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129 戦いに疲れた勇者はエルフが営むマッサージ店で心も体も癒してもらうが…

「(カランカラン)

いらっしゃいませ。当マッサージ店へ………

あら、勇者さん。

また来てくれたんですね。

………ありがとうございます。

そう言ってもらえると、ここの従業員として鼻が高いですわ。

…あら、キレイだなんて。

勇者さんでもお世辞を言うものなんですね。

………そうでしょうかね?

人族の皆さんは、私達エルフの長い耳を、あまりよく思わない方達もおられますから。

ああ、別に勇者さんがそうと言ってるわけではないんですけどね。

勇者さんは人族には珍しく、エルフに対しても分け隔てなく接してくれますから。

………ふふっ、またお世辞ですか。

私だから会いに来てるなんて、他の方にも言っておられるんじゃないんですか?

………まあ、そういうことにしておいてあげます。

…それで、今日もいつものコースで?

………はい、かしこまりました。

では、いつもと同じコースで。

この私が丹精込めて、勇者さんの体を癒して差し上げますわ」




「………ふう。これでよし、と。

勇者さん、終わりましたよ。

勇者さん?

おーい、勇者さーん?

………あらあら、寝ているようですね。

まあ、仕方もありませんわね。

勇者さんは毎日毎日、戦いに駆り出されているんですから。

こうして眠ってしまうのも、しょうがないこと。

………

かわいらしい寝顔。

普段は凛々しい顔をしておられるのに、寝顔はこんなにかわいいなんて、反則ですよ。

こんな顔を見ていると、私も…

………

…あら、起きられました?

………いえいえ、ほんの短い間ですよ。

毎日の戦いでよほど疲れているんですから、もう少し寝てもらっても構わないですが…

………そうですか。

しかし、途中で眠ってしまうなんて、よほど疲れがたまってるんじゃないんですか?

日中日夜戦いに励んでいるんですから、少しくらい休みを取っても…

………もう、お世辞はやめてくださいよ。

私のオイルマッサージが気持ちいいからなんて、店長にばれたら出禁かもしれませんよ。

まあ確かに、私の使うオイルは他の子とはちょっと違う特別なものですけど………

…はい?

ええ、まあ、今日は勇者さんの相手で終わりですが…

………え、食事にですか?

…構いませんけど、私なんかでよろしいんですか?

勇者さんの他のパーティーの人達に怒られたりとか………

………へえ、そうなんですか。

でも、この間魔術師さんと二人で街を歩いているのを見たんですけど。

………嘘嘘、わかってますって。

あれは軍師さんのところへ打ち合わせに向かっていたのですよね。

ごめんなさい。

…ええ、もちろん食事はOKです。

それじゃあ着替えて来るので、少しの間待っていてくださいね」




「…よいっしょ。よいっしょ。よいっしょ。

………こっちも随分凝ってますねー。

腕なんてこんなにパンパン。

先日倒したオーク、勇者さんの何倍大きい相手でしたものね。

あのオークを倒したとなると、よほどこの腕を酷使したんでしょうね。

………ええ、しっかりほぐしてあげますよ。

………

………

………

…はい、大体上半身は終わりましたよ。

いったん休憩して、足の方は後でやりましょうか。

…大丈夫ですよ。ちゃーんと後でやってあげますから。

………でも、こうして勇者さんの家に置いてもらえるようになるなんて、今でも信じられないです。

しかも恋人として、なんてね。

私はただ、勇者さんの体を癒してあげただけだったのに。

………そうですか、心も癒してくれたなんて、私にはもったいない言葉ですよ。

人とエルフ。

本来なら結ばれることなんてありえない組み合わせ。

でも、勇者さんに愛してるなんて言ってもらえて、こうして一緒に暮らせるようになった。

私は幸せですよ。

………

…はい?ああ、お風呂ですか?

もちろん用意してありますよ。

では、続きはお風呂の後にしましょうか。

お風呂の後に、たーっぷり、癒してあげますよ。

…ふふっ、行ってらっしゃい。

………

………

………

………さて、あれの準備もしとかなくっちゃ。

それにしても勇者さん。今日も気持ちいいって言ってもらえたな。

私のマッサージ抜きでは生きていけない、とも言ってくれたっけ。

でも本当は、私のマッサージで気持ち良くなったわけじゃないんだけどね。

(コロン)

エルフ族にのみ知れ渡る秘薬。

この秘薬を使えば、頭を、腕を、足を、段々とエルフのそれに近づけてしまう薬。

これをオイルの中に混ぜて勇者さんの体に塗れば、勇者さんの体は、段々とエルフのそれに代わっていく。

体そのものが入れ替わっていくのだから、気持ちよくて、痛みがとれて、そして疲れがなくなるのも不思議じゃあない。

勇者さんの耳が段々と伸びているのに、気付いているのかな?

………門外不出の薬を人族に使ったとなれば、私は一族から追放されるかもしれない。

でも、私には勇者さんがいればいい。

勇者さんのそばがいい。

勇者さんの隣だけが、私の居場所。

そして勇者さんがエルフになったら、人族の居場所がなくなる。

勇者んさんは私のそばにいればいい。

私のそばだけが、勇者さんの居場所。

これからは二人寄り添って、二人で助け合って、二人だけで愛を育んでいきましょうね?」

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