表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/271

130 距離が近い幼馴染は何でも自分の名前を書いているが、ある所にも名前を書いていて…

「(ダンダンダンダンダンダン)

(ガチャッ)

…ちょっとあんたさ、また私の部屋から漫画勝手に持って言ったでしょ?

………はあ?

部屋勝手に入るくらい別にいいでしょ。

いつものことなんだし。

それより私の漫画、持ってったでしょ?

………あ、それそれ。

なんで勝手に持ってくかな。

…え、いや。それ私のだし。

ほら、裏に名前書いてるでしょ?

そこのシールのところに。

まったく、借りるのはまだいいけど、人の了解なしに持ってかないでよね。

いくら幼馴染って言ってもさ、分別ってもんがあるじゃん。

………え、スマホ?

………あー、確かにメッセ入ってるね。

でも私今初めて見たし。

返事してから持っていきなさいよ。

…よいしょっと。

………ん?別にいいでしょ。

ここ来たついでに、ここで漫画読んでこうかなって。

私が読んだら貸してあげるからさ。

………ん。

………

………

………

………んー、なにー?

…ああ、そういえばノート借りてたっけ。

後で返す。

てかあのノート、名前書いてなかったけど、自分のものにはちゃんと名前書いておきなさいよね。

返す時、誰のものかわからなくなっちゃうじゃない。

………いや、そりゃあ忘れないけどさ。

でも仮に私がなくしたりして、知らない誰かが拾ったら返せなくなるって話。

返ってこなかったらあんただっていやでしょ?

………そこは肯定しなさいよ。

仮にも学生の身分で、ノートなくなってもいいって何よ。

…あ、そういう意味ね。

でもなくしたからって、私があんたにノート貸す理由にはならないんだけど?

………

…嘘嘘。ノートくらい貸してあげるって、

そんなしょげないでよ。

打たれ弱いんだね、あんたって」




「(ザー、ザー、ザー、ザー)

………あんた、下駄箱で突っ立って何してんの?

…え、あ、まあ、雨降ってるけど。

ザーザー降りね。

最近全然降ってなかったから、しばらくやまないんじゃないかしら。

…あー、なるほど。

傘忘れたんだ?

まあ天気予報じゃ曇りだったし、そりゃあ忘れちゃうのも無理ないか。

………私?

私は置き傘してあるから。

………

…ほらこれ。

ちゃんと私の名前入ってるでしょ?

………

…あー、はいはい。途中まで入れてけって言うんでしょ。

もう、しょうがないな。

(バサッ)

ほら、帰ろう?

………

………

………

…久しぶりだね、こうやって一緒に帰るの。

小学校の頃は毎日毎日一緒に帰ってたけど、最近はクラスも違ってそういう機会もなくなってたよね。

………え、別に。

私はあんたと帰るの、なんとも思ってないけど。

…あ、わかった。

私と一緒に帰るところ、誰かに見られるのが嫌なんだ?

別にいいよー?

この雨の中、ずぶぬれになって帰りたいのならそれでも。

………ん、よろしい。

…それより、もうちょっと詰めなさいよ。

肩濡れちゃうじゃん。

せっかく傘入ってるんだからさ、濡れちゃったら意味ないじゃん。

………ほーら。

(ガシ)

…これでよしっと。

………

………

………

…え?ああ。ここに書いてある名前?

いつからって、そりゃあ傘買った時からでしょ。

…あ、そっちの意味ね。

いつから自分のものに名前書くようになったか、ね。

………あんたは覚えてない?

小学校の頃、あたしが連絡帳なくしちゃった時があってさ、私が『ないないー』って泣いてたこと。

別に連絡帳の一冊や二冊なくなったってどうってことないんだろうけどさ、当時のあたしとしては絶対お母さんに怒られる―って思って、めそめそ泣いてたんだよね。

そんなあたしがおろおろ泣いてた時、あんたが連絡帳見つけて持ってきてくれたの。

そん時あんたがさ、『名前書いてあるからすぐにわかった』って言ったんだよね。

名前が書いてあれば、それが自分のだってすぐにわかる。

多分その頃だろうね。

あたしがこうやって自分のものに名前書くようになったのは。

名前が書いてあればちゃんと自分のものだってわかる。

なくしてもきちんと自分のものに戻ってくる。

そんな気がするんだよね。

………えー、子供っぽいって。別にいいじゃん。

………

…あ、雨やんできたね。

どうする?

久々だし、せっかくならどこか寄ってく?」




「………くしゅん!

あー、さぶっ。

毎年毎年思うけど、なんで冬ってこんなに寒いのかしらね。

…ま、そりゃあそうだけど。

あったかい肉まんでも食べて帰りたーい。

………それより、今日の進路調査票、書いた?

なんで今の時期から進路のこと聞かれなくちゃなんないのかしらねー。

………そうだけどさ。

あんたはもう書いたの?

………ふうん。進学とか、当たり障りなくてつまらないわー。

………私?

私は、まあ、就職かな?

…どこって、そりゃあ、あんたに永久就職ってところかな?

でもさすがに、それで永久就職って書くのも先生とかの風当たりが…

………え?

うん、そうだよ。

あんたに永久就職。

今言ったばっかじゃん。

………別に冗談でも何でもないし。

だって、


私はあなたの物だもん。


あんたの言うことは何でも聞くし、あんたがやれっていう命令にはなんでも従う。

物っていうのことは、そういうことでしょ?

…どうしてって、ほら、これ見て?

お腹のところ、あんたの名前が刻んであるでしょ?

あんたの名前が書いてあるから、私はあんたの物なの。

………え、どうやって刻んだかって。

それは、これだよ。

(チキチキチキチキチキチキチキチキ)

さすがにやった時は結構痛かったけどね。

でも、こうして名前があることで、私はあんたのものになれるって思うと、むしろそれも快感だったよ。

…昔、連絡帳を拾ってくれたあの時から、私はあんたのことが好きになった。

どうすれば好きっていうことが証明できるのかって、色々考えたんだけどね。

やっぱり、相手の所有物になるっていうのが、一番の証明かなって思ってさ。

名前を書くことで、私はあんたのものになる。

この名前が、その証明。

………ねえ、それで、さ。

私はあんたのことが好きなんだけど、あんたもそろそろ、私の物になってほしいな。

私の物には、ちゃんと名前を書いておきたい。

(チキチキチキチキチキチキチキチキ)

ね、いいよね?

あんたを、私の物にしてもさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ