136 男勝りの幼馴染。ツーカーの関係で永遠の友情を築いていると僕は思っていたが…
「(ダン、ダン、ダン、ダン)
(タッタッタッタッ)
(シュッ)
………ナイスパー。
で、よっと。
(シュッ………ストン)
っしゃ、スリー!
………
(タッタッタッタッ)
(バシッ)
…カット、で。
(シュッ)
任せた。
(シュッ………ストン)
イエーイ!ナイッシュー!」
「………あー、勝った勝った。
32対16。今日も圧勝だったな。
オレ達2人にバスケで敵う奴なんて、いないんじゃねーの?
…まあそりゃあただのサークルだけどさ、やっぱ勝つのは気持ちいいじゃん。
お前だってそうだろ?
………だよな!
いやでも、オレ達ってマジ強いんじゃねー?
お前と二人でバスケして、負けるの想像つかねーもん。
………そうだな。
確かに、オレ達のコンビネーションに圧倒されてたもんな、今日の相手。
でも、そんなスゲーことやってることわけじゃねーけど。
オレはお前のやりたいことを読んでプレーして。
お前はオレのやりたいことを読んでプレーする。
ただそれだけっつーのにな。
………いやまあ、確かにお前以外とコンビ組んでやってもできねーけど。
長年親しんだツレだからこそわかるっつーやつ?
でもま、小さい頃から一緒なんだから、そんくらいお互いの考えてること、すぐわかって当然だろ。
………えっ。ああいいぜ。
お前が今何を考えているか。
それは………
腹が減ってるからハンバーガー食いたい、だろ?
ハッハッハッ!
やっぱり正解じゃーん。
で、ダブルのハンバーガーにナゲットも食いたい、と。
………だと思った。
それじゃ、いつもんとこいこーぜー」
「………いっただっきまーす。
(ガブリ)
…はー。やっぱ運動の後のメシは超うめーわ―。
………あー?
別に太らねーっつーの。
オレの体重60キロ以上になったことねーの、お前だって知ってるだろ?
逆にお前はちょっと運動怠けるとすぐ太るよな。
小学校の時に一回、中学校の時二回、高校の時も確か一回腹めっちゃ出てた時あったよな。
デブってほどじゃねーけど、マジでぽっちゃり出てて、あん時のお前の腹の叩き具合、たまらなかった。
…さて、どうだか。
でもま、最近そんなに食ってねーし身体動かしてるし、大丈夫なんじゃね?
別にオレはお前が太ってようが瘦せてよーがどうでもいいけど。
………いや、どうでもいいっつーの。
お前の見た目がいくら変わろうと、お前の中身が変わるわけでもねーし。
お前のことは俺が一番わかってるからな。
お前だって、お前の見てくれでオレでお前とつるんでるんじゃないことくらい、わかってるだろ?
………だよなー。
(ストン)
…ん、サンキュー。
………えー、別にいいじゃん、チーズバーガーにマスタードかけたって。
味変だよ味変。
つかお前だって、わかって渡してきたんじゃん。
それ言うならお前だって…ほい。
(ストン)
ナゲットに醤油かけるだろ?
人のこと言えねーじゃん。
………えー、いや、そりゃ悪くはねーだろうけどさ、ナゲットに醤油は…
(パク)
あ、ほい、ひゅうにふちにいへんはよ。
(ゴクン)
あー、くそ、やっぱりビミョーだよビミョー。
お返しだこら。
(パク)
おーおー、口パクパクさせても何ってるかわかんねーぞ。
(ゴクン)
…はっ。急に人の口にもの入れた罰だよ罰。
………つか、オレの半分くらい食いやがって。
あー?それはそれ、これはこれだっつーの。
…おー、今度一個おごりな。
それでチャラにしてやるよ。
やっぱオレのこと何でもわかってるじゃん、お前はさ」
「………おーい、これなんかお前に似合いそう…
…お、お前のその服、いいじゃん。
さっすがオレの好みわかってるー!
………ああ、これ、お前が好きなそうなやつだったからよ。
…だろ?やっぱオレっててんさーい。
じゃあ買ってくっか。
お前もそろそろいーだろ?
…ん。おっけー。
………
………
………
…ふう。買った買った。
しっかしこれで500円とか、古着にしたって安すぎだよな。
いつかこの店潰れんじゃねーの?
………ああ、そうだよな。
毎回毎回こんなこと言ってて、なんだかんだ潰れねーよな、この店。
ガキの頃から使ってる店にしちゃあ、さすがにボロボロすぎるけど。
………はっ。ちげーねー。
…いやー、しかし、この辺も全然変わんねーよな。
頑固おやじがやってる床屋とか、いつ行ってもばあさんが座ってる駄菓子屋とか、屋上に変な機械があるデパートとか。
まじ変わんねー。
オレ達はこーんなに背が高くなったつーのに、周りは一ミリも変わんない。
いつまでもいつまでも、変わんないまま続いてくのかねー?
(………)
………は?
何言ってんだお前?
いやいや、お前に彼女とか、オレに彼氏できたらとか、何言ってんだよ?
だって、オレとお前は彼氏彼女だろ?
………いや、そりゃ、付き合うとかそういうのははずいのはわかってっけど、でも彼氏と彼女なんだから。
(………)
…違う?彼氏彼女じゃない?
だから、何言ってんだって?
オレとお前は彼氏彼女なんだって。
そりゃ長年のツレだし、改まって告るとかはしてねーけど、でもわかんだろ?
これまでさんざんツーカーの関係でオレ達やってきたんだからさ。
オレの考えてることくらい、全部お前だってわかってるはずだろ?
オレとお前は彼氏彼女。
幼馴染で腐れ縁で、なあなあの関係で続いていく彼氏彼女。
どっちつかずで近すぎず離れすぎないぬるくて甘い関係。
今更あんまりベタベタするとか、そういうのはねーってのはわかってるけど、これからも一生、隣にいる存在だろ?
………あ?聞いてねー?
だから、言ってねーし聞いてもねーよ。
オレとお前はお互いのことがなんでもわかってる。
まあこっぱずかしくて口に言いづれーってのはわかってるけどさ。
でも、オレはお前のことは何でもわかってっから。
オレはお前が好きで、お前はオレが好き。
相思相愛。永遠の愛で結ばれたパートナーってわけだ。
これからもよろしくな、相棒」




