?

それが魔王との取引だったからねー。

ギリギリになってから魔王のHPを回復すれば、メンタル的にギリギリの勇者たちに反撃の目はない。

しかもヒーラーのあたしが裏切ったりしたら、HPの回復だっておぼつかない。

魔王の勝利は確定だってわけ。

…ん?魔王に寝返ったのかって?

いやいや、寝返ってなんかないって。言ったでしょ取引だって。

魔王のHPを回復してあげる代わりに、魔王から対価をもらうことになってるの。

…知ってるでしょ、魔王が得意とする古代魔術。

魔王はこれまで幾度となく過去の勇者達に倒されてきたけど、その魂と器を異次元の空間に移して長い時間をかけて回復し、その後再び世界に復活する。

異次元空間は魔王以外にゲートを開くことはできない。

だからこそ魔王を倒すことはできても、復活を妨げることは不可能だった…

対価っていうのはね、その異次元空間に、私と勇者を閉じ込めるっていうことなんだ。

その異次元空間を魔王が使うことはできなくなるけど、魔王に対抗できる勇者をその中に取り込めば、世界は魔王の思うがままになるってわけ。

…どうしてそんな取引をしたか?

…なに?わかんないの?

それはもちろん、勇者と永遠に二人きりになれるからだよ。

異次元空間は、文字通りの異次元。

魔王がそのままゲートを開かなければ、ずっと私は勇者と二人でいられる…

永遠に、二人きり。

私は、勇者さえいれば他に何もいらないの。

軍師も、魔女も、賢者も……姫騎士も、ね。

だから、一緒に行こう?

二人だけの世界に」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ