128 すれ違いが多くて別れることになった後輩。だけど別れた後も後輩は普段通りで…
「…センパイ。何ですか話って?
………
…別れる?
先輩と私が?
………そうですね。
確かに、最近結構すれ違いがありましたね。
………わかりました。
では、私達の関係をリセットするってことで。
ただの部活の先輩と後輩に、戻りましょうか」
「センパーイ。
部活、一緒に行きましょう。
………え?
別に、私は何とも思いませんけど?
同じの先輩後輩が一緒に部活行くのって、そんなにおかしいですか?
………ですよね。
それじゃ、行きましょうか」
「おはようございます。センパイ。
偶然ですね。一緒に学校行きましょうか。
………
…あー、まあ。一応偶然っていう体ですけど、まったく狙ってなかったってことはないです。
それとも、センパイは私と一緒に学校行くのイヤっすか?
………
…なら問題ないですね。
ほら、早く行かないと遅刻しますよ」
「センパイ、お昼一緒に食べましょう?
今日、弁当ちょーっと作り過ぎちゃったんで、おすそ分けです。
………
…はい?
今言ったとおり、ちょっと作り過ぎただけですよ。
センパイはどうせいっつも購買のパンとか食べてるんですし、恵んであげようかなーって。
センパイも昼めし代浮くからいいっすよね?
………じゃ、中庭で食べましょうか」
「センパイ。
テストヤバイんで、勉強教えてくださいよ。
………だって、センパイ、私よりはずっと頭いいじゃないですか。
できない後輩のためを思って、お願いします。
図書室で待ってますんで、絶対来てくださいね」
「センパイ、一緒に帰りましょう?
………ん?
同じ部活で、同じ時間に終わったんっすから、別に良くないですか?
後輩をあんまり邪険にしないでくださいよ」
「センパイ、日曜に買い物付き合ってくださいよ。
ショッピングモールでいろいろ買いたいんですけど、荷物多くて大変で。
…もちろん、頼むからには昼飯くらいはおごりますから。
いいですよね、センパイ?」
「センパイ、私、センパイの家行ってみたいんですけど。
………いやー、センパイって普段どういう部屋で暮らしてるのかなーって。
きれい好きなのか汚部屋なのか。
それともその中間なのか。気になるんですよ。
………そうですか?
別に、後輩家に入れるくらい、誰でもやってますって」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ」
「センパイ。夏休み、海にデートに………
………
…え、なんすか?改まった顔して。
………
………はい。そうですね。
確かに、センパイと私は別れました。
恋人として付き合ってましたけど、デート行けなかったり一緒に下校できなかったり、いろいろすれ違っちゃってて、センパイから別れを切り出しました。
それがどうかしたんすか?
………
…別に、何もおかしくないと思いますけど。
だって私達って、そうやって別れて一旦関係をリセットしただけですよね?
センパイだって言ってたじゃないっすか。
元の先輩後輩の関係に戻ろうって。
つまり、一回付き合ってる段階だったのを、先輩後輩の関係に戻しただけ。
一回リセットして、そこからまたやり直していこうっていう提案ですよね?
恋愛は付き合うまでが楽しいって言いますけど、私もそれには結構同感です。
私は付き合ってからももちろん楽しかったですけど、まだ付き合ってない、まだ自分のものじゃない段階で、好きな人を射止めるために全力を尽くす過程って、ドキドキとワクワクが止まらないです。
成功した。よかった。
失敗した。次はああしてみよう。
付き合うまで色々試行錯誤するのは本当に楽しいです。
まあもう一回繰り返すのは、オチを知ってるドラマ観るみたいなものですけど、これはこれで面白いっすよね。
………
………え、違う?
違わなくないですよ。
センパイと私は何度別れようとも、再び結ばれる星の下で生まれてるんです。
私にはセンパイしかいないですし、センパイも私しかいない。
………知ってます?実はセンパイ狙ってた人って結構いたんすよね。
私が最初に付き合う前から。
でも、そういうお邪魔虫を全部追っ払ってたのは、私なんです。
たいして好きでもないくせに、センパイを付き合おうなんて、未来永劫あり得ないっていうのにね。
そういうお邪魔虫を全部排除して、私はセンパイと付き合うことになった。
だから、一旦別れたとしてもまた付き合ことはすでに決定事項なんすよ。
例えセンパイがどこに行こうと、私は地獄の果てまでついていきます。
だってセンパイは、私の運命の人なんですから」




