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138 悪逆非道な魔王の右腕たる女幹部は、魔王に仕える傍ら一計を案じて…

「(ガチャンッ!)

魔王様、ご報告です。

王国の騎士団達が城の周りで交戦しております。

大量の国王軍で攻め立てているようで、配下の魔物達で応戦していますが、今の軍力では、制圧に時間がかかるとのことです。

彼奴等を全滅せんとするなら、別軍の魔物達の投入を………

…しなくていい?

もちろん、我が魔王軍が負けることなどあり得ませんが、早く鎮圧して被害を抑えるのであれば、早期の判断を………

………陽動?

それは一体………

(ガチャンッ!)

…なんだお前達、今私が魔王様にご報告をしているところで………

なっ!?勇者達が、城の上空に!?

………なるほど、さすが魔王様。

下の騎士団達はこのための囮、というわけですか。

確かに、地上からこの部屋に来るまでには相当な距離がありますが、空の上からならあっという間にこの部屋にまで辿り着ける。

勇者が考えそうなことですね。

魔王様がそう予期しておいでということは、その対抗策もすでに………

(ガチャンッ!)

…報告か?

………

………そうか、勇者達一行を捕らえた、と。

さすがですね、魔王様。

一体どのようにして勇者達を罠にはめたのですか?

………なるほど、魔力封じの宝石ですか。

確かに魔力封じの宝石があれば、あいつらに魔法を使うすべはない。

魔法を使わずに、我が魔王軍の大軍をすべて倒しきることなど不可能。

しかも魔法による回復もできないのだから、全滅の一途をたどったと。

魔力は魔族の力の根源たる力のため、魔力封じの宝石は魔族にとって天敵ですが、その力を逆に利用しようとは。

勇者達の行動をすべて読み切った上での策略、お見事です。

………目的のために手段を選ばない魔王様の手腕には恐れ入ります。

それで、勇者たちはどのような処遇にいたしましょうか?

………なるほど。

では、勇者達の拷問は、この私にお任せください、魔王様。

必ずや、魔王様の期待に応えて見せましょう」




「………おい、これはどういうことだ?

どうしてこれっぽっちの金銀しか集まらない?

人族の税分はもっともっとあるはずだろう?

この役立たずが!

この役立たずが!

この役立たずが!

………

………あ、魔王様。

あ、いえ、これは、人族に課した税の金銀なのですが、本来の量よりも少なくなっていまして。

ほら、お前達も土下座して謝れ。

お前達が集めてこないから足りないんだろうが!

………

…しかし魔王様。

恐れ入りますが、さすがに一人一人の税分の負担が多くないでしょうか?

人族の中には貯えを隠しているものも少なからずいるでしょうが、大半の人族は奴隷の如きの稼ぎしかなく、とてもではないですが払えない者が大量に出てきてしまいまして………

………

………

………

…そうですか。

確かに税が払えないとなれば、その分人族は罰を受ける。

罰を恐れた人族は何としても税分を揃えようとする。

それこそ、盗みや殺しをしてでも。

そうやって貯えを持っているものはどんどん狙われていて、その財産を奪われていく。

そして奪った財産によって、我々に税分が支払われていく。

故に我々の下に富が集まってくるというわけですね。

私のような浅はかな思慮で意見を申し立てて申し訳ありません、魔王様。

このような人族を虫けらとも思わない非情なやり方、さすが魔王様です。

………

…おい、お前達、何をぐずぐずしている。

今聞いただろう?

払えない奴はそうやって集めさせるんだよ。

ほら、さっさと行って足りない分を人族からぶん捕ってこないか!

早く行け!

………

大変お騒がせしました。魔王様」




「………

何をしておいでなのですか、魔王様?

こんな血だまりの中で、お召し物が汚れてしまっています。

…おや、そこにいるはヴァンパイアですか。

ふむ、もう息はしていないようですね。

そのヴァンパイアが何かやらかしたのでしょうか?

………ほう、同じヴァンパイアの眷属を集めて魔王様に反乱を企てていたのですか。

なんとまあ無謀なことを。

どれだけの軍力があろうと、魔王様の身にかなうはずがないのに、浅はかな奴ですね。

先日のオークといいその前のゴブリンといい、身の程知らずの気が知れません。

………はい?私ですか?

もちろん私は、魔王様に身も心も全て捧げる所存………

―――と、いうことはありませんが。

(~~~♪)

…動けませんか?動けるはずありませんよね、魔王様?

今、魔王様の周囲を囲っているのは、魔力封じの宝石でできた牢屋です。

魔族の力の源は魔力。

魔力から魔族は生まれ、魔力の力によって成長する。

その魔力が封じられてしまえば、力を発揮することはおろか息をすることさえできなくなる。

………ええ、もちろん。

勇者程度の魔力なら数個の宝石で封じられますが、しかし魔王様の魔力となると、10や100、1000個でも足りませんか。

ですので、その牢屋には一億個の宝石を使っております。

………はい。

魔力封じの宝石は、1000の命と引き換えに作られるもの。

なので私は、ありとあらゆる命という命を使ってそれだけの宝石を作り出しました。

魔族人族それ以外の生命かまわずに、ね。

目的のためには手段を選ばない。

どんな相手にも非情にことをはぐくむ。

私の計略はすべて、魔王様の教えによるものです。

………はい?目的ですか?

いえいえ、私は魔王様の地位などにはこれっぽっちも興味はありません。

そこのヴァンパイアのような愚行など持ち合わせておりませんよ。

私の目的は…


あなたです。魔王様。


長年魔王様にお仕えしまして、魔王様の手腕に触れ、計略に触れ、謀略に触れ。

なんと勇ましいお方だと思いました。

そして次第に、魔王様を私のものにしたい。私だけのものにしたい。

他の全てをなくしてでも、魔王様を私のものにする。

魔王様こそ、私の将来の伴侶にふさわしい。

そう、思ったのです。

仕えるだけではない。

魔王様と対等になってこそ、魔王様の隣に立つ者といえる。

もちろん、その牢屋に入れたからといって、魔王様をどうこうする気はありません。

ただその中で、私の愛を受け取ってくださればよいのです。

この世界の征服も継続いたします。

魔王様がそこに入っているということ以外は、何も変わりません。

まあしかし…

私の伴侶となるお方として、それ相応の振る舞いは求めますがね。

魔王様。これから永久の間、私と一緒に世界を征服いたしましょう。

私はそのお傍で、魔王様に永遠の愛を捧げていきます」

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