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124 「何でも願いを叶えてあげる」という悪魔っ娘の願いを断ったら付きまとってきた

「私は悪魔です。

あなたの願いを何でも叶えてあげましょう。

………

…ちょ、ちょっと、どうして立ち去ろうとするんですか?

悪魔ですよ、悪魔。

この世には存在しない悪魔なんですよ?

100万分の1のガチャでも出ない悪魔なんですよー。

SSSレアの悪魔なんです悪魔なんです。

………あ、わかりました。

あなた、私が悪魔だって信じていないんですね。

そうですそうです。

いきなり悪魔だって言われても、信用できるわけありませんもんね。

ましてや、こーんなかわいい姿形をした女の子となれば、なおさらです。

…じゃあ、ちょーっと見ててくださいね。

私が力を込めれば…

(ボンッ)

炎を出せますし。

…ていっ。

(ピカッ)

雷だって起こせますし。

…このおっきなナイフで、

(ブスッ)

………ほらほら、胸にこんなに大きな穴が開いてるのに、血が全然流れてこないでしょ?

…どうです?どうです?

これで私が悪魔だってこと、信じてもらえました?

…ふふっ。やっと話を聞いてくれる気になりましたね。

ではでは、あなたはどんな願いを私にしますか?

………代償?

いえいえ、代償なんてなーんにもありません。

私はあなたの願いを叶える。

ただそれだけで、あなたから何かを貰うことはありません。

今ならどんな願いも無料!ロハで叶えてあげましょう!

さあさあ、あなたはどんな願いをしますか?

目からビームを出せるようにしたいですか?

時間を止める超能力が欲しいですか?

不老不死にして不死身の身体を手に入れますか?

愛しの超絶かわいいあの子を恋人にしたいですか?

どんな願いでも構いませんよ?

………

………

………

…はい?『ない』?

ええー、どうしてです?どうしてです?

何でも願いを叶えてあげるんですよ?

しかもなーんの代償もなしに。

ものすごーく、お得じゃないですか。

あなたにデメリットなんて何にもない、WIN-WINなんですよ。

…ちょっとちょっと、行かないでくださいよー。

あなたが願いを言ってくれるまで、私、諦めませんからね」




「どうです?どうです?

何か、叶えて欲しいお願い思い付きました?

………えー、『もう付きまとうな』って。

いや、それ、あなたの本心の願いじゃないですか。

私はあなたが心から願う願い事を叶えたいんです。

………だから、代償なんてなーんにもありませんって。

本当ですってば。

私は、あなたの願いを叶える。

そして、願いを叶えたあなたを見届ける。

ただそれだけです。

…別に、基本的に悪魔は人間になんて興味ありませんから。

この世界に虫っていますよね?

人間の中にはコレクションしたり研究したりする人もいるんでしょうけど、でもほとんどの人間にとってはどうでもいい存在です。

それと同じように、別に人間がいなくたって悪魔は存在できます。

ただ、私みたいにちょーっと好奇心旺盛なタイプは、時々この世界に現れて人間と関わる。

…中には、人間の想像するとおりに代償とか求めるタイプもいなくはないけど、別に代償がなくたって願いはかなえられますもん。

だって悪魔だから。

………私の興味?

だから、さっきも言ったとおり、願いを叶えた人間を見届けることです。

人間って面白いんですよねー。

人間の望む願いを叶えてあげたのに、結局その願いで身を滅ぼすんですから。

大金を願った人は、大金がなくなった途端、それまでの贅沢が忘れられずに絶望する。

時間を止める能力を持った人は、研究所行きか暗殺されるか。

不老不死になった人は、苦しみながら今なお死んだように生きている。

願いを100個に増やしてくれって言ってた人は、100個なんかじゃ足りず、ずっとずっと願いを増やし続ける。

悪魔の力を欲した人は、最後は結局その力で自ら命を絶つ。

………ほーんっと。面白いですよねー。

…はい?別にこれを話しても何も変わりませんよ?

これも人間の面白いところですけど、人間ってこういう話を聞かされても『自分だけは違う』って思ってる生き物なんですから。

なんで、自分だけは特別だなんて思ってるんでしょうね。

みーんな等しく、人間なのに。

………それでそれで?

あなたの願いは何ですか?

…そういえばあなたって、夢があるんですよね?

その夢、悪魔の私なら一瞬で叶えることができますよ?

悪魔の力なら、苦しい苦しい努力なんてせず、今この場でその夢がかなうんです。

どうです。どうです?

その夢、叶えてみませんか?

………えー、それもいいんですか?

すぐ目の前に叶えるチャンスがあるのに願わないなんて、本当に夢って言えるんですか?

………『自分の力でやらなきゃ意味ない』ですか。

はいはい、わかりましたわかりましたー。

でも、あなたが願いを言ってくれるまでは、離れませんからね?」




「………

………

………

…みーんな、死んじゃいましたね。

両親、姉、妹、弟。

あなたの家族は、みーんないなくなっちゃいました。

………いや、これは単なる放火ですよ?

ゴミ捨て場のゴミで不審火で燃え広がって、その近くにあるあなたの家が全焼した。

もちろん、私の力を使えばこれを起こすのはなんてことありませんけど、こんなこと私がやる意味がありませんから。

むしろ私がやったなんてことになったら、私は私の目的が果たせませんし。

今回のことは、この世界では一定確率で起こりうることですよね?

それがたまたまた、あなたの家族に降りかかっただけの話です。

………

………

………

…それで、あなたはどうしますか?

悪魔の私に、お願いしてもいいんですよ?

『家族を生き返らせてくれ』って。

私なら、あっという間に生き返らせますけど。

…あー、それとも、あなたは放火魔に復讐にしたいタイプですかね?

もちろんその願いだとしても、すぐに叶えてあげます。

放火魔をあなたの前に連れてきて、ぎったんにぎったんに懲らしめて「死なせてくれ」って頼むまで拷問することもできます。

あなたは、何を願いますか?

………

………

………

…こんな時でも、何も願わないんですね。

別に、いいんですよ?

願った後、本当の本当に、何の影響も出さずに、再び日常に戻ることだって、できるんです。

あなたが望むなら、願いを叶えた後、金輪際あなたの前から姿を消したっていいです。

それでもなお、願い事はないんですか?

………

………

………

…ふふ。本当に面白いですね。

『こんな悲しみを、もう一度味わいたくない』ですか。

あなたって、本当に変わってますよね。

愉快で痛快で、とても面白いです」




「………それでそれで、今日は私にお願いしたいことはありますか?

…ブーブー、やーっぱりないんですか。

ま、わかってましたけど。

…でもでも、私にとってはその好都合だったりなんだったりしてね。

こんなに面白い人、願いを叶えたらはいさよならなんて、実にもったいないですから。

あなたが願いを言ってくれるその日まで、私はずーっと付きまとってあげますからね。

その日が来るまでは、ずーっと一緒です。

この私が諦めないこと、覚悟しておいてくださいね」

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