112 人の心が読めるようになった彼女。その力で彼の心を手に入れようとするが…
「…これは、超能力?
………聞こえる。
色んな人の声が、聞こえてくる。
でも、みんな口は動いてない。
…ということは、これは心の声?
………
………
………
………ふふ。
ふふふっ。
この力があれば…
彼は、私のものだよね?」
「…あっ、ねえねえ。
今お昼休みだよね。
よかったら、これ食べて。
…うん、お弁当。
君の好きなものばかり入れて作ったら、食べて。
………え?
あ、えーと、それは………
そうそう、君がそれをおいしそうに食べてるの、前に見たから。
だから好きなのかなーって思ってさ。
………ううん。見てない見てない。
そこまで私も暇じゃないですー。
それじゃ」
「………あの、これ。
誕生日プレゼント。
えっ?
えっと、それは………
君の友達から聞いたとか、そんな感じ。
いいからいいから、開けてみて。
………
その小説、欲しかったんだよね?
この表紙の女の子、とってもかわいいよねー。
胸もおっきくて、まさに二次元って感じ。
…うん?
いや?私はあんまり、こういうのは読んだことないから、そんなに詳しくないかな。
………
…いらない?
え、でも、君の欲しかったやつじゃ………
え、あの、いやでも、君へのプレゼントで…
………行っちゃった。
せっかく、君のために用意したのに…」
「………あ、おはよう。
奇遇だねえ。こんなところであるなんて。
よかったら、いっしょに学校行かない?
…あ、そうなんだ。待ち合わせが…
なら、その人と3人で一緒に行こうよ。
女の子と一対一じゃ、君も緊張しちゃうんじゃない?
………え、ああ、うんうん。
言った言った。
女の子ってさっき君が言ったじゃん。
もう忘れたの―?
………
…そう、なの。
じゃあ、仕方ないか。
………あっ、ううん。全然気にしないで。
その子と二人、楽しんできなよ。
………
………
………
………どうして?」
「………
………お、勉強頑張ってるねー。
図書室で二人きりで勉強とか、感心感心。
…あ、そこの問題わからないの?
どーれ、ちょっと見せて見て…
ああ、この問題。
この問題はね。
ここをこうして、こうやって、こう解くんだよ。
………ううん、そんなたいしたことないよー。
あ、よかったら、このまま私が教えてあげよっか?
わからないところがあれば、多分教えてあげられるだろうし。
………え、でも。その方が効率は…
…あ、うん。ごめん。
二人でごゆっくり―。
………
………
………なんでなんでなんでなんでなんで」
「………
………
………
…二人で、仲良さそうにご飯食べてる。
大したことない世間話なのに、どうしてあんなに楽しそうなの?
………あ。
彼にあーんしてる。
…おいしいって、私が作った方が、絶対おいしいやつなのに。
彼の好物で、食材も最高のもの揃えたのに。
………なんで、それがいらないの?
どうして、あの子のお弁当を食べてるの?
………
………
………
………わからない。わからない」
「………
………
………
…休日。デート。
彼は、あの子とデート。
水族館とか、映画館とか、彼の趣味じゃないのに。
本屋とか、ゲームセンターの方が絶対行きたいはずなのに。
どうして、私の誘いは断っちゃうの?
どうして、あの子とのデートはOKするの?
………楽しそう。
泳ぐ魚を見て、笑ってる。
興味のない恋愛映画を見て、感動してる。
なんで楽しいの?
私なら、君の好きな所に、付いていってあげるのに。
なんで君は、あの子の行きたいところに、付いて行ってるの?
なんでなんでなんで。
どうしてどうしてどうして。
どうして君は、あの子とデートしてるの?
………
………
………
………どう、して…」
「………はあ。
あの二人、楽しそう。
彼氏彼女になって、幸せいっぱいって感じ。
私のアプローチは全然ダメで。
あの子アプローチは100%成功して。
彼とあの子は付き合うようになった。
私は心を読んで、彼の好きなものをあげようとしたのに。
二人の恋路を邪魔しようとしたのに。
結局、何もかも、うまくいかなかった。
もう彼の心は、あの子でいっぱいだなあ………
心の中で、あの子を好き好きって、何度も言ってる。
それに比べて、私のことなんて、これっぽっちも気にしてない。
むしろ君のことを知りすぎていて、気味悪がられている。
こんなことになるくらいだったら、こんな能力いらなかった。
こんな能力がなかったら、全然脈がないってことが、わからずに済んだのに…
………もう、私の想いが届くことはない。
彼は、あの子と幸せになってしまう。
それが分かったまま、それをこの目で見ながら生きてけるほど、私は強くないよ………
………ん、トラック。結構スピード出てる。
あのドライバー、配達時間、遅れちゃいそうなんだね。
………
…じゃあね、さよなら。
君のこと、大好きだったよ。
(キキ―――――!)
(ドンッ)」




